Neetel Inside 文芸新都
表紙

安田清美の優雅でひそやかな生活
問われる前に答えようのコーナー 刀剣編

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七後「誰が訊いたか知らないが、訊かれてみれば確かに気になる、質問アワー。語りたがりの橘に代わって、本編で書ききれなかった事項を紹介」
清美さん「また妙な枠を設けたものだな。して、初回の題目は?」
七「9話の安田さんの行動について『刀を簡単に他人にあげていいの? 銃刀法に引っかからない?』という話です」
清「ふむ、もしそう考える者がいるとすれば、誤解をしているのではないか?」

清「銃刀法、正しくは銃砲刀剣類所持等取締法の定めるところによれば、美術品として価値があると認められた刀を持つことに特別な資格は必要無いのだ。十八歳以上で、住所を持つ者であれば基本的には可能だ。もちろん適切な手入れや保管を行うためには最低限の勉強は必要になるが、それは国家に強制されるものではない」

七「だからと言って、何の制限も無く持てるわけでもない、ですよね?」
清「その通り。刀の所在は各都道府県の教育委員会が管理しており、その刀をどこの誰が持っているのかを明らかにしておかなければならない。その証明が登録証だ。あくまで登録証が発行されるのは物に対してであって、人に対してではないのだな。刀を所持、携帯、譲渡、売買するときには必ずこの登録証を一緒にしておくことが求められる」
七「本編では、刀を入れる竹刀袋に付けていましたね」
清「また持ち運びの際には、現場に着くまでは厳重に梱包した状態でなければならない。私は竹刀袋の口紐を解いたまま吉瀬の家へ向かったが、あれは厳密に言えば違反行為なので、真似をしないように」
七「違法行為は他にもたくさんやりましたけど」
清「そして譲り受けた者は20日以内に、その刀を登録している都道府県の教育委員会へ所有者変更を届け出なければいけない」

清「刀を持つことについてここで言いたいことは大まか、上に説明した通りだ」
七「そもそも、業務その他正当な理由による場合を除いては携帯してはならないはずですけど、あの場合はいいのですか?」
清「私は明言したぞ。元よりあの刀を渡すつもりで持ってきたとな」
七「方便ですね」
清「否定はしない」 

清「総じて言えば、持つこと自体の制限はさして厳しくはない。また値段も、安い脇差ならば十万円台から買うことも出来る。言ってしまえば、自動車よりもずっと容易く手に入るのだ」

七「……所有者の資格のことで一点、新たに疑問が」
清「どうした?」
七「銃刀法の第五条、銃砲刀剣類の所持が許可されない者の条件として『アルコール、麻薬、大麻、アヘン又は覚せい剤の中毒者』が挙げられていますが、あの男はどう見てもアル中だったのでは?」

清「…………」
七「…………」
清「…………」
七「…………」
清「……人間は誰しも間違いを犯すものだ」

七「はい。というわけで、以上。機会があれば、また」

       

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