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お釈迦様は今日も蓮池のふちをブラブラと気持ちよさそうに散歩しています。散歩途中に蓮池を覗くことは、お釈迦様の日々の日課でした。なぜなら蓮池から見える地獄の景観がお釈迦様はたまらなく好きだったからです。
「ははは、馬鹿な罪人どもめ。おろかな行いをすると、その見返りは自分に返ってくるのだ」
そんなことを呟きながら水の底を眺めていると一人の男に目が留まりました。
その男はカンダタという名でした。この男は生前、趣味であるマラソン中に下痢をもよおし男性用の厠では間に合わず女性用の厠に駆け込んだ罪からお釈迦様によって地獄に落とされたのでした。
「しかし…」
そんな罪を犯したカンダタも良い行いをしたことがありました。趣味であるマラソン中に発見した瀕死の蜘蛛をためらうことなく助けてあげたのです。カンダタは蜘蛛を一生懸命看病し、ついに蜘蛛は自分の足で歩けるようになったのでした。
「ふむ、そのような行いをしたこともあったが…罪人が善い行いをすることはとても腹立たしい。罪人は罪人らしくあるべきなのだ。」
お釈迦様は蓮で巣作りに勤しんでいる蜘蛛の糸を手にとり、スーっと地獄へ垂らしたのでした。
「ちょっとからかってやろーっと」

カンダタが地獄でため息をついていると、目の前に一本の蜘蛛の糸が垂れてきました。
「これは…きっとあのときの蜘蛛に違いない!私に恩返しをしに来てくれたんだね!」
カンダタは糸にしがみ付くなり上へ上へと昇っていきます。
途中、下を見下ろすと、信じられない光景が待っていました。自分が登ってきた糸を他の罪人たちが追いかけてくるではありませんか。か細い蜘蛛の糸がたくさんの人間をつるすことは到底不可能でしょう。糸が切れるのも時間の問題でした。
お釈迦様はその様子を実に楽しげに眺めていました。
「本性を現せカンダタ!!他の罪人を落とした瞬間お前も地獄へ逆戻りだ!!ははは!」
しかしカンダタはあろうことか、
「他のみんなもついておいで!一緒にこの地獄から這い上がろうではないか!」
地獄に歓声があがり、罪人たちは一斉に糸に群がります。
糸は勢いよく地獄に向かって引っ張られ、カンダタたちは地獄へと落ちてしまったのでした。
しかし地獄へ落ちたのは罪人たちだけではありませんでした。最後まで糸を握り続けたお釈迦様もまた、地獄へ落ちて行ったのでした。
おろかな行いをすると、その見返りは自分に返ってくることを身を持ってしめしたのでした。
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