私とお姉さまの日常
人はそれをデートと呼びます?
【11 映画館で①】
「――へんしん! カラーペンシル・レッド!」
「――へんしん! カラーペンシル・イエロー!」
「――へんしん! カラーペンシル・ブルー!」
「――へんしん! カラーペンシル・ブラック!」
「――へんしん! カラーペンシル・ピンク!」
グリーン!マゼンタ!シアン!ゴールド!シルバー!ブラウン!
エトセトラ!エトセトラ!!エトセトラ!!!
『メイクアップ・フィニッシュ!
美少女戦隊! カラーペンシル48っ!!
厳しい格差社会を生き抜く乙女たち、ここに在りっ!!
命は短し、清く正しく稼げよ乙女ッ!!』
『みんなっ、力を合わせてっ! せーの、総攻撃ぃ~っ!!』
ドカッ、バキッ、ガス、ボガッ、ダララ、デュラララ。
ひゅんひゅん、きゅいーん、ぴかっ、どぉーん、ががっ、がが!
びびぃー、ゴォーカキィーンバリィンドガシャァンッ!!
【12 映画館で②】
「お姉さま」
「どうしたの、百合子」
「わたし、この映画に飽きてきました」
「可愛い女の子がたくさん出るのはいいけど、それだけよね」
「あと、露骨にぱんつが見えすぎるのも、どうかと思います」
「私も少し、自重した方がいいのかしら……」
「自覚あったんですね」
「えぇ、これからは、不用意にパンツの色を聞くのはやめる。
だって百合子は、何色のパンツを履いたって百合子だものッ!!」
「お姉さま、もう出ましょう」
「えっ? でもまだセクハラしてない――」
「ごきげんよう」
「ま、まって! おいてかないでぇ!」
【13 街角で】
「時間が余ってしまいましたね」
「百合子、どこか行きたいところはなくって?」
「近くの書店に寄ってもいいですか?」
「わかったわ。えっちな本を買うのね、もぉ、百合子ったら」
「……参考書を買いにいくんですよ」
「そうよね、本番に行く前に、まずは知識を蓄えておかないとね」
「はい。再来週は期末試験ですから」
「そうよね。私たちも姉妹の誓いを結んでずいぶん経つし、
再来週辺りがいいわよね。わたし、産んでもよくってよ。百合子」
――スタ、スタスタスタ。
「……あ、あれ? 百合子、ちょっ、歩くの早いわよ!
わたしブーツだから、もうちょっとゆっく―――!」
――スタスタスタスタスタ。
「ごめん! 調子に乗った! お姉ちゃん調子に乗りましたわぁッ!
百合子おぉ! 一人にしないでぇーーーーッッ!!」
【14 書店で】
――ぐすっ、ぐすっ。
「お姉さま、いい加減もう、泣かないでください」
「らって、らって……。うぅ、捨てられたかと、思った」
「捨てようかと思いましたよ。ところで、お姉さま」
「ぐすっ、らに?」
「数学は、得意な方ですか?」
「ニガテな科目なんて、なくってよ、ぐすっ」
「じゃあ、数Aの参考書で良さそうなの知りません?
私、昔から、数学と理科とは相性悪いんですよね」
「うん。百合子はそういう顔してるわね」
「…………」
――ぎゅっ、ぎゅっ。
「お姉さま。頬を伸ばす実験は得意ですよ、私」
「え、えっと! その出版社のとかっ、よくってよっ!」
「じゃあコレを買います。――お姉さま」
「なに?」
「今度、時間があった時でいいので、数学を教えてください」
「……ッ!」
――ぎゅっ、ぎゅっ。
【15 ゲーセンで①】
「あら? あの建物は何かしら」
「ゲーセンのことですか?」
「ゲーセン?」
「ゲームセンターの略称です。私もほとんど入ったことないですが、 いろいろ、面白そうなゲームが置いてましたよ」
「目隠し鬼ごっことか。帯取りで『あーれー』とかするのねうふふ」
「入ればわかります」
「えっ? あっ、待って! 百合子待って!」
―――てくてくてく。
「あら、結構面白そうなところね。ところで、これはなに?」
「UFOキャッチャーです」
「なるほど。察するにお金を入れて、上のクレーンを操作して、
下の景品を取るわけね?」
「その通りです。ツッコミがいらないと楽です。お姉さま」
「ふふ。クレーンの形状が、パンツにすごく似ていますものねッ!」
「…………」
「…………」
【16 ゲーセンで②】
「ゆ、百合子っ、どれか欲しいものはあるかしらっ?!
さっきのお詫びに、一つプレゼントしますわっ」
「では、中央でぱんつを被っている【変態おやじぱんだ】を」
「本当にっ!? 私もアレが欲しいと思っていましたのッ!!」
「はい。ストレスが溜まったら、殴ります」
「え」
――にこにこ。
「お姉さまの、お美しいお顔を殴るのがしのびないので、
変わりにアレを、お姉さまだと思って、殴ります。全力で」
――にこにこ。
「百合子……?」
「お姉さまには勝てませんから」
――にっこり。
「百合子、恐ろしい子ッ!!」