早く早く、負け犬の裏庭で
追悼のための短歌習作
詩人は銀色の夜に死ぬのだろうか、
彼が死んで世界にひとつ
真空の穴が増えて。
血腥い錆び色の夜
私は温泉の前で鹿たちに八重歯を見せて踊り
生き残りを自慢する。
*
見たことも会ったこともない死んだ人の夜を思う青い青い夜
つつましい正義のかたちを知る人のすみれの姿をしている剣
廃線の枕木にうまく潜んでた僕らの夜がこれから光る
両性具有のやさしさもった手が撫でてくる十月の夜の孤独
銀色の靴下はいてあなたの歌よんで世界のはじっこ見下ろし
躁鬱統失拒食、そう 私はあらゆるものになれた人だった
喧騒のさみだれ世界今日はもう音を殺してうたを探すの
*
もうちょっと世界を呪っていたいので書いては消した光のうたを。