Neetel Inside 文芸新都
表紙

朝起きたら股間が爆発する物語
一人目 -喪女-

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股間が疼く。なぜだろうか。少し痒い。オナニーのしすぎだろうか。いや、私は喪女だが、オナニーには気を使っているほうだ。オナニーのために爪もちゃんと爪も切っているし、道具もちゃんと洗っている。
性病かもしれないが、それは無い。何故なら私は喪女だからだ。セックスもキスもしていないのに性病にかかるわけもない。
その上しかしこの感触は何だろう。股間がすごく濡れてる気がする。生暖かいのだが。なんだろう。もしかして漏らしてしまったのだろうか?
だったら私は完全な喪女になってしまう。この年でお漏らしは精神的にも厳しいだろう。しかしこの生暖かさは間違いなくそれである。どうするべきか。
いつもお母さんに洗濯してもらってるのに、これだとお母さんに見せることが出来ない。これは大問題である。自分で洗濯出来るのだろうか、いや、出来ない。そういえば私は洗濯機の使い方すら知らない。料理もだ。何故なら私は喪女だから。
涙が出てきたので手で拭った。その涙のついた手で股間を触る。私の股間も濡れていた。暖かい。尿とはここまで暖かいものだったのか。そういえば私は尿について何も知らない。喪女なのに尿に関しては詳しくない。
以前チャットで知り合った喪女の方は尿は塩味だと言い張っていた。どうせなら、舐めてみようかと思い、私は股間から離した手を顔に近づける。

布団の中から手が出てくる。しかし、どうも変だ。手が赤い。血だ。鉄くさい。生理だったのだろうか?
いや、それは無い。何故なら生理は先週だったはずだ。とりあえず立ち上がって拭こう。臭いし。そう感じ私は立ち上がろうとした。

出来ない。

何でだろう。私が喪女だからか?
足が動かない。
どうして?私が喪女だから?

股間の痒みが痛みへと変わってきた。痛い。痛い。痛い。どうして?
どうして私は喪女なのにこんな痛い目にあわなきゃいけないの?どうして?何で血が出てるの?嫌だよ怖いよお母さん・・・。
痛みで声が出ない。私は今、「お母さん!」と叫びたいのにだ。あまりの痛みで声が出ない。股間が痛い。
が、ここであることに気がついた。私のまんこが無い。

     

まんこが無い。

まだ使ったことが無いのに、まんこが無い。
どうしよう。まだ処女なのに。
いや、小学生の時に好きな男の子のリコーダーで貫通したから厳密に言えば処女では無いのだが。どうしよう、まんこが無い。
布団をどかす。血まみれのズボンとパンツを降ろす。まんこが無い。厳密に言えばまんこが吹き飛んだと言うべきであろうか。まるで何かに抉られたかのように股間が吹き飛んでいた。
傷は意外に深い。8センチくらいだろうか。3インチかもしれない。意外な事に、血は止まっていた。布団には私の飛び散ったまんこがついていた。気持ちが悪い。

さて、どうしようか。まんこが痛い。いや、私はこれをまんこと呼べるのだろうか。まんこは飛んでしまった。どうしようか。股間と呼べばいいのだろうか。
喪女だからどうでもいい。とりあえず、お母さんを呼ぼう。お母さんなら二階で寝てるはずだし、おばちゃんだから何かと知識が豊富だ。起こしに行こう。

不思議と痛みは消えていた。

ドアを開ける。何の変哲も無い、見慣れた光景。ドアを開けると部屋の前に好きなアニメのポスターがある。喪女だからだ。
階段をゆっくりと上る。その度に股間が刺激される。もしかしたら出産直前の妊婦はこういった痛みを持っているのかもしれない。もしそうなら、私は一生喪女でいい。処女のままでいい。
いや、しかし私は仮処女だ。処女膜は無い。だからといってリコーダーで妊娠するわけでは無いからどうでもいいのだが。こういう事を考えると、すぐに時間が経つのが嬉しい所だ。気がつけば階段の上にいた。

