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「僕の家族」

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 僕は一人ぼっちだった。けれど、今はみんながいてくれるから大丈夫。

「ほら、朝ごはん食べちゃいなさい」
 お母さんの声がする。朝7時だ。今日は日曜日だからもっと遅くてもいいのにと思ったけど、言わずに大人しく朝ごはんを食べる。
 特に用意がしてあるはずもなく僕はパンをトースターに入れて焼けるまでにジャムや飲み物を準備する。ついでにテレビも付ける。
 焼けたパンにジャムを塗って食べつつニュースを見る。お母さんはテレビを見ながら食べるのは止めなさいと言うけれど、止めるつもりもない。
 時々牛乳で流す。喉を通して潤してからまたパンにかじりつく。ニュースではキャスターが昨日までの大ニュースを報じていた。僕はあまり外に出ないから、こういうものはチェックしておかないと大変だ。
 食べた後は姉ちゃんと遊ぶのが僕のいつも通りの日曜日。食器をかたしてから僕は声をかける。
「ねぇ、ねぇ、姉ちゃん」
「何?」
「今日は何して遊ぼう?」
「そうねぇ、しりとりなんてどうかしら」
「よし、じゃあしりとりの“り”からね! りんご」
「ごりら」
 姉ちゃんは毎日僕と遊んでくれるから好きだ。けれど、いつもしりとりばかり。そんな子供っぽい遊び、もうそろそろ卒業してもいい。だけど姉ちゃんが好きなら続けようと思う。もう一人で遊ぶのは嫌だ。他のみんな、お父さんとお母さんと兄ちゃん、もいてくれるけど、やっぱり良く遊んでくれるのは姉ちゃんだ。特にお父さんは最近あまり出てきてくれない。忙しいのかな。
「ら、ら……」
 しりとりが進んで、今は僕の番になった。“ら”で始まる言葉は粗方出つくしてしまった。
「さん、にい、いち……」
「らいおん!」
 姉ちゃんがカウントを始めたので急いで答える。僕たちのしりとりは30秒以内で答えると言うルールだ。
「あ」
「“ん”ついた~。私の勝ち!」
「また負けた……」
 いつも姉ちゃんには勝てない。同じくらいの頭のはずなんだけど。
 時計を見ると12時近かった。あれ、こんなに長い間しりとりしてたんだ。まぁ、熱中するのはいつものことだ。こんな単純なゲームだから尚のこと。
「さて、そろそろお昼ご飯の準備でもするかな」
 僕らがしりとりを止めたところでお母さんが言った。
 お母さんは料理上手だ。僕は毎日見ているから間違いない。包丁さばきとか、手際とか。味は当然美味しい。
「いただきます」
 僕はテーブルの上に一人前だけそろえ、椅子に座る。
「ああ、おいしい」
「そう、それは良かった」
 頭の中で声がする。

 この部屋で、この家で、僕は一人ぼっちだけど。僕の頭の中には家族が住んでいる。昔の、よく僕を殴ったあいつらとは全く反対に、僕を愛してくれる優しい家族。
 僕がこの家に放り込まれ、どうしようもなく寂しくなったときに生まれた僕の家族は、今日もずっとそばにいてくれている。

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