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ウホ1 狂い蝉が叫んだ朝に

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某年冬の日の朝、ボクの家の庭で季節外れの蝉が泣いていた。

「なんだなんだ、こんな寒ぃ日に蝉が鳴いてら」
父は味噌汁をすすりながら言う。
「てんで気でも違っちまったんだろうな。ハハハ」

父はそう言うがボクはなんだかあの蝉を見てるとおセンチな気分になってしまう。
一人孤独を背負ってこの世に産まれ、何も成せずにただ叫んで死んでいく。
その叫びは誰の心にも届かない、一体何のために産まれてきたんだ?

そう思うとなんだが自分が嫌になった。
なんでこんなキモチになるんだろう。
それは分からない、けどあの蝉の叫びを聞いてるとなんだか素直になれる。
気が違ったのはボクの方なのかな。

自室に戻ってテレビを点ける。
夢を叫ぶ歌が流れていた。ボクは少しイラついてチャンネルを右に回した。
夢は夢のままで、それ以上になることは決してない。
この歳になるとそういう分かってくる。これが大人になるってことなんだろう。
蝉の声が聞こえる、眠いや。


―ジージージージージジー
ハッと目を覚ます。携帯に目をやる。
時刻は18時、またバイトすっぽかしたってゆーかボク寝すぎだろ。
そのうちクビになるだろうな。まぁいいや、また次のバイト探せば。

―ジージージージージジー
「まだ鳴いてんのか・・・」
ついついひとり言をぼやいてしまう。
蝉の声を聞いてるとなんだかモヤモヤしてしまう自分がいた。
そのモヤモヤを消すかのようにボクはパソコンを点けネットゲームを興じた。


某年冬の日の朝、ボクの家の庭で季節外れの蝉が落ちていた。
寒い朝に強く光っていた。
ボクは何故だか分からないけど心が奮えて、
いてもたってもいられずその場で叫んだ。力いっぱい叫んだ。
その蝉のデタラメな叫びは多分僕を壊したんだと思う。
よく分からないけど、壊したんだ。
笑いたいときは笑えばいい、怒鳴りたいときは怒鳴ればいい。
夢を叫ぶなら叫び続ければいい、叫び続ければその叫びは人の心に届く。
だからなんだか素直になれた。

自室に戻ってテレビを点ける。
夢を叫ぶ歌が流れていた。ボクは少し照れくさい気分でヴォリュームを右に回した。
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