「お母さん・・・」と小さく呻いたが届かない。大声は出せない。まんこに響く。お母さんの部屋をノックする。返事が無い。
お母さんは寝てるのだろうか。とりあえずドアノブを回す。開かない。鍵がかかっている。珍しい事もあるものだ。出かけているのだろうか。
今は何時だろう。時計とは無縁の生活をしてきたから時間がわからない。とりあえず出かけているのだろう。急いで履いたズボンにちょうど携帯が入ってるし電話をしよう。
ポケットに手を入れると、何かねとっとしていた。また血だ。臭い。アドレス帳は母と父とネットで知り合った喪女数人の分しか無いので母の番号を見つけるのは簡単である。
とにかく電話だ。通話ボタンを押す。「ティロリロリロリロリン」というどこかで聴いたクラシックの音楽が流れ出す。部屋からバイブの音が聞こえる。忘れていったのであろう。仕方ない。父に電話しよう。
電話帳の父の名前はフミヒコである。カタカナであるのは見つけやすくするためだ。頼りになる親バカなので役に立つ。こちらも出なかったが、留守番電話に「お父さん・・・まんこ・・・爆発した・・・」と入れておいた。父のことだからすぐに来るだろう。職場も近かったはずだ。
とにかく今は疲れたので、仮眠を取ることにする。どこからか喘ぎ声の幻聴がする。私はセックス出来ないのだろうか。そう思うと少し悲しくなって、私の頬を涙が伝った。

     

眠い。

けれど誰かが叫んでいる。

ウザい。

寝てるのにマジでウザい。

ムカつく。

いくら喪女だって寝てるのを揺らして起こされたらキレる。誰かと思ったら父だ。父が泣きながらを揺すっている。正直ウザい。
私はお母さんのことはお母さんと言い、父は父と呼ぶ。私は父が嫌いだ。何故なら鬱陶しいからだ。とにかく鬱陶しい。まだ揺らしてるし泣き顔も気持ちが悪い。
目を開けてるのすら気がつかない。頭がおかしいのかコイツは。意識が遠のいてきた。気分が悪い。嘔吐しそうだ。早く止めて欲しい。声が出せない。こんなに父に殺意を覚えたのは久々だ。
中学三年の授業参観の時に授業中に「こっちむいてー!さとこー!さとこー!」と叫んでいた時くらいか。あの後凄くいじめられた。しかも高校に入っても続いた。
黒歴史である。そうして思い出したくない思い出を思い出してしまってる内にだろうか、揺れが止まっていた。やっと止めてくれた。再び目を開けると、そこには顔をくしゃくしゃにした父の姿があった。
気持ち悪い。「救急車呼んで・・・」と呻くと凄い勢いで電話のある一階へと走っていった。

未だに目眩がする。母はまだのようだ。ドアが開かない。何か違和感を感じるが、何かはわからない。父の声が聞こえる。意外なほど冷静に救急車を呼んでいる。容態は告げていない。知らないからだろうが。
しかし驚くほどに冷静である。これは父が仕事場で得た能力なのだろうか。あの私がいじめられる発端となった場に、父の上司の奥さんがいたらしい。しかもその奥さんがビデオを回していたらしく、その後その映像を会社で晒されていたのがきっかけとなり、会社に居づらくなり退職し、その後、主にお年寄りの家に訪問し、幸せになる道具を売る仕事をしている。
やはり、セールスマンというのは冷静さが欠かせないのであろう。しかし家族の前だと駄目だ。また頭を揺らされると次は絶対に吐いてしまうだろう。
父の階段を上る音が聞こえる。救急車は呼んだのだろう。父のほうを見ると父がまた泣き出した。「私は大丈夫だから。」と言うと、父は心なしか安心したように見えた。

     

父が落ち着いてきているのがわかる。さすがセールスマンだ。表情のごまかしは上手である。しばらく黙っているのは何故なんだろうか。
とりあえず「どうしたの?」と聞いてみると、父が口を開いた。「母さんは?」父はそう言った。父にしては珍しい発言である。いつもなら私の心配だけをしていたのに。「今居ないよ。ほら、部屋のドア鍵かかってる。」と言うと、父が何か不思議そうな顔をした。
また「どうしたの?」と聞くと、父は「それは変だ。車は外にあったし、それに、部屋の鍵は外からかけれない。」と言った。確かにそれはもっともだ。そういえば鍵穴が無い。
内側からしか掛けれないのなら、お母さんは中にいるのか?もしそうだとしたら、何故出ないんだろう。嫌な予感がする。父も表情が変わり、目を細めている。父の考える時の癖だ。
父と目が合った。暑苦しい顔だが、意外と頼りになるのかもしれない。そう見ていると、父が突然6歩ほどドアの前から下がった。そして徐に、ドアに向かって走り出した。木の割れる音が響く。父が肩から突っ込んだドアは、ちょうど父の肩を中心にしてめり込んでいる。

