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「うわーん文藝タイプAえもーん!」
「どうしたんだい文藝タイプB太くん」
「また漫画作家イアンにいじめられたんだよー」
「しょうがないなあ文藝タイプB太くんは。 ごそごそ」

「あ、もしかして未来らしき世界の秘密の道具らしきものをその四次元ポケットらしき所から出してくれるのかい?」
「そんな大層なものじゃないけど、素敵な道具だよ。 はい、ノートパソコン」
「は?」
「更新するんだよ」


「更新するっていっても、漫画作家イアンをギャフンと言わせられないじゃないか。 人気作家じゃあるまいし、コメント数じゃ敵わないよ」
「それでも更新するんだよ」
「他に何かないの? コメントを増やす道具とか、FA自動製作機とか」
「そんなものはどこにもないよ」
「注目を集められるとか、レビューを貰える道具とかでもいいんだよ! とにかく漫画作家をギャフンと言わせたいんだよ!」
「きみはじつにばかだな」

「は? 今ばかって言った? ばかって言っただろお前?」
「ばかじゃなきゃウスラボケの唐変木だ。 安易に注目を集めたって、痛い目見るだけだよ」
「今現在既に痛い目に遭ってるんだよ! きみだって、長年やってるのに何時までたっても文章下手だ文章下手だって言われてるじゃないか!」
「それは仕方ないよ、実際下手だもん」
「悔しくないのかい? 見返してやりたいと思わないのかい?」
「思うよ。 でも、いいじゃないか下手の横好きだって。 好きなんだもの」
「それが解らない。 きみには向上心っていうものが足りないんじゃないのかい?」
「足りないかもしれないね。 でも、多分その向上心は僕にとっては不要なものだよ」

 そう言うと文藝タイプAえもんはすくっと立ち上がり、手に持ったワイングラスを揺らしながら夕焼けに染まる窓辺に腰掛けた。
 おもむろに四次元ポケットらしき所からタバコを取り出し、かちりと、それに火を点けてはふっと天に吹き掛ける。
 夕日に照らし出された彼女の艶かしい肢体に、文藝タイプB太は釘付けになり、何も言えない。
 そんな文藝タイプB太の純情な様子を受けて、彼女は嘲笑うかのように言葉を続けた。

「僕は、ただ自分の文章をネット上にアップして、それを縁のある人に見て欲しいってだけだもの。 人気者なんかに、ならなくていいもの」
「『人気者にならなくていい』!? そんなの嘘さ、人間誰だって、皆に愛されたいものだ」
「無理に愛される必要はないよ。 僕は文章を書く事を愛してるし、それ以上は求めてないよ」
「お前なんか…チラシの裏にでも書いてればいいんだ…」
「なっ…!?」

 ――静寂。 決定的に違う二人は互いに言葉を無くし、文藝タイプAえもんは自らの赤みがかったストレートヘアをくしゃくしゃと掻き乱しながらけだるそうに煙を吐き出し、そして文藝タイプB太は普段の凛然とした様子はどこへやら。 映画俳優を思わせる精悍な顔立ちをぐしゃぐしゃにしながら、涙している。

 漫画作家イアンに受けた痛みはそれこそ痛いほど理解している。
 彼女もまた、幾つもの傷を背負う悲しき文藝作家だからだ。
 慰めてあげてもいい、この重苦しい雰囲気を払拭出来るのであれば、いっそ抱かれてもいい。 そう思いつつも、彼の『チラシの裏』発言が、どうしても心に引っ掛かってしまうのだ。
 心に引っ掛かっては――どうしても、突き放す衝動に駆らせてしまう。

「文藝タイプB太くんは、文藝を愛してるのかい?」
「…もちろん。 誰よりも愛してるよ。 命掛けてるといってもいいくらいさ」
「それって、ただ単に自分が愛されたいからってだけなんじゃないの?」
「!?」

「自分が愛されたいから、認められたいから文藝って分野を利用してるだけなんじゃないの? きめぇw」

 ボカッ

「きゅ~」
「うるさいっ! もう解った、きみとはもう絶縁だ。 僕は僕のやり方で文藝の頂点を目指す。 いくらベテラン作家だからって、頼った僕が馬鹿だった。 じゃあね!」
「きゅ~」
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