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外伝「等々力論 ~合法的におっぱいを揉む方法~」

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 お前さんとは、どうしても1度話あわなけりゃいけない事がある。真面目に聞いてくれるか? お前さんが真の男なら、こいつは「マジ」にならなきゃいけないテーマだぜ。
 何も俺は、俺の欲を満たす為だけに言ってるんじゃない。もしも有益な結論が出りゃ、それをみんなで共有して、世界平和の為にちょっとばかしの貢献をしようと思ってる。
 準備が整ったなら聞いてくれ。そして真剣に、一緒に考えてくれ? いいか?
『合法的におっぱいを揉むにはどうしたらいいか』
 聞こえなかったらもう1度言うぜ。合法的に、おっぱいを揉むには、どうしたらいいか、だ。
 誰もが1度は考えた事があるんじゃないか。女がいる。乳がある。そのまま揉みにいったんじゃ逮捕されちまう。ブタ箱にいれられてる間は、おっぱいが揉めない。となれば、警察のお世話にならずにおっぱいを揉む手段が必要になるよな? 当たり前の事だ。
 何? 女と付き合えばいいじゃないかだって? 馬鹿を言ってるんじゃない。どうしてその女のおっぱいが、最高のおっぱいだと言い切る事が出来る? 付き合ってみて、いざ揉んだ時、もう満足したから別れるなんて事を繰り返していたらいつか刺されるぞ。
 いいか? 順番はこうだ。揉む。舐める。吸う。で、それが究極のおっぱいなら俺の物にする。このプロセスだけはどうしても譲れねえ。
 まあそれに、頑張った所で女とつき合えない奴もいるし(俺は断じてそうじゃないが)、やっぱり「合法的におっぱいを揉む方法」を確立する事が出来ればノーベル平和賞確実って事だけは言い切れるな。
 これから俺が話す話は、言ってみりゃその「ヒント」となる話だ。結論から言えば、合法的におっぱいを揉む方法は見つからなかった。……だがよ、それなりの収穫はあったぜ。


 最初に俺がとった作戦は、至ってシンプルだった。まあこういうのは、ややこしい策を練ったり、遠回りな事をするよりも、まずは直球勝負。ストレートど真ん中に投げ込んでみるのが案外うまくいったりするもんだ。俺はある日の放課後、ある人を体育館裏に呼び出して、つまりは一直線に、「頼み込んだ」。
 そう。まずは頼む事から俺の研究は始まった。ようは女の許可さえあって、公序良俗に反しない範囲なら、理論上男はいくらでもおっぱいを揉む権利がある訳だからな。人気のない所で女が「おっぱい好きなだけ揉んでいいよ」とだけ言ってくれさえすれば、たったそれだけの事であっという間に俺達の目的は達成される。
 とはいえ、そんな事は日常生活ではまずありえないから困ってる訳だ。直球勝負とはいえ、俺はその一球を投げる為にきちんと考察した。いかにすれば最も高い確率でおっぱいが揉めるか。重要なのは頼み込む相手、ようは人選だ。
 俺と同じ学年である1年D組に、1人、巨乳がいる。つい1ヶ月前まで入院していた娘でな。入学時に俺が全校生徒を対象に行った目視パイチェックからは漏れていたんが、ある日なかなか見事な乳を見かけたんで追加調査させてもらった。
 名前を稲村(いねむら)たわわと言って(この名前をつけた親は予見者だな)、中学時代をほとんど入院生活で終わらせた病弱娘らしい。その癖地頭が良いのか成績はなかなか優秀で、誰が相手でも上目遣いで心底すまなさそうに話すような、いかにも内気な奴だ。そして肝心なのは、どうやら稲村は、「頼まれると断れない」性格らしい。
 たまにいるよな。内心では嫌だと思っていても、相手を目の前にするとノーと言えない奴。でも稲村のそれはまさに特別だぜ。こんな話がある。
 俺らの学校では、入学してすぐに各種委員会が決められたんだが、最初はやる気満々でも、1ヶ月もすりゃ飽きてくる。部活を初めて忙しくなる奴もいるし、女と付き合いだしてそれどころじゃなくなったりな。それで、学校が始まった時はいなかった稲村に、D組の誰かが冗談で委員会を代わってくれと頼んだらしい。断れない稲村は、仕方なくそれを引き受けた。で、その話はあっと言う間にクラス中に伝わり、今稲村は図書委員と環境整備委員と風紀委員と体育祭実行委員の4つを兼任している。
