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ご注文はベンガルタイガーだっけ?

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 「綺麗……かわいい街!」
 印度 華麗(いんど かれい)は近代ヨーロッパの雰囲気を漂わせる、モダニズムに溢れた町並みの中で呟いた。
 入学と同時にこの平和な街に引っ越してきた彼女。
 そこら中にアライグマが我が物顔で闊歩しているここはラクーンシティ。
 下宿先を探すのが目的のはずが、まるでプレステのゲームにでも出てきそうな情緒ある風景を楽しんでいると、つい寄り道をしたくなってしまう。
 先程も一匹ボロ雑巾のようにしてきたところだ。
 「ここなら楽しく暮らせそう!」
 見方をよくわかってない地図を見ながら、あっちへふらふら、こっちへふらふらと流されるように歩いて行く。
 「こっちでいっか」
 煉瓦造りの橋を渡ってしばし進むと、一つの小さな吊り看板が目に入った。
 猫がコーヒーカップを覗き込むデザインの下には、

 『CAT HOUSE』

 の文字。
 「これは……猫カフェ!」
 何を隠そう可愛いものと金目のものには目がない華麗。
 自分の欲望を満たすためなら相手が嫌がろうと知ったことではない。
 これまでに幾多の小動物をストレスで半殺し(生易しい表現)にしてきた彼女にとってそこはまさしく餌場だった。
 「入るしかないでしょ!!」
 目を輝かせながら扉に手をかける。入り口のベルがガランと来客を告げた。
 「こっねこ、こっねこっね、のっうみっそを……」
 心ぴょんぴょんもとい心にゃんにゃんさせながら狩人の瞳で猫科小動物を探す。

 猫はどこだ。猫。猫。猫。
 撫でてやる。擦ってやる。頬ずりしてやる。頭を丸呑みしてやる。それに飽きたらず◯◯してやる。挙句の果てには××だってしてやる。
 摩擦熱で火が出るほどに愛でられる権利を貴様らにくれてやる。

 だがそこに待っていたのは猫ではなかった。
 燃えるような赤毛の小柄な少女。と、彼女が跨っている、全長2m半の猫科大型肉食獣が、牙を剥き出しにして彼女を迎え入れた。
 「ね……ねこがいない……」
 まるで虎のような猛獣の眼光をその身に浴びて、震えながらもそれだけ言うのが精一杯だった。
 まるでと言うか、虎だった。
 ベンガルトラだった。
 「グァオオオオオオオオオオオ!!!!」
 「ギャァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!」
 「何だこの客!?」







    だべご
    っン注
    けガ文
    ?ルは
     ト
     ラ

 
 
 第1頭「ひと目で、虎だと見抜いたよ」



 「T...Tiger...? WhyTiger...?」
 「これですか? これはサガットです。一応虎です」
 「見りゃわかるよ! 何で喫茶店に虎がいるの!?」
 「実はこの子は臆病な自尊心と尊大な羞恥心によってベンガルタイガーと化してしまった私のおじいちゃんなんです」
 「山月記かよ!」
 「冗談です。ご注文は?」
 「猫! 猫はいないの!?」
 「いません」
 「表の看板は!? キャットハウスって書いてあったじゃない!」
 「ああ、あれまだ外してませんでしたっけ。三日前まではそうでしたよ。今は別の店です」
 「別の店……?」
 「プロレス喫茶『タイガーホール』です」
 「私帰る!」
 ガシィ!
 発生2Fの掴みモーションで少女は華麗の肩を掴んだ。
 その指の力はとても中学生の少女とは思えない。まるで鷲に捕まった気分だった。
 「まあまあまあまあ、久しぶりのお客さんです。ただでは返しませんよ。ねえサガット」
 「アイグー……」
 「喋った!?」
 「腹話術です。キャットハウスの店長みたいになりたくなかったら何か注文して下さい」
 「……キャットハウスの店長はどうなったの……?」
 赤毛の少女はちらりとサガットの方を見やった。
 そして、無言を貫く。
 「ねえ……?」
 再び僅かにサガットに視線を投げる少女。
 サガットはげふりと喉を鳴らしてそれに応じる。
 「……」
 「…………」
 「………………」
 「…………コーヒーください」
 華麗に、ここを出る勇気は無かった。
 「コーヒー入りましたー」
 「アパカッ」

 
 
