Neetel Inside ニートノベル
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イフの世界

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 昨日の隣のクラスの響子ちゃんに告白したときの光景が未だに頭に残っている。どうしても面と向かって告白できなかった俺は、メールで思いを伝えたのだ。
 結果は惨敗。
 そもそも、無謀だったのである。
 響子ちゃんには一つ年上の彼氏がいたし、俺はそれを知りながらも告白をした。数少ない友人からは非常識だと非難されたのだが、好きだというこの甘く切ない気持ちは伝えられずにはいられなかったのである。
 俺は昔から自分の気持ち、意見を人に伝えるのが下手だった。コミュニケーション能力が著しく乏しいのだ。
 そんな俺は、口で伝えられないことは文章で伝えたり、響子ちゃんに告白したのと同じように、メールで伝えたりしていた。
 どうしてこんなに人との付き合い方が下手なのだろう。
 もし、俺に人生をやり直すことができれば……そんな夢みたいなことを常日頃、頭の片隅にあったりもする。

 おもむろに立ち上がる。
 周りを見渡す。
 しかし、見覚えのない景色がそこにある。
 天井はあるのだろうか。ゆっくりと目線を上に持っていくと、そこには何もなかった。
 ただ闇に包まれていただけであった。
 いや、良く見るとここ一帯すべて闇に覆われているではないか。
「そこにはあなたの心が映し出されています」
 どこからともなく、声が聞こえてきた。聞こえてきた、と言うよりは直接頭に流れ込んできた、と言う方が適切なのであろうか。
「うーん、あなたは頭で物事を考えすぎですねぇ。いやぁ、それもあなた個性と言うか、キャラクターと言うか」
 なぞの声の主は、ぶつぶつと何かを語り始めた。一体この主は誰なのであろう。そして、この主が言っていた「頭で物事を考えすぎ」という発言。確かに俺は物事を深く考えすぎてしまうところがある。
 しかし、なぜそれがわかったのだろうか。それともテキトーなことを言っただけなのだろうか。
「いえいえ、ちゃんとわかっていますよ。あなたが誰なのか。ここはどこなのか。そして、なぜここにいるのか。ちゃんとわかっています」
 なぜ知っているのだろう。……それよりも先ずはここがどこか、それを知るほうが先決だろう。早く家に帰りたい。パソコンいじって、ゲームして、それで、寝て。いつもの生活に戻りたい。だから、ここはどこなのか知る必要がある。
「早く普段通りの生活に戻りたい、ですか。あの平凡な生活に。ですが……あなたは選択できます」
「選択……って、なんだ」
 とっさに言葉が出た。その選択というものは何なのだろうか。選択ができる、と言うことはそこには選択できる「もの」があるはずだ。しかし、さっき見渡した限りその「もの」はない。では一体何を選択するというのだろうか。
「考えますねぇ。では、そろそろ正解を教えてあげましょう。あなたは人生を選択できます。ここはイフの世界。そして私はこのイフの世界の神様なんです」
 イフの世界。
 初めて聞く単語だ。何なのだろうか。人生の選択、と言うのにも疑問が残る。例えば、だ。今俺がいる場所が本当にイフの世界だとしよう。そしてそこで俺は人生を選択できる、と。だが俺の人生って言うのは、そのイフの世界にいること自体が俺の人生の一部なのではないのか。
「そうですねぇ、簡単に説明しましょう。英単語のIfって知ってますか?もし~なら、と言う意味の単語を。このイフの世界と言うのはつまりそういうことなのですよ」
 人生を選択できる。そして「If」という単語の意味。もし俺が○○なら、という仮の世界でも作りそれを選択できるとでも言うのだろうか。その世界で新しい人生を送ることができる、と。
「正解です!いやぁ、話を理解するのが早いですねぇ。嬉しい限りです。はい。では早速、あなたにはその世界を選択してもらいましょう。あなたには5つのイフを差し上げます。選択する方法はいたって簡単。あなたが世界を望めばいいだけです。では、またお会いしましょう」
 その言葉を最後にあの神はいなくなった。
 これからどうすればいいのだろう。いつもの生活に戻ろう……いや、望めば俺の好きな世界が作れると言っていたな。そんな夢見たいな話、聞いたことない。だが、試してみたい気持ちもある。たとえこの世界が夢の中だとしてもやってみて損はないだろうから。
「ならば」

 俺の望む世界は……!

       

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