 掃除当番に関してもそうだ。俺らの学校では、各クラスの班が日替わりでトイレ掃除をしているんだが、女子トイレの当番は休日挟んで今日で10日連続稲村だった。1度誰かのを引き受けちまったからには、次の日はますます断りづらくなっちまったんだろうな。
 こんな例をあげればキリがねえんだ。ゴミ出しも1人でよくしてるし、日直の仕事もこなしてる。部員が足らなくて廃部寸前の部活の名義貸し、それと同じD組の女に「友達料」としてこれから毎月いくらか取られていく予定って噂も聞いた。
 まあ、端的に言えば「いじめ」られてる訳だ。高校入って急に強気になる奴は影で笑われるが、弱気すぎるのも同じくらいまずい。おそらく長い病院生活で、同じ世代の奴と関わる事が少なかったんだろ。頼まれたら、なんでもやらなくちゃいけないと思い込んじまっている。友達って言葉には滅法弱い。かわいそうな奴だ。
 だけど、おっぱいは別だ。
 「頼まれたら何でも引き受ける女」がいるなら、そりゃ頼まん訳にはいかんさ。俺を屑だと思うか? まあ間違ってはねえよ。おっぱいの為なら俺は何でもやってみせるぜ。


「頼む! 胸を触らせてくれ!」
 ビシッと決まったお辞儀、角度はきっちり45度。言葉選びは慎重に、「おっぱい」とか「揉む」とかいう言葉はあえて避けた。それでも、要求は伝わったはずだ。
 俺は自信を持って顔をあげた。
 見事な平手打ちが飛んできた。
 今まで散々並べた噂は一体何だったんだ!? オーディエンスがいりゃ拍手喝采確実な、凄まじい勢いの、本当についこの間まで病人だったのか!? ってくらいの、スナップが効いた一撃だった。
 余りの衝撃に思わず虫歯が治るかと思った俺は、動揺の余り一目散に走り去る稲村を止める事は出来なかった。
 OK。あの子はもう大丈夫だ。これからはたくましく生きていくだろう。俺もそれに見習って、新しい方法を考えるとするぜ。
 直球が駄目なら変化させなくちゃな。次に俺が訪れたのは、保健室だった。
「……えっと、もう1回言ってくれる?」
 そう訊き返してきた保健の先生の顔を唾で汚す勢いで、俺は熱弁する。
「だから!!! 毎年の身体計測に! 一般生徒の立会いが今、必要不可欠だと言ってるんすよ! どこの馬の骨とも分からない医者だけに、女子達のおっぱ……身体の触診を、任せるのは大変危険じゃないですか!」
 俺は更に声を荒げる。外まで聞こえるくらいに大きく、熱いパトスをほとばしらせる。
「そこで!!! 俺の出番という訳です! 外部の医者がいやらしい気分にならないように監視しつつ! もちろん俺も触診に参加し! 本場の医療を学習する! まさに一石二鳥じゃないか! どうして分かってくれないんだ!」
「……等々力君は医者志望なの?」
「当たり前じゃないですか!!! 1日中おっぱ……女体の神秘を探求していられる職なんて他にありませんよ! ……な、何すかその目は!? 俺は断じていやらしい目的でこういう事を言っているんじゃなくて!! おっぱ……おっ……ただ単なる知的好奇心と!!! お……おっぱ……おっぱ……」
「もうおっぱいって言っちゃいなさいよ」
「おっぱい大好き!!!」
 まあ、当然放り出されたよ。
 フゥーーー……ちと興奮しすぎて、冷静な判断力を失っちまったようだぜ。俺もまだまだって事だな。反省反省。
 さ、こんな事でいちいちめげている場合じゃねえぜ。次の案はこうだ。


 いいか? 日本において、「売春」ってのは、実は犯罪じゃない。いや、正確に言うなら、法律上禁止されているが、罰則がないって事だな。よくニュースなんかで売春関係で逮捕されているのは、いわゆる売春斡旋。管理売春。それから自分で売春していても、不特定多数に対して宣伝しまくったりしていた場合だな。
 つまり俺が何を言いたいかってーと、だ。おっぱいが揉みたいなら、金を払えばいいじゃねえかって事だ。これぞジャパンマネー。これぞ真の資本主義って奴だぜ! マルクス先生見てるぅー? イェー!