父が頭を抑えながら立ち上がる。血が出ていた。頭を切ったのだろう。怖くて何故だか泣きそうである。正直漏らしたかもしれないが、まんこが無いからわからない。

そう考えていると父がドアを蹴った。木の割れる音が響き、ドアが奥へとめり込み、壊れて空間をつくる。ドアが空間を作った時に、窓際にいるお母さんの姿が見えた。

そして、何かが何処かでうめき声を発した気がした。

     

どうしてお母さんが居るんだろう。しかも起きている。どうして私を助けてくれなかったんだろう。お母さんは外を見ている。
あたかも何か下にあるものを覗いているかのように。父は何か言っているようだが、声になっていない。

しばらくすると、お母さんが突然立ち上がり、「さよなら」と言った。私と父は、何か言葉を返そうと思ったが、何も思いつかない。

その数秒後、お母さんの姿が消えた。正しく言えば、お母さんが窓から落ちていった。

     

ここは何処だろう。屋根がまぶしい。電気だ。光だ。蛍光灯だろうか。まぶしい。揺れている。体が揺らされている。
サイレンがする。救急車のサイレンだ。白衣を着た男と、父が私を見ている。父は泣いている。
白衣を着た男は、私を見て、「原因不明ですね。どうしてこんなことが起こったかはわかりません。しかし今までにこんな患者は診たことがありませんね。」とか何だか難しいことを言っている。

父は泣いている。

横に二つのベッドがある。お母さんと、あと一人は誰だかわからない。しいて言うなら中学生一年の時の担任に似てる。
名前はなんだったのか思い出せない。確かあだ名はゴリラとかゴリ助とか、そのような感じのあだ名だった。
しかし本当に似ている。そう思っていると医者と思われる人物が私に気づき、「大丈夫ですか?息は出来ますか?」と言ってきた。
何故か手を握ってきてドキッとしている私は何なのだろうか。しかもよく見ればなかなかのイケメンである。濡れてしまいそうだ。まんこは無いけど。父以外の異性と話すのは久々なので緊張してしまう。私は喪女だから、「は・・・はい・・・。」と気の抜けた返事をしてしまった。恥ずかしい。
「もうすぐ病院に着きますからね。もう少し寝ててもいいですよ。」と言われた。声まで凄くイケメンである。話したいのに話せない。私は喪女だから。とにかく父に何が起きたのかを聞きたいが、今聞いていいのだろうか。今はいいや。寝よう。疲れてしまった。

お母さんは何故飛び降りたのだろう。お母さんはどうして私を助けようとしなかったんだろう。お母さん、どうして?

     

天井が白い。何となくわかる。病院だ。つまりここはベッドの上だ。そして私は、入院しているのか。
そうだろう。花が見える。差出人は父だろうか。横のベッドには仕切りのカーテンが張られている。
このカーテンのような薄茶色は普段は嫌いだが、白い物に囲まれていると、愛らしく思えてしまう。そういえば私の股間はどうなっているのだろうか。

違和感は全く無い。しかし触ってみると、やや硬い。骨折した時に使う石膏のような硬さだ。その石膏がわたしのまんこの周りを隙間無く囲んでいる。
しかし妙だ。これではトイレに行けないのでは無いか?この状況で尿を出すとどうなるのか、少し気になってしまう。逆流するのか、それとも内側にたまるのか、むしろ出ないのか。どうなのだろう。

そういえば以前に尿を舐めたことがあるチャットで会った喪女の先輩はまんこにガムテープを貼って尿をしてみるとガムテープが吹き飛んだらしい。俄かには信じられない話ではあるが、もしかしたら本当なのかもしれない。
まんこの辺りが痒い。蒸れているのだろうか。嫌な痒みがする。しかし、石膏のような何かで覆われているため、掻けない。苛々する。なんで私はここにいるんだろう。

そうだ、まんこが爆発したんだっけ。それでお母さんに助け手貰おうとして二階に行ったんだっけ。お母さんは二階にいて、私はお母さんと会わなかった。そして父が助けてくれた。

あれ?

どうして?

どうしてお母さんは助けてくれなかったの?

お母さん?

どうして起きていたのに鍵をかけていたの?

どうして、どうしてお母さんはさよならと言って飛び降りたの?

お母さん?

何処に居るの?

死んだの?

