まずは、僕の友人を紹介します。
彼女は出席日数は皆勤賞、学業においても常に優秀で、スポーツは些か不得手。エニアグラムで言うなれば観察者。
容姿に関しては小柄で派手に着飾らず、されど作りの良い顔立ちから水面下に隠れないような、目立たないながらも特殊な魅力を兼ね備えた女性でした。
彼女と僕の関係は男女を意識したような大それたものではありませんでした。ただ小学校から同じクラスで、読書の趣味が合うというだけの縁です。本を貸し借りしたり、たまにその話題で雑談する程度の関係で、それ以上でもそれ以下でもありません。
無論、誰かに恨まれるような女性でもありませんでした。争いを嫌う彼女は常に苛立ちなどといった感情を腹の内に溜め込み、それを向ける矛先も無いままいつの間にか忘れる。器用な人でもあったのです。
名前は愛原 香織。僕の、目の前にある死体の名前です。