Neetel Inside 文芸新都
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本当は怖いドラゴンクエスト
キアリク

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 ある少年の家で大規模な掃除が行われた。少年の担当は離れにある倉庫だった。
 真っ暗闇の中で一人掃除をしていた少年は、目の前に大柄の男がいるのを見て叫び声を上げた。
 しかしそれは男ではなかった。男の石像であった。
 何者にも負けぬ真っ直ぐな瞳、手に持たれた剣、そこに刻まれたロトのマーク。
 それはどこから見ても伝説の勇者の石像だった。

 過去、この世界には大規模な戦いがあったと言う。
 それが伝説の勇者と、魔王軍との戦いだ。
 もう何千年と前の話なので、今は魔王も勇者も死んでしまっているという。
 しかし少年は学校の授業で聞いたことがあった。
 勇者は死んだのではなく魔王との戦いで石にされてしまったのだと。

 これがもし伝説の勇者だとしたら……。
 少年はどうにかして勇者の石化を治せないだろうかと考えた。呪術の書物を調べ上げる中で、古い時代に使われていた呪文がある事を少年は知った。しかし石化を治す呪文はどこにもなかった。
 しかし更に調べると呪文の効力を上げる魔方陣を少年は見つけた。
 この呪文と魔方陣を組み合わせたらもしかしたら……。
 少年はいても立ってもいられなくなり、石像を囲う形で魔方陣を書き上げ、呪文を唱えた。

「キアリク!」

 すると魔方陣が光り、勇者を縛っていた呪いが少しずつ解けていった。
 実に数千年ぶりに目を開けた勇者が見たのは恐ろしい姿をした魔物の子供だった。

       

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