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Наша бойна ベトナム編 日記形式

「曹長は、ベトナムに来てなんかいいことってありましたか?」グレン曹長は相変わらずヘルメットの中にたまった水を眺めながら言った。「そうだな・・・。俺はベトナムに来てから本を読むようになった。そして、読んだ本の一冊に長年悩んできた俺の恋愛観に対する答えらしきものを見つけた。すがすがしい気分だった。自分はこれでいいんだと思った。」
「今度その本貸してくださいよ!」
「いいけど・・・いっぱい線引いてあるし、ドッグイヤーしてあるからよみづらいぞ。」
見張り小屋での夜は更けていく。

男はとにかく上ばかり見ている。きっと全ての男は死ぬまで満足することはないんだろう。
男の終わることなき競争から逃れるために、玉を切ったりするやつがいるらしいが・・・俺の考えでは、ある意味勇気があり、ある意味敗北者だ。前者の意味では・・・・社会の価値観、男かくあるべしといったものに対して・・堂々と反旗を翻したという点において勇気がある。無意味な飽くことなき欲望の、自らの精子の奴隷となることをやめ、一人の性欲を失った人間として、自分の人生を見つめるのだ。
また、後者の意味ではこれも男社会の価値観からの見解でしかないが・・男であるという、競争における生き残りと自分の欲望との戦いの二つから逃げ出したんだ。

七月十一日 午前四時 フナ河西ジャングル ポイントH
また迫撃砲弾が飛んでくる。このくそったれジャングルの中で、どこから飛んでくるかなんてわからない。そもそも迫撃砲弾が木にあたったりしないのか?そしてなぜこっちは撃ち返さないんだ。
俺たちはアメリカ軍だ。なんだって持っている。なのにどうして戦争中に人がたくさん死ぬんだ?
お前らはそう思うかもしれない。俺も知らねえよ。ただ言えるのは人は簡単に死ぬ。それだけだ。俺は死にたいかと聞かれれば、確かに死にたくはないかもしれない。でもそれは首の皮一枚でつながっているんだ。でもとりあえず今は生きたいサイドにいる。だから今俺は生きるために戦っているんだと思う。

僕はあるときジョン曹長に何のために戦ってるって聞いた。
「何のために戦ってるかって?理由なんてねえよ。ただ戦うために戦うのさ。歩くために歩いて、殺すために殺す。それだけだ。男なんて、たいしてそんな生きる理由なんてもっちゃいねえのさ。ただそれをやってる間だけはめんどくせえことは全て忘れられる。それだけだ。」
曹長は絶対ヘルメットをかぶらない。初めてここに配属されたときからかぶったのを見たことがない。でも被弾しない。
曹長はニコッとしながら言った。噛んでいたガムが見えた。
「俺は頭が悪いから考えるのは得意じゃねえ。昔はよく本読んだんだけどな。でも考えるのはダメみたいだ。だからやめたよ。」
曹長はよくガムを噛んでいる。左でいつも作り笑いをするから左の頬の筋肉が右寄り太くて不自然だ。前に見せてもらった免許証の写真も変だった。かなり前から左ほほが
「確かに自己啓発してるときは気持ちよかった。けどな、ある時来るとこまで来ちまったんだ。何が自分のやりたいことか確かめる、それが自分探しって言われてよ。今俺が大学でやってることは本当にやりたかったことなのかって、考えた。そしたら、俺、なにも今までやりたいことなんてせずに生きてきたって、気づいたんだ。絶望したよ。」
今この小隊の中で何人が本当に自分のしたいことをしているんだろう。一人もいないのではないだろうか。
僕はときどきふと思う。そもそもこの世界中に本当に自分のやりたいことしながら生きてる人なんているのか? いるかもしれない。 でもそれは少数だ。
絶対に。
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