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間奏

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『第5話、事件が呼ぶ…』



この前起こった斎京町密室殺人事件から、もう3日たった。
あの事件以降、悠木の心は曇ってばかりいた、落ち込んでいた所で地球は回っている、それは時間の経過を意味していた。
落ち込んでいた分だけ悠木は時間を無駄にしているのだ…時間を無駄にした?…本当に時間を無駄にしたのか?…自分のために使った時間が無駄だったのか?…
考えれば考えるほど、わけがわかが解らなくなった。

「南条くん!!!大丈夫?」

急に現実に戻った感覚がした…
悠木は思った、あれ?この感覚前にもあったな…そうか…また天川さんか…人の心の中に勝手に入ってきて俺をリアルの世界に引き戻す…何なんだ?あいつは…

「ねぇ?聞いてる?」
「あぁ…聞いてるよ。俺に何か用?」
「南条くんってさぁ…頭良くないよね」
「は!?」

本当に何なんだこの人は?
いきなり、俺を呼んだかと思えば「頭良くないよね」を他人に軽々しくと言う傍若無人さ
。実際の悠木はそんなに頭は良くない方の成績をしている。
本人曰く、「勉強すれば出来る子」と高校1年生になった今でも思っている、それに比べてセナの成績は学年でトップ10に入るレベルの持ち主。

「篠原先輩が言ってたんだけどね。『探偵は頭が良くなくちゃ出来ない』って言ってた」
「そーなの?」
「学校の成績から見れば断然、私の方が良いんだよ。でも、この前の殺人事件あの時の南条くんは…何て言うか…次元が違うって言うか…私や先輩じゃ感じる事の出来ない何かを感じてたよ」

そう、確かにあの事件の時、悠木だけは現場で突然の『頭痛』や『違和感』によって事件の突破口を切り開いていた。

「あの現場から出たら、綺麗さっぱりと頭痛はおさまってたからな」

授業終了のチャイムが鳴り、お昼休みの時間となると悠木はカバンからあんドーナッツと取り出し食べ始めた。

「南条くんって何時もあんドーナッツだよね」
「あんドーナッツ美味いじゃん」
「お弁当とか恋しくならないの?良かったらお弁当作って来てあげようか。何時も弟の作っているから、そのついでに…」
「……姉ちゃんが後からうるさいから遠慮するよ」
「お姉さんいたの?もしかして、ブラコン?」
「……昔、色々あって…それからさ…」

悠木は黙々とあんドーナッツを食べ続ける。
セナは友達に呼ばれて、いつものグループでお昼を食べる。だが、今日はいつになく悠木の事が気になっていた…

[放課後]

「南条くん、先輩が部室に来るように言ってましたよ」
「え!?また、あの部室の行くの?」

あの部室というのは地学室にある、『殺人事件研究クラブ』の事、悠木はひょうの事からこの部活に入部するために部長の篠原と推理対決をする事なった。推理対決は3日前に起こった『斎京町密室殺人事件』でその結果、悠木の華麗な勝利によって幕を閉じた。

「何か今の自分と重なる所があって、あの何時も暗幕が掛かっている陰湿な部活は好きじゃないんだよな…」

二人は部室に向けて歩いていた。普通の高校生なら、もっと青春を楽しむ時期なのだろうが、何が楽しくてこんな訳の解らない部活に向かって歩いているのか…

ガラガラガラ…悠木は部室のドアを開けた。

「ゆーーーーーーーーーうきくぅーーーーーーーーーん!!!我が永遠のライバルにして、大切の後輩…」

そこには部室の中でくるくる回っている篠原がいた。

「…今日は一段とテンションが高いんですね」
「あったーーーーーーーーーーーーーーーーりまえだーーーよ!!今日は悠木君がこの部に入った歓迎会なんだよ!」
「そーいえば、推理対決では南条くんが先輩を破って勝利したんだよね」
「別に良いですよ…歓迎会なんて」

すると、この部室のドアを開ける者が2人現れた。そこには生徒と先生、生徒の方は黒髪のロングでメガネをかけた女性、先生はショートでツンツンの頭をし、顎に多少髭を生やした20代後半の男性。

「お前らちゃんと集まっているか?」
「久しぶりですね。佐々木先生」
「なんだ、天川も来ていたのか…もしかして、そこにいるのが例の?」
「この前の事件を解決した、隣の席の南条 悠木くんです」

先生は悠木に近付き、体を舐めまわすように観察した。

「ふぅ~ん。こいつが…」
「な、何ですか?一体!」
「俺はこの学校で歴史を教えている、佐々木 達弘だ。同時にこの部活の顧問をしている」

よく考えれば、ここは腐っても部活であった顧問がいるのが普通だと悠木はようやく気付いた。それは置いといて、一体あの女子生徒は何者なんだ?

「先生、そこにいる女子生徒は一体…」
「何だ。篠原まだ話していなかったのか?この子はクライアントだ」

そう、この『殺人事件研究クラブ』は学校の生徒から事件の依頼もしているのだ。
とわ言っても、殆ど生徒が来ることは無く大体が警察からの応援要請のパターンが多い。

「すいません先生、ついテンションが高くなってしまって…悠木君!!!」
「は、はい!」
「君の入部歓迎会をクライアントの唐坂 佳奈さんの実家でやる事になった!!…君達は高豪村と言う所を知っているか?」
「私知ってるわ。高豪村って確か日本でもその村でしか取れない高豪樹って言う木が生えている所ですよね?」

高豪樹、その歴史は江戸時代にも遡る当時は木造建築の時代でかなり頑丈だと評価高かったものの普及度は低くその原因は、その加工方法に難があった。
とても繊細かつ入手ルートも極少ないせいか、加工方法は高豪村のみ伝えられ、その情報は村から出ること無く今日まで来ている。
今ではその技術は唐坂家にしか知られておらず、高豪樹で作る木彫りの人形が高値で売買されている。

「そんな村に行って何をするんですか?社会科見学でもするつもりですか?」
「それは私から説明します…1週間前、唐坂家の当主やっていた父が病死しました…斎京町に住んでいた私が知ったのは兄からメールでした…そのメールの内容が『父さんが死んだ、唐坂家の新しい当主を決めなければならない、すぐに村に帰って来い』」
「それってもしかして…」
「はい…遺産相続の問題…唐坂家に代々伝わる高豪樹の加工方法を記した古文書です…」
「今価値なら…3億、いやもっとするかもな…」
「…3億以上って…」

それもその筈、クライアントのお祖父さんである唐坂 源聖は人間国宝にまでなった人なのだから…
悠木はその話に悪感を覚えた。鳥肌が立つ…悠木にはざらついた人の想いを感じる事が出来た…とても嫌な予感しかしない…

「出発はいつなんですか?」
「GW初日の朝8時に学校集合だ」
「…なるほどね…とんだ入部歓迎会なりそうだ…」

次回、悠木達『殺人事件研究クラブ』に新たな恐怖が襲いかかる…
人の悪い気が渦巻く高豪村、欲望と嫉妬と憎悪の『首切り村連続殺人事件』編スタート
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