Neetel Inside 文芸新都
表紙

吼えろピザ
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カチ… カチカチ…

 巨体を布団にくるませながら顔と腕だけを出した男がマウスを叩く。

『編集部』

カチ… カチ…

『文藝新都』

カチ… カチカチカチ…

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413 :名無しの文豪 :06/10/26 21:02:54 ID:9b5uc65M
 全体的にクオリティ低いからどうしようもない
 連載自体はちょこちょこ始まってるけど、どれもな

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「うぼおおあああああああああああああああ!!!!」

巨体を布団ごとのた打ち回らせながらの巨大な芋虫を思わせる動き。
布団の周りに置かれた週刊誌やゲームを跳ね除けながら、
しかし数秒たってからその動きはピタリと止む。

「いいや、まだ待て!俺の心よ待て!
 フフフフ………そうだ俺はまだ作品を書いちゃあいないぞ!
 ピンクハートも一話で自己打ち切り…
 恋人ランナウェイもまだ良いトコロを書いちゃあいない!
 だから作品を評価など出来る訳が無い…!
 フフフフフ、クァーハハハハハハ!!!
 そうだ俺はまだ書いちゃあいないぞ!」

カチ! カチ! カチ!

「それはどうかしらね」

「む………誰だ!」

二階から引っ張ってきているLANケーブルの為に完全に閉まりきらない扉、
その向こうから中途半端に遮断された声を男はしっかりと聞きいっていた。

「兄さんは極度のヒキコモリ生活に妹の声も忘れてしまったのかしら!」

バァーン!

扉を壊れるかという勢いで開く姿は、白い細身に覆われた女性!
しかしその背中に見える冷酷なまでに燃える氷の炎!
それは紛れも無くこの小説の作者ピザの妹、その名は…

「き、貴様は我が妹、魔裏(まり)!」

「そして今、兄さんは自分の作品からもひきこもろうとしている!」

「う…!」

妹がピザのマウスを細く、しかし氷の彫刻の様な厳格さを持って指し示す!
そのピザの手はまさに今、作品をゴミ箱の中に入れようとしていた!

「作品を消せばもう続きは書けない!」

「う!」

「どうせ文藝新都でも読んでる奴は少ないのだからすぐ忘れるだろう!」

「うう!」

「そして何より、恋人ランナウェイでのパスを忘れて犯したバカ丸出しな行動!
 BARピンクハートの第二話目でぶっちゃけちゃった恥!
 初っ端からの失態で見られる周りからの冷たい視線から逃げたい!」

「うううああああああああ!!!!!」

ピザが布団から飛び出し、扉に寄り添う妹に対して身構える!
何に!?それは妹が串刺す我が心にだ!ピザは己の心の内で吼えた!

「なぜだ!なぜ貴様はいつも俺の心の内を読む!」

「顔に書いてるからよ!」

「何!顔に書いてるだと!」

「あなたのその顔!まるでドブ川に片足突っ込んだ時の様な鬱憤としている!
 そんな顔を見れば何が起きたかなんて一目瞭然よ!」

「ううむ…しかしなぜ俺が文藝新都の作者ピザだとわかった…?」

「それはね………私も文藝新都の読者だったのよおおおおおおおおおあああああああ!!!!!」

「なァァァァんだってェェェェェェァァァアアアアああああああああああああ!!!!!!」

二人の間で冷酷なまでの稲妻が走る!恥という名の稲妻!
痛い作品を書く作者が兄!痛い作品を読む読者が妹!
この奇妙な兄妹関係に二人の額から流れ出すナイアガラの滝はピークに達していたァ――!!

「う…うう…大体コトの展開は解ったぞ…。
 しかし!この作品をどうしようが俺の勝手だ!
 消そうが消さまいがな!」

「確かに兄さんの作品はつまらないわ…在り来たりな学園モノ…
 しかもヒロインも主人公も無個性!こんなのに読者が食いつく訳が無いじゃないの!」

「知った口をォォォォォオオおお!きィィィくなあああああああ!!!!!」

先程の両者の咆哮!それを凌駕する超咆哮!
それがピザの口から発せられたァ――――!!

