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第一話

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 1

 薄暗い光が火照る彼女の目に飛び込んだ。
 それに気付き、目を覚ました彼女は火照る体に違和感を覚える。
 ――どうしてこんな体の芯が熱い感じなんだろう。
しかし、その理由は彼女自身が知っていた。
 ――十五歳の彼女は今日初デートなのである。
十五歳、それなりに苦労してきたと自負する彼女がデートにこぎつける
までの道のりは半端ではなかった。恋愛などしたことがなかった、
そんな彼女が初恋の相手と初デートにこぎつけたのは快挙であった。
彼女の苦労―それはここで語るまでもないだろう。彼女の枕元にある、
まるで呪文のように字が書きなぐられたノートが彼女の今までの苦労を
物語っている。
 憧れの彼との初デート、そのことを思うと彼女は体が火照ってしまう
のだ。


 2

 彼女の名は望といった。望の家は核家族で下には弟が一人いた。
その弟が両親の言うことを聞かぬくらいやんちゃで、おまけに髪は
金髪なのである。弟の存在、それが彼女の苦労を増やしたのは言うまでも
ないだろう。しかし、そんな彼女も今日、ようやく報われるのである。
――初デートの高揚感、体の火照り、のろけ、明日への不安、それら
総てを胸に彼女は自室のドアを開けた。朝ごはんも食べたが、当然総て
上の空である。そんな上の空な彼女は前日までに考えに考え抜いた服を
着て、化粧をして家をあとにしたのだった。
 しかしその時の彼女はまだ知る由もなかった。
いくら苦労しようも報われぬ人もいることを。
それが自分だということも。


 3

 薄暗い光が火照る彼女の目に飛び込んだ。
 それに気付き、目を覚ました彼女は火照る体に違和感を覚える。
 ――どうしてこんな体の芯が熱い感じなんだろう。
しかし、その理由は彼女自身が知っていた。
 ――十五歳の彼女は今日初デートなのである。
十五歳、それなりに苦労してきたと自負する彼女がデートにこぎつける
までの道のりは半端ではなかった。恋愛などしたことがなかった、
そんな彼女が初恋の相手と初デートにこぎつけたのは快挙であった。
彼女の苦労―それはここで語るまでもないだろう。彼女の枕元にある、
首がもげ糸もほつれているうさぎのぬいぐるみが彼女の今までの苦労を
物語っている。
 憧れの彼との初デート、そのことを思うと彼女は体が火照ってしまう
のだ。


 4

 彼女の名は和美といった。和美の家は核家族で下には弟が一人いた。
その弟が両親の言うことを聞かぬくらいやんちゃで、おまけに髪は
金髪なのである。弟の存在、それが彼女の苦労を増やしたのは言うまでも
ないだろう。しかし、そんな彼女も今日、ようやく報われるのである。
――初デートの高揚感、体の火照り、性行為、明日への不安、それら
総てを胸に彼女は自室のドアを開けた。朝ごはんも食べたが、当然総て
上の空である。そんな上の空な彼女は前日までに考えに考え抜いた服を
着て、化粧をして家をあとにしたのだった。
 しかしその時の彼女はまだ知る由もなかった。
いくら苦労しようも報われぬ人もいることを。
それが自分だということも。

 白い携帯につけてあるうさぎの赤い目が、光っていた。

1

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