Neetel Inside ニートノベル
表紙

巡る廻る
始まり

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 退屈な日常。
 特にする事の無い日々。
「何処か楽しい世界に行けたらいいのに」
『ふむ。違う世界に行きたいのなら、いけばいいのでは?』
「簡単に言ってくれるけど、そう簡単に違う世界に行けるわけないだろ。そんなのが出来る
のはゲームや漫画のフィクションの世界だけだろ」
 ここは現実で、俺は普通の人間だ。
 そんな奴が非現実的な事を出来るわけがないだろ。
『ならば、私が違う世界に案内してさしあげましょうか?』
「はっ、出来るもんならやってみろよ」
 どうせ出来るわけがないんだからな。
『分かりました。では、退屈をしない世界。そんな世界に案内しましょう』
「はいはい、宜しく頼むよ」
『ええ、任せて下さい』
 その言葉と同時に急激に眩暈がして、視界がふらつく。
 あれ? そういえば、俺誰と話していたんだろうか?
 この場所には俺しか居ないのに、一体誰と――


「ぅ……ん……」
 眩暈が段々と収まり、周りの景色が見えてくる。
「……………………は?」
 何か大きな化物が視界に入った。
 待て待て、何で変な化物が居るんだ?
 そんな事よりここは何処なんだよ? さっきまで自分の部屋に居たというのに。
『ご自身が望んだ違う世界に来た気分はどうですか?』
 あまりの出来事に混乱していると、聞いたことのある声が聞こえた。
『退屈で平和な世界とは違う、楽しくて狂った世界。あぁ、素敵だとは思いませんか?』
「思わねぇよ! てか、お前誰だよ!?」
 急に俺の前に現れて、変な世界に連れてきやがって何なんだよ!?
『私の事なぞどうでもいいじゃないですか。今は、目の前の事に集中した方がいいですよ?』
「目の前の……」
 そうだった。この目の前の化物は一体何なんだよ!?
『早くその化物を倒さないと、あなたが死んでしまいますよ』
「はぁ!? し、死ぬって、いや、そんなことよりどうやって倒すんだよ?」
 生憎俺は、勇者でも超人でもないんだぞ。それなのに化物を倒すだなんて無理だろ!
『化物の倒し方なんて私が知るはずがないでしょ。それに先ほどからあなたは、文句ばかり言って
ますけど、あなたが望んだのでしょう? こんな世界に行きたいと』
「だ、だけど……」
 こんな状況は――
『まぁ、確かにこれよりもマシな世界はありましたよ。しかしですね、案内人である私としまして
も普通にあなたが楽しむ世界を見るのなんて、ツマラナイじゃないですか。ですから究極の状況。
 簡単に言うと、ロールプレイングゲームでいうところのラスボス。いきなりそんな場所に案内を
する。その方が楽しいでしょ?』
 子供のような笑みを浮かべて力説する変な奴。
 お前は楽しいかもしれないが、俺は全然楽しくないんだよ。
 むしろ生死が関わっている。
 それなのに――
『ははは、大丈夫ですよ。仮にあなたがここで死んでも現実に死ぬわけではありません。目が覚めて
あなたの部屋に戻るだけ』
「……夢って、事なの……か?」
『まぁ、それに近いものですよ。まぁ、痛みの方はきっちりとありますけどね』
 そう言って、高笑いをする。
 コイツ、本気でムカつく。一体、何がそこまで楽しいんだよ。
『さぁ、私を楽しませて下さい』
 クソッ! 何だよこれは。
『~♪』
 あーもう! 死ねばいいんだろ死ねば。
 どうせ俺があの化物を殺す事なんて出来ないんだから。だから大人しく死のう。
 覚悟を決め化物に向かって行き、俺は――


『はい、お帰りなさい』
「帰ってこれたのか……?」
『ええ。あなたは死んで元の場所に帰ってきました。しかし、私としては些か不満が残りますね。
 もう少し足掻いていただきたかったのですが、あっさりと死ぬとは……ね』
 不満そうな顔を隠しもせず文句を言ってくる。
「黙れ。そして消えろよ」
『いやはや嫌われてしまいましたか。まぁ、あなたがそこまで言うのでしたら今は消えましょう。
しかし、あなたが望めばまた私は違う世界を案内しましょう』
 爽やかな笑みを浮かべて目の前からいなくなった。
「クソ……本当に何なんだよ。夢? 夢なのか? だけど――」
 身体に残る妙な痛み。そしてリアルな感触。
 これはやはり夢じゃ――ない?

「意味が分からない」
 誰か、この状況について説明をしてくれよ。誰か――


『おやおや眠ってしまわれましたか。今回は些か不満が残りましたが、この方ならいずれ私を満足
させてくれるでしょう。
 ふふふ、実に楽しみですね……』
 

       

表紙

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