 だがな、問題がある。俺は高校生、つまり未成年なんだ。ヘルスもイメクラもデリもソープもおっパブもいけない。つまり、俺にいくら払う意思があったとしても、店が受け入れちゃくれねえんだ。まあ背は高えが、ちょっとばかしのベビーフェイスなんでな。五十妻みてえな仏頂面なら案外通るかもしれねえが、まあ羨ましいとも思わねえよ。何せ今回のテーマは、「合法的に」おっぱいを揉む方法だ。
 5000円。用意させてもらった。泣く泣く秘蔵のグラビア雑誌を全てブックオフに売り払って作った金、つまり俺の命その物のような銭だ。俺はこれで、ある女子におっぱいの売買交渉を持ちかけた。
 今回も人選にはそれなりにこだわらなければならねえ。金をほしがっている人間で、貞操が緩いと思わしき推定ビッチ。そして何より揉みがいのある良いおっぱいをしている事。以上の条件で絞込ませてもらった。
 俺の所属しているA組には、そもそもBカップ以上の女が存在していない為、必然他クラスからの選出となった。そして最終候補に残ったのは4人。ここはあえてそれぞれのプロフィールを省略し、それぞれのおっぱいがどんな「型」をしているかだけ、つまり最も重要な情報だけを伝えておこうか。
 エントリーナンバー1! おわん型!
 鎖骨から先端部分までの滑らかなラインと、下乳の確かな存在感が男心をくすぐるジャパニーズスタンダード! 手と自然な膨らみのあり得ないくらいのフィット感は、これこそがおっぱいだと強烈に主張しているぞ!!!
 エントリーナンバー2! 円錐型! 
 ドン!!! ボボン!!! ババーン!!! まさに説明不要! 何という物量! 何という破壊力! その圧倒的胸の膨らみから、男はもう目を離せない! 外国人に多いこの形は、偽乳の可能性も高いので眼力を鍛えて本物を見抜け!
 エントリーナンバー3! 釣鐘型! 
 重力に逆らう事をやめる覚悟は伊達じゃない! 全てを受け入れ、あるがままの姿を保つまさに自然体! しかしでかいだけじゃなくこちらには得も言われぬ妖艶さがある。なんていやらしい乳をしているんだ! こいつめ!
 エントリーナンバー4! 半球型!
 美しい……美しすぎる!!! 多くの人が理想のバストとするこの形は、均整のとれた膨らみによって表現された黄金形に他ならない! 径は大きく! カップは深く! ここにあるのは既にエロではない。完全なる芸術である!
 無論、生で見て、触って吟味しなければはっきりとした事は言えねえが、交渉を持ちかける4人はそれぞれの流法(モード)を使い分けている事は間違いない。俺の人生の目的である「究極のおっぱい」がどの型に属するかはまだこの段階では断定出来ないが(俺もHVDO能力を得てから随分と精神的に成長させてもらった)、この試みによってもしかするとそのヒントも得られるかもしれないぜ。
 俺は放課後を利用し、1日1人ずつ相手に口説きに行った。欲を言えば、俺はこの5000円で4人全員分のおっぱいを揉みたい。つまり1人あたり1250円。最悪1人に対して5000円の投資はやむを得んが、その場合は生で、乳首舐めもありというオプションはつけてもらわなけりゃ、ブックオフに身売りしていったグラビアアイドル達が浮かばれねえ。
 という事を踏まえた上で、一流のおっぱいネゴシエーターこと俺は交渉に入ったんだが、結果は惨敗だった。
 1人目のおわん型からは「彼氏いるから無理だし死ねし」と断られ、2人目の円錐型からは「絶対揉むだけじゃ収まらなさそうだから無理だし死ねし」と断られ、3人目の釣鐘型は無言で俺の金玉を蹴りあげた。
 そして最もタチが悪かったのは4人目で、そいつは俺が前の3人と交渉した事を既に知っていて、向こうから俺を体育館裏に呼び出し、こう持ちかけてきた。
「入学初日にA組の貧乳共全員を敵に回した奴って、てめえの事だよなぁ?」
 こいつは木下みたいななんちゃってDQNとは違うと俺は確信した。真の向こう見ずというか、低脳の臭いがぷんぷんする。自分の子供に「絵観根夢(えみねむ)」ちゃんとか平気で名づけて市役所の職員を噴き出させるタイプと俺は見た。
「校内で売りを持ちかけてたなんてバレたら、一発で退学だろうなぁ……バラしちゃおっかなぁ~。どうしよっかなぁ~」
 分かりやすい脅しだ。大方、要求は金だろう。
「いいだろう。金はやる」
 俺は至って冷静に5000円を財布から取り出し、その女の前に出す。
「……おう。なんだ、やけに物分りがいいじゃねえか。これから毎月持って来いよな」
 油断する女の態度に、俺は思わず抑えきれなくなってにやりと笑う。
「……あん?」
「だがこの金の渡し方は! 俺に決めさせてもらうぞ!!!」
 絶叫と共に、俺は5000円札をその女の谷間にぶち込む。ふははは! 馬鹿め! 等々力新の前で胸元の開いた服を着ていたのが運の尽きよ! 触りさえすればこっちの物! 交渉成立だ!