 「コーヒーは普通に美味しい……」
 「当然です。ウチは豆の一粒一粒から店の雰囲気にまで全てこだわりを持った喫茶店なのですから」
 言われてみれば確かに、シックに統一感のある内装は客に安堵とやすらぎをもたらすだろう。
 「アイグー」
 この威圧感だけで人を殺せそうなベンガルタイガーさえいなければ。
 「ねぇ……虎を喫茶店に配置するメリットはあるの……?」
 「もふもふしてて可愛いと思ったのですが……巷でも触れるって大人気じゃないですか、虎」
 「子供はね! 小さいからね! 可愛いけどね! 成獣はね! 恐怖心しかないね!」
 「大丈夫です。サガットは大人しいし、よく訓練されてるから人に襲いかかることはないんですよ。私の指示さえ無ければ」
 「あれば襲うんだね!?」
 「それに夜は虎のマスクを被った父との有刺鉄線電流爆発デスマッチがあるから……そっちは大人気なんですよ」
 「もはや喫茶店じゃない! うう、何でこんな事に……私は下宿先を探していただけの子供と動物に好かれる人畜無害な女子高生なのに……」
 「下宿先?」
 「うん、この近くのはずなんだけど……猫柳さんって知ってる?」
 「キャットハウスの店長ですね」
 「あっちゃー……」
 「ところで今この店従業員を募集してるんですよ。今なら住み込みで働けます」
 「へーそうなんだ。じゃあ私生徒会行くね」
 ガシィ!
 発生2Fの掴みモーションで少女は華麗の肩を掴んだ。
 その指の力はとても中学生の少女とは思えない。まるで鷲に捕まった気分だった。
 「ところで今この店従業員を募集してるんですよ。今なら住み込みで働けます」
 「へーそうなんだ。じゃあ私生徒会行くね」
 ガシィ!
 発生2Fの掴みモーションで少女は華麗の肩を掴んだ。
 その指の力はとても中学生の少女とは思えない。まるで鷲に捕まった気分だった。
 「ところで今この店従業員を募集してるんですよ。今なら住み込みで働けます」
 「へーそうなんだ。じゃあ私生徒会行くね」
 ガシィ!
 発生2Fの掴みモーションで少女は華麗の肩を掴んだ。
 その指の力はとても中学生の少女とは思えない。まるで鷲に捕まった気分だった。
 「…………」
 「………………」
 「ところで、今、この店、従業員を、募集、してる、ん、です、よ」
 「わかったよ! 働けばいいんでしょ働けば!」
 「賢い選択です。ねえサガット」
 「アパカッ」


 
 「私は太場 数子(たば すうこ)。この店のマスターの孫です」
 「私は印度 華麗(いんど かれい)だよ。よろしくね、数子ちゃん。お姉ちゃんって呼んでもいいよ」
 「わかりました。華麗」
 「呼び捨て!?」
 「あなたの他にもう一人バイトの人がいます。その人も紹介しないと」
 「奇特な人もいるもんだね。どんな人?」
 「実際に会ってみた方が早いと思います。とりあえず、制服に――」
 バターン!
 「数子! 斜向かいの甘鼠庵に客が取られているぞ!」
 「誰!?」
 「今言ったバイトの黒琥 翔(くろこ しょう)さんです。関節技の達人ですが尺の都合上設定は生かされません」
 「あ、露骨に巻きに入った!?」
 「ちなみに甘鼠庵では卸 山葵(おろし わさび)さん、ツール・ド・フランスでは楽有 杏優(らあ あゆ)さんが働いていますがニコ動では1話しか配信されてないので残念ながら出てきません」
 「円盤買おうよ!? そしてツール・ド・フランスはもはや喫茶店も動物も関係ないよ!」
 「何をごちゃごちゃ言っている! カチコミに行くぞ! あの二店を潰せば客足は全てこちらに向くはずだ!」
 「来ないよ! 虎が居る限り!!」
 「タイガーバズーカジャア」
 「それサガットじゃないよ!!!」
 「デビルイヤーは……地獄耳!」
 「誰だよ!!!!」
 「父さんです」
 「タイガーマスクじゃねぇのかよ!!!!!」
 「よし揃ったな野郎ども! 行くぞォォォォォォォ!!!!!」
 「「「ウオオオオオオオオオオオ!!!!!」」」
 

 
♪あれは誰だ 誰だ 誰だ
 あれはデビル
 デビルマン デビルマン

 裏切り者の 名を受けて
 すべてを捨てて たたかう男
 デビルアローは 超音波
 デビルイヤーは 地獄耳
 デビルウィングは 空をとび
 デビルビ-ムは 熱光線
 悪魔の力 身につけた
 正義のヒーロー
 デビルマン デビルマン







                   終  劇

10

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