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05.ラストを作れ! その1

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 <東二局 親:朱雀>

 こんな手牌をテンパイした。
19, 18

  

 <天馬手牌>
 七八九345(66)発発発玄玄
 6pと玄武のシャボ待ち。リーチして二六。天馬はぎゅっと眉をひそめて手牌を眺めていた。リーチするべきか否か。
 雀頭が玄武であるため、リーチ後、アガリ牌が鼻ピアスの牛若丸から出ればアガれない。フリテンになる。
 獣牌と6pの役つきシャボでリーチをかけるのは愚策もいいところだが、アガリはともかく他家のリーチに対する情報が欲しかった。天馬の河からなにが通りそうか? 無筋を切ってきたとき、それが勝負で押してきているのか、手牌と河から照らした壁を信用しているのか? 
 しかし、現実的に考えれば、玄武をツモった瞬間に式神に乗ってしまうことになり、リーチツモ発プラス裏X枚のアガリを鼻ピアスにくれてしまうことになる。ツモ切ってもいいが、親番の手前、無茶もしたくない。
 そうしてヤミテンに構えていたときに、ぽろっと鼻ピアスから6pがこぼれ出た。無論、アガれない。それはいい。
 問題は、詩織がツモ切りリーチをかけてきたことだ。
 天馬は自分のツモ牌を見て考える。3p。
 詩織の顔をちらちら窺っても、きらきらした顔からクズ手ではなさそうだということしかわからない。身体を小刻みにゆすって早く牌山からアガリ牌をツモる作業に耽りたいと全身で語っている。
 6pと3pを交互に小手返ししながら、天馬は考える。
 3p切りでテンパイ維持。一応、ツモ切りリーチ寸前の鼻ピアスの6pの筋ではある。
 が。
 もちろん、見逃した可能性はゼロではない。しかし、見逃しは普通、ラスからアガってはハコテンにしてしまい、順位が確定してしまうようなときにするものだ。まだ東二局。そんなことをする必要性はない。
 が。
 詩織の手に玄武がトイツだったなら? 天馬と同じ理由で、鼻ピアスからアガれなかったこともありうる。
 天馬は、放銃を恥だとは考えない。ただ、麻雀は四人で打つものであると知っているだけだ。
 発暗刻落とし、面子中抜きはできない。河が強ければ、どんな愚形でもリーチをかけられて圧迫される。六回戦の長丁場、賢く打ちまわす必要はない。
 リーチをかけてやる。追いかけリーチだ。二件リーチともなれば鼻ピアスもそうそうアガリ牌を捨ててこない。かえってフリテンにならなくて済む。
 だが、リーチは両面待ちになってからだ。
 6pを一枚外せば2、4、5、7pツモで両面変化する。これでいい。







 いや、待て。
 天馬は打ちかけた6pを引っ込める。
 鼻ピアスが舌打ちしてきたが気にも留めない。
 打、玄武でいいではないか。もし詩織が玄武雀頭ならば刺さらないはずだ。
 両面変化枚数は少なくなるが、ピンフへの移行もあるし、なにより二順の安全はありがたい。
 こっちにしとこう
 打、玄武。




「ロン」
21, 20

  

 <詩織手牌>
 一二三四五六(23466)玄玄


「リーチ一発……わっ、裏裏。赤5pがこんなところに眠ってたよ」
 なお、このアガリは鼻ピアスのものとなるが、玄武牌はドラには換算されない。
「うん、マンガンかな」
「――――」
「あはは、そんな怖い顔しないでよ。いまのうちに上家の清水さんに媚を売っておこうと思ってさ?」
 天馬は、詩織を睨みつけたまま、なにもしていない清水に八千点払った。
「俺ならリーチはしない」
「アガリ牌は、一枚あればそれでいい」
 天馬はパタっと手牌を伏せた。
 黒塗りの牌は夜空のように傷ひとつない。印がついている様子はない。
 次に組まれている可能性についてだが、それは、おいおい確かめていくことにした。
 いまの段階ではなんとも言えないし、仮に組まれていたとしても、いまさらどうすることもできない。
「不安みたいだね。でも、心配しないでいいよ」
 詩織はけらけらと明るく笑った。
「わたしは、足手まといを仲間にしたりしない。そして」
 健康的な肌と造詣のなかで、その瞳だけが、暗い光を湛えている……。





「一度決めたラス候補を、浮かび上がらせたりも、しない」





 詩織(青龍):23300
 導師(朱雀):22600
 天馬(白虎):21500
 清水(玄武):32600




 馬場天馬、トップまでの点差――11100点
 残存天運(ツキ)――不明
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