何で死んだの?

誰のせい?

私?

父?

誰が悪いの?

誰がお母さんを殺したの?

救急車で寝ていた男の人は誰?

何で私達と一緒に運ばれていたの?

どうして?

あれは中学生の時の担任に似ていたけど、誰なの?

あれは誰なの?

あれがお母さんを殺したの?

じゃあどうやって殺したの?

何が起こったの?

死んだの?

死なされたの?

生きてるの?

答えてよ・・・お母さん・・・お母さん・・・怖いよ・・・

わからないよ・・・助けて・・・

おかあさん・・・おかあさん・・・こわい・・・こわいよ・・・痛いよ・・・・

何が起きたの?

ねえ、お母さん・・・何か答えてよ・・・・ねえ・・・おかあさん・・・

     

ふと、カーテンの奥の影が揺れたのが見えた。

人が居るのか。涙が出ている。拭かないと。どうしよう。誰だろう。お母さんだったらいいのに。お母さんかな。お母さんであったらいいのに。
お母さんは無事なのかな。お母さん。「お母さん?」と声をだしてみたが、返事は無い。しかし、カーテンの奥の影は、少しだけ動いた。お母さんだ。きっと。開けよう、カーテンを。 

カーテンレールの摩擦音が響くと同時に、私の期待は裏切られた。救急車に居たアイツだ。中学の時の担任に似ている。
というか、ほとんど本人だ。名前はなんだったか。ゴリラとかゴリ助とか、そんなあだ名だ。「ゴリ・・・ラ・・・?」と言ってしまった。
やってしまった。他人だったらどうしよう。と考えていると相手は「バレてしまったか・・・すまない。さとこ。」ああ、今思い出した。この教師のことについて、名前を除く、全部。担当科目は体育で、無駄に熱血だった。
そして、生徒のことをみんな名前で呼んでいた。しかし、未だに名前を覚えていることは意外である。私は当時空気の薄いただのいじめられっこだった。先生は確かに何度か家に来ていたが、実際私とはあまり話したことが無かった。

「おい、さとこ、大丈夫か?すまないな。辛い思いをさせて。」 「ゴリ・・・」ゴリラといいかけてしまった。
どうしよう。私はこの先生の名前を覚えていない。「先生は、どうしてここへ?」こう呼んだほうが安全だ。
先生は「ゴリラでいいよ。もう慣れてしまったからな。」とすぐに返事をした。しかし、ゴリラは肝心なことを言っていない。呼び名などあまり関係無い。

「それで、ゴリラは今日どうしてここへ?」と聞いたら、ゴリラはうつむいてしまった。目が潤んでる気がする。ゴリラが目を拭き、唇を口の中に入れ込む。そして、ゴリラがゴリラの目から流れ落ちた涙をそっと拭った。
ゴリラは、泣いている。ゴリラは何も無い真っ白な天井を見上げ、泣いている。静かに泣いている。
「どうかしたんですか、ゴリラ?」と聞くと、ゴリラは震えた声で、「すまない・・・」と言った。何がすまないのだろうか。

ゴリラは悪くないはずである。ゴリラはすぐに「私の責任だ。全て話そう。」と言葉を続けた。声は震えていて、顔が赤く、涙が流れ落ち、鼻水をすする音が厄介である。
が、しかし、ゴリラの責任とは一体どういうことなんだろうか。私のまんこはゴリラのせいでこうなったのだろうか。ゴリラと最後に会ったのは中学三年生の終わりだ。

しかも、まともな会話をしたのは更に前になる。ゴリラは今の私と、関係無いはずだ。また、ゴリラの口が動き出した。

     

ゴリラは、私の目を、彼の眉毛が薄く、筋肉で盛り上がった眉で影に覆われている目で見つめながら言った。
「さとこ、すまない。これは先生、いや、私の責任だ。」と言ったゴリラの頬には、涙が流れ、声は震えている。
私は、何故だか声が出ない。唖然としているのだろうか。自分でもわからない。またゴリラが話し始める。
「私は、簡単に言えば、浮気だ。君の、お母さんと。すまない。浮気を、していたんだ。」と、震えた声で、話した。

お母さんが、浮気をしていたらしい。

この、ゴリラと。

大体理解は出来た。理解はしたくないが。つまり、お母さんとゴリラは浮気をしていた訳だ。
そういえば最近お母さんはよく外へ出かけていた。これもそう言う事なんだろう。
そういえばお母さんは「ねえ、中学の一年の時の担任覚えてる?」と何度か質問をしてきたことがある。これもそう言う事だったと思うと、少々不気味だ。

頭がグラグラしているのがわかる。まだ気分が悪い。吐き気がする。ゴリラはまだ、喋り続けている。お母さんとゴリラの関係何て何も知りたくは無い。私は何も知りたくは無い。
そんなことを聞きたくなかった。もうお母さんは信用できない。ゴリラも信用できない。

誰も、誰も、信用できない。

誰も助けてくれないんだ。

誰か助けて。

誰か。

誰か。

私を助けてくれないの?

