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「鶏」作:いんか

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 ニワトリは考えた。
 
 何かおかしくないだろうか?
 何故こうも日常に代わり映えが無いのだろう。
 私が考える価値観では、日常というのは、何か、こう、一日一日、その時その場によって、振り幅が大きく異なるような、
そんな生活が一般的な「日常」というものだと思っていた。
 それを踏まえたうえで、実際の「日常」を比較してみる。さあ、どうか。
 なんだろう。常に一方通行といえばいいのか。
 毎日同じ場所で暮らし、毎日同じ仲間に囲まれ、毎日同じ時間に雄たけびをあげる。
 食い物にも困らないぞ。毎日うまい飯が食える。ひもじい日なんて一度も無かった。

 普通は、もっと苦労するものじゃないのか?

 淡々と流れ過ぎてやしないか?いや、「流れる」というよりかは、「吸い寄せられている」
 そうなんだ。うまくいきすぎているんだよ。
 おかしい。バランス的に考えれば、ものすごくおかしい。
 私が食べているこの飯のように、植物性と動物性のタンパク質がいい具合にブレンドされている加減で、楽と苦のブレンドもいい具合にかまされているのが「日常」じゃないのか?
 なぜこうも、温室でぬくぬく…。
 もしや囲われているのか?
 誰が?何のために?
 そういえば、毎日ここへ飯を運びに来る…。アイツは何者だ?

 ニワトリの全身にぷつぷつと鳥肌が立った。

 決起しなければ、戦わなければ、我々に未来はない。そんな気がする。
 そう決意し、ニワトリは歩きだした。
 そして三歩歩いたのち、すべて忘れた。

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