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手紙

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僕とあなたは唯一の理解者でした。
なのにどうして世界はそれを解ってくれないのでしょうか。

あの時あなたは僕に言いましたね。
「あなたと共にいられるのならどんなに世界に嫌われても生きていけるでしょう」 とあの言葉は嘘だったのですか。
「あなたと一緒に私が生まれ育った街を廻りたい」 ともいってくれたではありませんか。
僕はこれから何を糧に生きていけばいいのですか。
何を見て喜び、何を聞いて感動し、何に触れて安心すればよいのですか。
あなたと共にこの世から消えることの出来なかった僕は、どうすればよいのですか。
せめて世界はあの時僕も一緒に消してくれればよかったのです。
そうすれば僕は何も悩むことも無くあなたと共に消え去れたのに。
けれど世界はそれすら許してくれませんでした。
あなたには死をあたえ、僕には生を与えました。
あなたのいないこの世界には一体どれくらいの価値があるのでしょう。
僕にはもうこの世界に価値は見出せません。
もうすべてが手遅れなのです。
あなたがかつて着ていた服や履いていた靴、いつも欠かさずつけていた香水もすべて価値を失ってしまいました。
あなたのいない部屋も既に引き払い今は名前も知らない誰かの住処となっているでしょう。
僕はやっとあなたの隣に立っても可笑しくない位になれたのに何故あなたはいなくなってしまったのですか。
ずっとずっとそばにいられると思っていたのは僕だけだったのですか。
あれから10年経ってやっとあなたから開放されたと思ったのに。
あなたはまだ僕を苦しめるのですか。
なんで今頃になってこんな手紙を開けてしまったのでしょう。
開けなければ僕はあなたのことなど忘れられたのに。
きっとあなたはこんなに戸惑っている僕を見て笑っているのでしょうね。
なのに何故僕はあなたのことを恨めないのでしょうか。
こんなにも胸が苦しいのに。
こんなにも鼓動が速くなるのに。
こんなにも悲しくなるのに。
どうしてあなたのことが嫌いになれないのでしょう。
あなたのことを嫌いになれたらどんなに楽だったか。
どうしてあなたのことを理解してしまったのでしょう。
あなたのことを理解しなければどれだけの悲しみと出会わなかったか。
どうしてあなたのことをこんなにも愛してしまったのでしょう。
あなたのことを愛さなければどれだけの苦しみから逃れることができたのか。
どうして、どうして、どうして。

今日も僕はあなたの分のご飯も作り、夜にはダブルベットに枕を二つ置きます。
僕は何があってもあなたのことしか愛せそうにありません。

最愛の妹へこの手紙を送ります。

―――より。

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