いや、誰かは助けてくれるはずだ。

誰だ。

父?

違う。

誰なんだ。

私?

違う、私じゃない。

じゃあ、誰?

お母さんでもない。

ゴリラでも無い。

では誰だ?

仲間はいるのか?

私に。

居ない。

誰も居ない。

助けてくれない。

誰も。

何も。

もう、助けてくれない。

お母さん─────

     

やっと、ゴリラの会話が止まる。私は、泣いていない。ゴリラの言った内容は、私には、あまりにも理解し難く、信じられない事だった。
まず、ゴリラは私が入学して半年くらいしてからお母さんとは親交があったらしい。まだ恋人では無かったけど、父が会社を退職し、その後セールスマンに転職して、父が帰らない日が増えてから交際を始めたらしい。

お母さんが帰らない日が多かった気がしたが、やはりそういうことだったらしい。お母さんはゴリラと肉体関係を持っていた。
お母さんが、ゴリラと。

そしてその後は、関係を深め、私が自宅に居るときにも普通に家に招いていたらしい。
そして、関係を深めたお母さんとゴリラは、一緒に住むことを計画しだしたそうだ。しかし、できなかったらしい。
何故ならゴリラはアームレスリングの世界大会で相手の腕をへし折ってからは、野蛮教師のレッテルを貼られ、生徒の親からのクレームを受けて退職せざるを得ない状況になり、今はとび職に転職せざるをえなくなった。
もう一方母は、生まれつき体が弱く、仕事の出来る体では無い。ここで、問題となるのは、資金である。資金は十分であった。
もしそれが二人で暮らす資金であれば。しかし、それは所詮、二人分であり三人分にはならなかったわけである。つまり、私の分は無かった。

私を父に任せることは出来なかったらしい。もしそうなると養育費等が嵩張ってしまい、どちらにせよ二人では暮らすことは出来ないからである。

その結果、ゴリラとお母さんが思いついたのは、殺人らしい。

つまり、私を、殺そうとしていたのである。

     

これが私のまんこが爆発していた理由である。

お母さんは、私が煙草を吸うのを知っていた。そこで、理由をつけるのは、寝タバコが一番わかりやすい死に方だろうと悟った。
そして、タバコを私に勧めたのは父なので、それを理由に離婚をするという魂胆であった。

そして彼らが仕組んだものは、火薬だった。

お母さんとゴリラは、私の枕に火薬を仕込んでいたらしい。枕の中に火薬を居れ、その中に電池を使用して作った小学生が作るような簡易なスイッチ式の発電機を作ったらしい。
スイッチは非常に反応しやすく、寝返りの一つでもすればスイッチが入り、放電され、火薬に反応し爆発する仕組みだったらしい。
そして、枕の下に油を敷いて準備完了だったらしいが、それは誤算だった。火薬はどこにも点火されず、ただ、爆発しただけだった。
彼らの誤算は、私はオナニー中毒者と言う事だった。これはゴリラの話を聞いていて思い出したことなのだが、私はオナニーをしていた。

その日、枕を使って。

そして、スイッチを入れてしまった。

その結果、私の股間で爆発。

私の股間は吹き飛び、無くなってしまうと同時に、火薬の熱が素早い止血をして、見事に股間が吹き飛ぶ形となってしまったらしい。私のパジャマは股間に綺麗に穴が開いていたらしい。
よく考えれば空いていたかもしれない。が、気がつかなかった。ゴリラと母は、セックスをしていたので音には気がつかなかったらしい。そしてセックスが終わり、ドアを開けると、そこには私が倒れていた。
そして反射的にドアを閉めて、お母さんとどうするか話し合っていたところに父が来てしまったらしい。そして、ドアを打ち破られた時に、ゴリラは咄嗟に飛び降り、混乱したお母さんも後を追って飛び降りた。

