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もう恋なんてしない

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―――20・・・30・・40・・

秀仁はアクセルを目いっぱい開け続けた。
やがてスピードメーターは60km/hを指したまま止まる。

このまま止まりたくなかった。カーブも何もかも無視して突っ走りたい気分だ。



気づいたら部屋でギターを弾いていた。
秀仁はふと我に帰りセブンスターに火をつける。
甘い煙が部屋中に舞った。

「・・・なんもする気が起きねぇ。」

秀仁は煙草をくわえたままベッドに倒れこむ。
小型の液晶時計には0:13の文字が浮かんでいる。

吉田秀仁、今年大学二年になったばかりだ。一年続けたバイトを辞め、大学の飲みサークルで出会った彼女と別れて一週間だった。
バイトとデートに明け暮れた日々から抜け出してほんの数日、彼はとても暇であった。



・・・さよならと言った君の気持ちは分からないけど・・・



ああ、昔好きだったあの歌がやっと理解できた気がする。

「なんて無気力なんだ俺は・・。」





・・・・・・そうして気づくと窓からふんわりと光の束が降り注いでいた。


「んん・・・、朝か・・・。」
二限目の講義に合わせて下宿を出た。もう冬の跡形もない暖かさだ。
いつの間にか葉桜に変わっていた川原の道の上・・。新しい季節が来るんだな。



大学の駐輪場に着き、煙草をくわえ火をつけようとした。
「おーい秀仁!!」
振り返ると高校からのツレであるユタカが近づいてきた。
「あぁユタカか。おはよ・・」
「ってゆーか、お前ミキちゃんと別れたってマジなん?」
俺は心なしか一瞬身震いのようなものを感じた。
「ああ、言ってなかったけ・・。ホントだよ。」
「えーマジかぁー。だって・・。」
その後教室までユタカにいろいろ聞かれたが俺は心ここにあらずという感じだった。
なぜか今ごろになって現実的にミキとの別れを受け止めた気がした。


俺は普段寝てしまうくだらない講義を不思議なほど真面目に聞いてしまった。
ユタカは横ですっかり寝入っている。あと10分か・・。


あれから俺は食堂や購買に行くのも億劫だ。ミキと会う可能性が高いからだ。
そんなに大きな大学ではない。高校に毛が生えたような大学だった。
「今日も駅前のコンビニ行くかな・・・。」



授業が終わりユタカを起こすと二人で駐輪場へ向かった。
「コンビニ高くつくもんなぁー。」
ユタカがこんな風にぼやくのを遮るようにして。
2, 1

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