「あの作品は!主人公がバトンを渡す時に杉田の目をくり抜くコトから始まる!
 そこから始まる錯乱!狂気!そして主人公が刃物を全身に接着剤でくっつけ、
 ヒロインを学校で追い回す刃物怪獣ナイフダーに変身するコトから始まる!
 チープな怪獣っぽさでギャグ小説みたいに書くから恐怖が倍増してよおおおおお!」

「だまらっしゃい!!!!」

「う…!」

まるで尻の穴に氷のツララを「大丈夫だから」なんて言われながら少し刺された感覚!
ピザの頭の中に残る幻覚!その冷気が魔裏から先程の数百倍もの規模で吹き荒らされていた!

「つまらないわね」

「な!」

「そもそも貴方の作品に足りないのは!萌!エロ!インパクト!ギャグ!そして愛!
 私達が求めてるのはそれよ!シリアスな作品なんてプロの方々ので間に合ってるわ!」

「う!…た、確かに俺もアマチュアのシリアスな作品を読むと、
 途端に厨臭いとか思ってはしまう…しまうが!」

「そう!それなのよ!貴方には読者層を読む力が足りない!
 そもそもVIPでやってるのにシリアスも糞もある訳が無いでしょうが!
 ブーンやツンデレが人生を語る作品なんて誰も読みゃあしねえのよ!」

「そ…」

ピザの両膝が布団の上へ重く沈みこむ!敷き続けていた布団の下はカビが生え腐敗!
当然の様にピザは床下の冷たいコンクリートへと叩きつけられる。
その地面を抱く様な姿勢、だがピザは余りのショックに身動きが取れない!

「そうだったのか…いや、俺はデッドライジングをやって!
 あのデッドライジングというゲームに出てくるスーパーの店長!
 あれに感動してB級サスペンス風味の作品を作りたいと思っていた!」

「まだ戯言を…」

「違う!」

「な!」

「なのになぜどんどんまともな方向に進んでいったのか…
 そいつは俺が過去に熱血文を書きまくっていたからだ!
 熱血的な小説をたまに書いていたから!だから!
 そんな熱血の方向から逃れようとしていた!」

ピザのカラダが沸々と震え出す!
怒りでは無い筈だった!だが己への怒りだった!
しかしそれは怒りだけでは無かった!
空へ突き昇るアポロ号の如き吹っ切れ!
そいつがピザの体、否!心、否!
魂を沸点へと導き出すガスコンロと化し、着火されていたあああああ!

グワァァァァオオオオォォォォオオォォォォオ!!!!!!(←炎の音)

「フフフ…クァーハハハハハハハハハハハハハハハハ!」

「兄さん!なぜ笑う!」

「我が妹、魔裏よ!俺は吹っ切れたぞ…吹っ切れたからこそ!
 次の作品へのアイディアもどんどん噴出してくるぞ!
 次の作品は『機械少年ブーン』!フフフ…どんどん頭の中に!
 作品の全貌が浮かんでくるぞオオオオオオォォォォオォ!!!!」

「フフフ………兄さんがハイパー兄さんになってしまった!
 もう誰もこの兄さんを止められないわ…フフフフフ…」

「「ハーハハハハハハハハハハハハ!!!!!!!」」



妄想島○大先生
『失敗しただと?認めるな!
 君が失敗したと思わなければそれは失敗じゃない!
 周りが冷ややかな態度を取る程に見栄を張ってやれ!』

     

――生中継――

『いやあ、しかしこれはテレビ界にとっての損失な訳です。
 失った信用は誰にも取り戻せない訳で…』
『………ククク』
『おい貴様!そこで何笑っている!』
『お前は何にも分かっちゃあいない…そもそもこの番組!
 こんな台本通りの議論に一体何の…』
『お…き、貴様何を!』
『う、うるさい黙れ黙れー!こんな事をしているからテレビは腐るのだ!
 日本は腐………や、やめろ離さないかー!貴様らが日本をー!』
『カ、カメラを止めろーッ!こんな乱れた映像が外部に流すなーッ!』