体力のあるゴリラはねんざで済んだが、体の弱いお母さんは、ゴリラの横で、受身を取れずにコンクリートに体を強くぶつけて、動かなくなってしまったらしい。

父はすぐに救助に向かったが、父が外に出る前に、お母さんはちょうどよく駆けつけた救急車に乗せられていった。そして、応急処置をする前に、お母さんは息を引き取ったという。

     

気づけば目の前は赤く染まっていた。

ゴリラがうめき声をあげて、ゆっくりと倒れていく。首の横から出た血が、勢いよく、まるでホースから出る水のように噴出している。
横に居るのは、父だ。泣いている。ゴリラが何か呻いているが、首の血の動きがそれに合わせて少し動きを変えるだけで、何を言ってるかはわからない。

ゴリラが目を閉じた。次の瞬間、大きな音が聞こえた。耳を貫く、花火のような音、銃声。父の体がゆっくりと倒れていく。白かった周りの壁が、赤に染まっていく。

父が、死んでいく。

私を残して。

父が床に倒れた。顔は既に、顔では無くなっていた。私のまんこがそうだったかのように。父の手に握り締められた黒く光る銃が、血を浴びて艶美に輝いている。
それを手に取るために、立ち上がる。まだ立ち上がるとまんこが痛い。が、それはすぐ終わることなので、気にする必要は無い。使い方はテレビで見たので知っている。

すぐに終わる。

だから、私は紅蓮色に輝く銃を拾う。

セーフティーロックを外す。

頭に突きつける。

引き金を引く。

カチン───という音がした。

     

気がつけば、また、白い壁に囲まれていた。

一つだけ違うところがあるとすれば、今度は私の白いベッド以外には、何も無いと言う事である。

ドアはあるが、内側からのドアノブは無い。

トイレもあるが、白だ。

私の服も、白い。

肌も白い。

白しか無い。

気分が悪い。

白い机がある。

吐き気がする。

ここは天国なのだろうか。天国とはこういう所だったのだろうか。母も父も、天国にいるのだろうか。
ここが他にもこういった部屋が会るのかな。あったら、お母さんに、本当のことを聞こう。

コンコン、と、ドアのノックが不意に耳を刺激した。ドアノブを回すような音がして、ドアノブの無い扉が開いた。
白い服の男が来た。そして口を開けて、「ついてこい」と言った。

ついていくことにしよう。

もしかしたら、他のみんなに会えるかもしれない。ああ、お母さんに早く会いたいなあ。
通路の壁も全部白いし、本当にここは天国なんだろう。

しばらく天国の道を歩くと、「この部屋に入れ」と言われた。ドアノブに手をかけると、容易に開けることが出来た。
中にいるのは、お母さんじゃない。白い服を着た、お爺さんだ。大天使様かもしれない。大天使様が口を開いた。
大天使様は、「君はここから出れない。」と言った。私は「お母さんには、父には、会えますか?」と言った。
大天使様は「彼らは死んだ。」と言った。

これは大天使様じゃない。

偽物だ。

私は嘘が嫌いだ。

嘘をつく人間は、殺されるべきだ。

例えば、父がやったみたいに。

殴ればいいや。

殺してしまおう。





死ね。

     

また、白い部屋に戻っていた。

ここは、天国じゃない。まだ、地球だ。それか、地獄か、とっても怖いところ。だから、私は、今から死ぬ。
死ねば天国へ行ける。またお母さんに、父に、会える。どうやって死のう。そうだ、私のまんこは、今、無い。傷だらけだ。オナニーをして死のう。
喪女には一番いい死に方だ。オナニーをして死のう。私の手が私のまんこに触れる。正しく言えばもう少し奥だが。それに少し痛い。けれど、気持ちがいい。
擦ると物凄く痛いが、物凄く気持ちがいい。止まらない。手の動きも。血も。何もかも止まらない。気持ちいい。私のまんこから血と一緒に、他の液も流れていることがわかる。

今までで一番気持ちがいい。触るたびに、痛みと快楽が押し寄せてきて、それが脳でとろけてしまう。
それと同時に、だんだんと意識が遠のいていくのがわかる。うっすらと視界が閉じていく中で、私が絶頂に達しているのを感じる。
溶けていく。私は、溶けていく。溶けていって、天国で、お母さんに──────。




  一人目 -喪女- 完

       

表紙

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Neetsha