自慢ではないが、俺は女にモテル。だが彼女はいない。
なぜなら、緊張するとオナラが止まらなくなるからだ。
それだけならまだしも、体中の力が抜けて何一つまともに動けなくなる。
原因は全くの不明。勇気を出して医者に相談したときは、大笑いされて追い返された。
自分でもおかしな体質だと思う。
幼稚園の時、お遊戯会があった。両親が見ている目の前で、俺はオナラを連発して体中の力が抜けた。俺がその場に座り込んで大泣きしているうちに、お遊戯会は終わった。
小学校の時は少年野球をやっていた。二死満塁の大ピンチ、俺はオナラを連発して体中の力が抜けた。俺はエラーを連発しその試合を落とした。
中学の時は柔道部だった。主将だった俺は、中学最後の大将戦でオナラを連発して体中の力が抜けた。俺は一本を取られ、その試合を落とした。
そのころになって、俺はようやく自分のおかしな体質に気がついた。
しかし気がついたところでどうすることもできなかった。
要は極度の緊張にさらされなければいいんだろう。俺にできるのは、そんなふうに諦めることだけだった。
高校に入学し、周りの友人達がどんどん幸せになっていく中でも、やはり俺に彼女はできなかった。
ルックスはいい。運動はできる。頭も悪くない。
デートだって、何十人ともしたことがある。しかし、いい雰囲気になった瞬間に必ずトイレに駆け込む俺と、何回も会ってくれる女の子はいなかった。
トイレから戻ると、そこに待っているはずの女の子の姿が消えている。もう慣れたと何度も自分に言い聞かせ、俺は熱くなった目頭を押さえるのだった。
*****
こんなことを人に言ったら嫌われると思うけど、私は男子にとてもモテます。でも一生彼氏はできないと思う。
なぜなら、緊張するとオナラが止まらなくなるからです。
それだけならまだしも、体中の力が抜けて何一つまともに動けなくなります。
原因は全くの不明。恥ずかしくて医者に相談することもできません。
自分でもおかしな体質だと思います。
肝心なときにいつもトイレに逃げこむ私を、友人たちは奇異の目で見つめました。
高校に入学して、もちろん人並みの恋愛に憧れもありました。
それでも男の人の前でオナラをするなんて、恥ずかしすぎて考えただけでも震えるくらいでした。
顔は…別に悪くないと思います。自慢ではないですが、運動も出来ない方ではありません。頭も真ん中よりはかなり上の方だと思います。
でも、自分でも分かってしまうんです。おとぎ話の王子様は、こんな女に微笑んではくれないと…。
私が残せるのはガラスの靴なんかではなくて、ただの緊張とそれに伴う気体だけなのですから。