Neetel Inside 文芸新都
表紙

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2011/05/25

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 車が黄色い煙を吐き出し道路を行き交い、太陽の光が玉子色の色彩を地面に塗りたくっていた。ガードレールを挟んだ向こう側の歩道に僕を見つけた。あてもなく歩いていたが、一歩を出す度にどんどん体が重くなってくる感覚に襲われた。同時に気分も悪くなり、まるで一瞬にして年を取ってしまったかのようで、立つこともままならなくなり白いタイルの上に崩れ落ちてしまった。

 気付けばぎゅうぎゅうに人が詰まった狭い屋内プールの中の、その一人になっていた。プールに浸かった人々の中にはよく知った顔もいたのだが、触れ合う肌のぬめりに強く嫌悪感を抱いてしまい、名前まで思い出すことはできなかった。とっととおさらばしたかったので、実際にそうすることにした。
 プールのある部屋から出ると、かなり長い渡り廊下があり、横の部屋数もそれに応じて少ないことはなかった。ここは大きな旅館みたいなところだろうかと、階段を下りながら思った。四回階段を下りて、外の庭に出た。植えられた植物の葉っぱは刺さりそうなほど鋭く、気をつけなきゃいけないなと思った。今しがた出てきた大きな建物の離れに辿り着くと、そこに何があるのか気になった。扉を開けると、浴室の臭いがした。
 不意に後ろから声がかかった。
「お前、何しとん?」
 その声には覚えがあり、振り向いて確かめるとやはり大介君(仮名)だった。とくにここに来た理由などないし、かといってそれを直接言うと怪しまれると思ったのでここは無難にやり過ごそうと試みた。
「風呂掃除」
 僕がそう言うと、大介君は納得したようにその場を去った。とりあえず中に入って言った通り掃除でもしようかなと思ったけど、また意識がぼんやりとしてきて、今度は桃色のタイルの上に倒れてしまった。

 布団のぬくもりを感じて、目を覚ますと時計は昼の三時を指していた。それは時間を無為にした自分を責める材料であり、僕に自己嫌悪を催させるのに十分だった。さらに誰かの声が聞こえてきて、どうやら僕の家の飼い犬が死んでしまったという知らせのようで、僕は底のない悲しみに打ちひしがれてしまい、今日は布団から一歩も外へ出まいという決意に拍車をかけた。顔を天井から左に向けると、デフォルメされたアーノルド・シュワルツェネッガーの石像と目があった。反対側を向くと、展示された原始人の化石と見学者が二人いた。整合性の全く取れていないこの世界に危機を感じ、布団を頭から被って何も見ないようにした。

 しばらく眠っていると、外界の変化を感じ、布団から出ると寝室は大広間へと変貌を遂げていた。襖を開けると、さっきの旅館の廊下に出た。歩き回って二階の廊下に到着すると、こちら側の端に人が座っていた。その人は僕を見つけると言った。
「これから認定試験を始める!」
 何を認定するのかは分からないが、その試験官は廊下の向こう側を指差しているので、どうやらそこまで到達すれば合格らしい。しかし廊下の隙間から一定の間隔で二十センチほどの銀色の針が出たり引っ込んだりしているので慎重に進まなければならなかった。危険そうな場所はちょこっと針の先端が覗いていたのでなんとか回避できた。向こう側へ着いたら、きっと忍者になれるだろうなと思った。
 端まであと五メートルというところで試験官が天井から銀色の粉を振り撒いて、針の出そうな場所を分からなくしたせいで最後は半ばヤケクソで駆け抜ける羽目になった(途中足が針の横っ腹に当たって心臓に悪かった)が、見事端まで辿り着いた。廊下の端の部屋に入るとそこは厨房で、気付いたら僕は全裸になっていた。奥からナッツ君(仮名)が近付いて来て、ここは立ち入り禁止だと言った。僕はそれを聴いて、局部を隠すタオルだけを借りて素直にこの場を立ち去ることにした。厨房内の階段を下りて一階の廊下を歩いていると女の子が二人縁に座っていたので、恥ずかしい思いをしてそこを通り過ぎなければならなかった。

 競技用のスタジアムの中、観客席の後ろ側で柱にもたれかかっている僕がいた。隣には愛用しているベースギターが立てかけてあり、弾かずにはいられない気分だったので手にとって弾いた。スタジアムの中心に向けて熱気を帯びた歓声がぶつかり弾け飛んだが、僕とその目の前で遊ぶ二人の子供たちはそんなもの気にしていないようだった。無視し続けていると、若髪君(仮名)の怒声が飛んできた。
「何しとんじゃお前、ベンチに行かんかい!」
 若髪君は怒らすと怖いから、仕方なく言われたとおりにベンチを探そうと歩き回ったが、それらしいものがないので途方に暮れた。やるせない気持ちだけが残ったまま、意識を手放した。

 夢の中から現実へと弾き出されて、時計を見るとまだ朝の九時半だったので少し安心した。犬もきゃうんと元気そうに吠えているので嬉しかった。
 

       

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