――ただいま、映像の乱れのため放映を見合わせて………――

ブツン

散漫とした、しかし何も無いちっぽけな部屋にテレビを切る音が広がる。
その部屋で動いているのは、もはや布団にくるまった巨大な塊のみ。

「………どこのテレビ局も………全くどうしてこう」
「良くそんな事が言えるわね!兄さん!」

布団にくるまれた顔から除く目がギョロっと扉へ向く。

「………!誰だ!扉越しに耳を当てている奴は!
 しかもお前は声を荒げオレに忠告をしている!
 隠れる気すらない盗み聞きとは敵ながらに!」
「兄さん!あまりの引きこもり生活に妹の声すら忘れてしまったのかしら!」
「お、お前は!オレの妹の!」
「魔裏(まり)!そう魔裏よ!あなたの妹で高校生!
 もう少しで卒業生になる妹の魔裏!魔裏なのよォ――――ッッ!!!!」

衝撃!この二人の衝撃!
そう!この二人の出会いは、毎度の自己紹介から始まる!
まるで!まるでこの義理の関係の様なギコチナさ!
全て!全てが『兄の引き篭もり』!
これが、すなわちキーワードなっていた!原因であり結果であったァ!

「ふん!しかし今回はお前の言うとおりにはならんぞ!
 今回ばっかりは『みの○んた』『○る○る』!
 コイツ等が悪いのは明白明白ゥゥゥ!!
 オレが正義になるのは当然の結果よ!」
「フフフ…」
「く、くそ!そう思っていてもやはり貴様の笑み!
 まるで氷の穴に頭を突っ込んでいる様な冷笑!
 なぜか不安になりやがるぞ!」
「なぜ?なぜですって?兄さんはまた自分の心に嘘をついてらっしゃるのね!」
「………フククククク、そうかそうか!
 今回ばっかりはお前もお手上げと言う訳だ!
 そうだろう!?難癖つけて、それを無理やり認めさせるつもり!
 悪い部分が無い事なんて万物早々無いのだからなァァッ!
 お前の指摘で不安材料が増幅されるのを………」

「きィィィィィィィさまがァァァァァ――――――――――!!!!!」

「!!!!!」

ビクゥゥゥゥゥッ!

突如の妹の咆哮!………何時もとは違う!
冷たさではない!それは魔裏と言う名の地の………下!もっと下!
マグマという名の血流を流れる『熱さ』から来る咆哮!

「そのよおおおおおおおおおなああああああああ………知った口を!
 きいいいいけるとおおおおもったあああああああああ!!!!」

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ピザ家二階、香ばしい茶の匂いが広がる居間。
着物で新聞を広げる父と、昼食の片付けをする母。

「すまん!」

平穏に似つかわしくない父の土下座が、
その風景にポツリと姿を現した。

「え、あなたどうしたんですか急に。
 私は何も困ってませんよ」
「いや………なんだか今、自分が悪く思えた………。
 女性に対しての自分を、死んでも謝らなければならないような…」

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「………す………」
「………フフフ………す?」

妹のニヤリ顔!それは!降伏を表した兄への軽蔑でも有り、支配の喜び!
そしてその疑問文は既知している事への超ド急のサディスティック態度!

「すいま…せん…」
「分かればヨロシイ!」
「………」

ピザという名の兄はここで完全に死ぬ。
彼の心の中の権威やらなんやらは………今全て死に絶えた!


「話を戻しましょう………そうね、兄さんの視点とは別のルートから行ってみましょうか。
 ………『何時から?』」
「え………え?」

兄の疑問文に混じるノイズ!それを妹は見逃さない!