「なっ……!」
 1秒、確かに俺は乳に触れたんだ。
 感想?
 そうだな。
 柔らかかった。
 それしか言えんよ。
 俺とお前がいくら友達でもな。こればっかりは俺だけの思い出にさせてくれ。
「てめえ!!! ぶっ殺す!」
 俺が亀のように丸まり、這いつくばりながら土埃に塗れるまでにはそんなに時間はかからなかった。女は一切容赦の無い蹴りを俺の身体に繰り返し放ち、息が上がった所でこう言った。
「はぁ……はぁ……この事は先公にも言ってやるからな! 警察も覚悟しろよ!」
「おっと、果たしてそんな事が出来るかな?」
 俺は膝を払い、ぼろ雑巾のようになった身体をゆっくりと起こし、立ち上がる。
「この事をチクったら、俺もお前の悪行をチクってやる。他の生徒からも金を取ってるらしいじゃねえか。へっ、クズはクズ同士、仲良く一緒に退学しようぜ……?」
「ぐっ……てめえ……」
 他の生徒からも金を、の所は鎌をかけた訳だが、どうやら図星だったようだ。やけに脅し慣れてやがるし、きっとカツアゲを繰り返していたのだろう。
「覚えてるろよ!」
 悪役が必ず言う台詞を若干噛みつつ、女は俺の前から去った。俺は蹴られてる最中も抱え込んで死守した己の指を確かめる。
 この指は確かに数十秒前、女の乳に触れたのだ。
 合法的かどうかはギリギリのラインだが、とにかく俺は……やりとげた。
 だが……ちくしょう。殴られすぎた。意識が……薄れて……。


 次に目覚めた時、俺は制服シャツの下乳を眺めていた。
 後頭部には、おっぱいとはまた違うが、決して悪い気分じゃない弾力がある。
 あ? ここは天国か?