「兄さん!そんな『解らないよ僕』みたいな白々しい態度は辞めたらどうかしら!
 『何時から』と聞いているのよ!」
「………う、ううううううぼおおおああああああああああ!!!!
 うるさい黙れ黙れ黙れェェェ――――――!!」
「そのヘッドフォンを外しなさい!炎の転校生なんて見てるんじゃないの!
 真実を聞き入れなさい!」
「違う!これは…!そう、これはこの二万円のヘッドフォンを自慢したいだけなんだ!
 オレがすげー機械を持ってるのを………」
「そのヘッドフォン買ってから一年たってますわよ兄さん?」
「うっ………!」

魔裏が自身の氷を打ち砕き、周囲に浴びせ、心を伝える様な!
そんな貫禄を持った物腰で細い指先がピザのヘッドフォンを外す!

「くそ!駄目だ!オレの頭の中でも聞こえる!聞こえてしまう!聞きたくない!いや、いっそ聞かせてくれ!
 もうオレを聞かせ殺してくれ!駄目だ!もう耐えられない!駄目だ!駄目だーッ!!」
「………兄さんは『何時からこの作品を書いてない』の………?
 ………それは現実生活のせいなんかにして逃げれない理由………飽きてしまって………
 自分の筆力の周囲とのレベル差に嘆いてしまって………嫉妬して………
 ………そしていっそ捨ててしまおうと思った………こんな面倒くさいなら要らないと」
「うあああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!」

兄の体がベッドの上で激しく波打つ!
二次元の絶頂時にも無かったその誰にでも解る命を燃やすかの様な運動量!

「人から賞賛が欲しいのと、自分が面白い作品を書きたいのと。
 両方あるのに兄さんは前者を出すのが嫌いで、
 でも実際に賞賛を得られないが為にその欲求は増幅していった。
 ………結局、また兄さんは自分の理想が叶う頭の中にこもって、
 実を伴わない理を並べ立てて、自分勝手な地位を築いていた」
「…………………っあ………っつあ………」
「テレビやパソコンで流れる知識をあたかも自分のものの様に並べ立て、
 かじった哲学や心理学から自分の都合の良いモノだけを選んで―――………」

ピザは………この妹の言葉が聞こえる事は無かった。
青い青い空間を、ただ漂っている。
その綺麗に見える流れ………しかしその体はその流れに冷酷なまでに冷やされていた。
良く見ると、その青い流れは、体の内側から噴出していた。




永遠に流れる様に思われたそこに、一筋で光の線。





「兄さん、ごめんね………でも嘘をついて生きる兄さんより、
 私はこんな兄さんを胸に抱きたかったのよ………」

布団の上でグッタリとした兄と、それを抱える妹。
その時、ピクリと兄の指先が動く。

「おおおおおおおおおおおっぱあああああああああああああい!」
「きゃ!」
「おっぱいだよ!そう、おっぱいだ!このピンク色の乳首!」
「な、何を!」
「オレは………オレは吹っ切れてやるね!この欲望を全部受け入れる!
 その方が外に出た時に気持ち良いもんねー!」
「おっぱいを揉むな!………いや、それよりも!
 何を開き直っているんですか!そんなの…」

ビシィッ

ピザの目が真っ赤に燃える!
濁った炎………しかしその芯の青いガス炎は、
高純粋なエネルギーをさんさんと放っていた!

「ふふふ!魔裏よ!オレは嘘の世界で生きるぞ!
 まだま生きながらえる!粋も甘いも!苦しみも不味さも!
 あがいてあがいてあがきまくって!
 そして最後の死ぬ時にまで答えを見つけてやる!絶対にな!絶対だ!」
「フフフ………兄さん!兄さん!私たちはまだまだ生きれるのね!
 そうよ!答えは最後の最後に見つければ良い!そうすれば良いのよ!」
「「アーハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!」」



妄想島○大先生
『人生の答えが見つからないだって?
 人生の答えはこうなんですだって?
 自惚れるな!お前たちのゴールは死ぬ時だ!
 死ぬ間際に消えていく自分に答えを叫び聞かせてやれ!
 その時までに答えを練りに練っておくんだ!』

       

表紙

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Neetsha