 と思っていると、空から声が聞こえた。
「あの、等々力さん。大丈夫……ですか?」
 俺は反射的に身を起こす。
 戻ってきた視界には、おっぱいが、いや、例の「頼まれたら断れない」稲村たわわがいた。
 場所は俺がボコられた体育館裏で、日が沈みかけている所から見るに時間はかなり経過しているみてえだ。
「……どうしてお前がここに?」
 そう尋ねると、稲村はおもむろにシャツを脱ぎだした。
 稲村の上半身は、やがてブラ1つになった。
 唖然とする俺。
「と、等々力さん!」
 稲村が大声をあげる。そんなイメージが無かっただけに、また例の張り手が飛んでくるかと内心びびって、俺は身体を強張らせた。だが露になった胸の谷間を見て、別の所も強張っていた。
「保健の先生から聞いたかもしれないですけど、私、長い間心臓の病気で入院していたんです。手術で治る病気だったんですけど、身体がきちんと育ってからの方が良いって言われていて、中学の頃には、もう手術を受けられる状態だったんですけど、その……勇気が出なくて」
 稲村の声は、どんどん小さく、涙混じりになっていく。
「高校生になって、これじゃ駄目だって思って手術を受けたんです。それで、無事に成功して、学校に通える事になったんですけど、でも私、どうしても弱くて。……自信が無いんです。ずっ1人だったし、みんなの話に、ついていけないし……だから色々と仕事を押し付けられたり、いじめられちゃったり……私、こんな私がどうしても嫌いで……そんな時、等々力さんに『胸を触らせてくれ』って頼まれたんです」
 空気を読んで黙って聞く俺だったが、視線は胸元に釘付けだった。
「本当はあの時、またいつもの癖で受け入れようとしてしまったんですけど、でも、やっぱりこの胸だけは見られたくなくて、それで私、どうしていいか分からずに、等々力さんの事をぶってしまったんです」
 稲村の胸には、傷があった。おそらく、心臓の手術とやらの痕だろうな。そいつはまだ生々しく、痛々しかったんだが、正直に言うと、「逆に」それが良くもあった。
「最初は私、等々力さんの事、人のコンプレックスに平気で触れてくる嫌な人だと思ったんです。……でも、たまたま保健室で先生と大声で話している所を聞いたり、私の事をいじめてた人達にあって、お金を渡そうとしてる所を見てしまったり、挙句の果てにはいじめのリーダーに私の代わりに殴られる事までしてくれて……それで、私……」
 何やら俺の知らねえ所で、稲村の気持ちは進行していたらしい。というか、全く持って偶然という奴なんだが、かといってそれを正直に言ってみすみすこの千載一遇のチャンスを逃すほど俺もお人良しじゃない。
 この流れからすると、おそらく稲村は俺におっぱいを揉ませてくれるだろう。舐めさせてもくれるだろう。吸わせてもくれるだろう。
 勝利はもう、すぐそこにある。
「それで私、やっと等々力さんが言った意味が分かったんです。『その傷はお前の戦った証だから、胸を張って生きろ。気にするな』って事を言いたかったんですよね?」
「ああ、その通りだ」
「そんな事も分からずに私、等々力さんに酷い事をしてしまいました」
「気にするな。間違いは誰にでもある」
「はい……あの、等々力さん」
「何だい?」
 来た! いよいよ来た! きたきたきたきた!!!
「私の胸、触ってもらえますか?」
 思えば俺は、HVDO能力を手に入れてからというもの、苦難の連続の中にいた。おっぱいを自在に操る能力といえば聞こえはいいが、第一能力は胸を膨らませるだけの物だし、第二能力は乳首をあてて衣服を破く能力で、第三能力を手に入れる前に噛ませ犬的な扱いで無残にちんこを爆破されちまう。結局、肝心の「揉む」という行為が出来ない。これでおっぱいマスターを名乗るなど、失笑されても仕方がねえ。
 稲村たわわは神が俺に与えたもうた奇跡と見て間違いねえな。この場所この時、俺はおっぱいを揉む。そう決定付けられた運命を、俺は手に入れたんだ。
 ……。
 だけど、よ……。
「悪いな稲村。今の俺には、お前のおっぱいを揉む資格はねえみたいだ」
「え!?」
「人がそうであるように、おっぱいにも良いおっぱいと悪いおっぱいがある。大きさや形の事を言ってるんじゃねえ。『あり方』の話をしてるんだ。女のお前には分からねえと思うが、男はみんな良いおっぱいが好きだ。もちろん俺もな。だがよ、良いおっぱいを揉むには『資格』がいる。やっぱり俺は間違っていたようだぜ。正直言うとな、お前の弱さを利用して、おっぱいを揉もうとしていたんだ。そんな奴に資格はねえ」
 俺は両手で自分の頬をぴしゃりと叩く。
「俺の目的はあくまでも究極のおっぱい。確かに、『合法的におっぱいを揉む方法』が存在すれば、そいつは実にありがたい事だが、生き方を曲げてまで手に入れる物でもねえ」
 立ち上がり、踵を返す。今日の夕日は目に染みらぁ……。
「稲村。お前のおっぱいは良いおっぱいだぜ。大事にしな」
 そして俺は、また新しい一歩を踏み出した。
 後ろから、「揉んでいいとまでは言っていないんですけど……変態……」という呟きが聞こえたが、まあ、聞かなかった事にしようじゃねえか。
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和田 駄々 先生に励ましのお便りを送ろう!!

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