Neetel Inside 文芸新都
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MTGについて少し話そうと思う
voL.Ex「ムラサのMTGプレイヤーズリポート その1」

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 これは神河物語以来およそ8年ぶりにMTGに復帰した筆者の戦績を刻々と記していくプレイヤーズリポートである。現在《孤独の都(VI)》に住む筆者のまわりには残念ながらMTGプレイヤーがひとりもおらず基本的にソロプレイとなるため、せめてここで読者諸賢に報告することをおゆるしいただきたい。その性質上かなり私的な内容となりうるためブログやツイッターなどで発信することも検討したのだが、わが愛すべきデュエリストジャパンにもさまざまな大会のリポートが掲載されていたので「 voL.Extra」として本作品に載せることにした。不特定多数のかたにむけて公開するからには読みものとしてたのしんでもらえるよう鋭意努力したい。
 前説はこれくらいにしておいて本題にはいろう。MTGを引退した人の8割がわずらうという「マジックに復帰したい病」を例にもれず発症した筆者はさっそく2ちゃんやMTG Wikiなどで情報収集をおこなった。とりあえず最新エキスパンションのトーナメントパックを箱買いして土地をあつめてしまおうと考えていた筆者はトーナメントパックが現在では廃止されていて構築済みデッキからはじめるのが主流となっていることを知った。そして最近は構築済みデッキのなかでも上位版といえる「イベントデッキ」なるものが存在し、さらに最新エキスパンションであるアヴァシンの帰還で黒単のイベントデッキが登場したことを最新セット雑談スレできいた筆者は何年ぶりかにカードショップへと出向いて迷わずそれを購入した。
 無事にイニストラードから帰還した筆者はPCをつけるのもわすれて「死者の侵略」と題された箱を開封してみた。内容はメインデッキ60枚にサイドボード15枚、初心者向けの解説書にデッキの使いかたを記したガイド、さらに20面ダイスまで付属されていてまさにMTGをはじめるのにふさわしいものとなっていた。デッキリストはあらかじめネット上で確認していたのでパックをあけたときのようなワクワク感はなかったが、ひさびさに新品の紙の感触を指先であじわいながらいっしょに買ってきたスリーブに1枚ずつカードをいれていった。
 ひととおり作業を終えた筆者は解説書を手にとってみるがとくに大幅なルール変更はなく(開始ライフが2000点になっていたり、MLBにあわせてP/Tの表示がT/Pに変更されているくらいは予想していたのだが)、ざっと目をとおすと筆者はテレビ画面ほどもあるそれを何度か折りかえして巨大なコンコルドをつくりあげ、希望とともにスレイベンにむかって飛ばした。それからデッキガイドを読んでみるが「デッキの動きはからだでおぼえろ」の信条を持つ筆者にはやはり必要のないもので、せめてもとガイドをていねいに折って鶴にかえるとやがてその羽を広げてアヴァシンのもとへ力強く羽ばたいていった。
 デッキケースにもなるパッケージにデッキとサイコロをしまいこみながら筆者は背に書かれた一文に気づいた。
「イベントデッキを手に入れて、最寄りのフライデー・ナイト・マジックやゲームデーでさっそく試してみよう!」
 なるほど、たしかに「すぐにフライデー・ナイト・マジックなどのイベントに参加できるようにスタンダードの形式に則って構築されていて、デッキパワーもイベントで戦えるように調整されている」とMTG Wikiにもある。調べてみるとフライデー・ナイト・マジック(以下FNM)はさまざまなショップで毎週のように開催されているので気軽に参加できそうだ。だが筆者はパッケージにえがかれたゾンビをながめながら迷っていた。1度もデッキをまわさずに大会にでるのはやはり不安であったし、新ミラディンのカードもよくわからないのだ。スタンダードに参戦するのはミラディンとファイレクシアのたたかいが終わってからでも遅くはないのではないか、と第一次世界大戦時のヴィットーリオ・エマヌエーレ3世のように筆者はなやんだ。
 そこで目をつけたのが基本セット2013のプレリリース・トーナメントである。まだ発売されていないパックを使ったシールド戦なら竜宮城からもどってきた筆者でもなんとかやれるはずだ。すぐさまプレリリース・トーナメントが開催されるショップを調べて電話で参加予約をすると筆者は基本セット2013のスポイラーや週刊少年ワロスで連載中の「やる夫が一人でMTGのプレリに行くようです」を読んで予習しながら当日までをすごした。
 いよいよその日がやってくると筆者は参加費と筆記用具をにぎりしめて東京へと旅立った。もっと近場でもプレリリース・トーナメントは開催されていたのだが、ほかにも用事があったので都内のショップで参加することにした。長旅ののち新宿に到着した筆者は例によって桂花ラーメンで昼食をとった。前日は文字どおり汗が《沸騰(TE)》してしまう猛暑だったが、その日は気まぐれな雨とビルのすきま風のおかげでそれなりに涼しい陽気であった。新宿をあとにした筆者は両国や御徒町などに寄り道してから秋葉原にやってきた。駅前は以前にくらべるとだいぶ様変わりしていて、小綺麗な商業ビルやおしゃれなカップルであふれていた(筆者が前におとずれたときはヤミ市に組み立てラジオがならんでいたものである)。あいにく天気にはめぐまれなかったが、マナにはめぐまれますようにと祈りながら筆者は呼びこみのメイドさんをあしらいつつショップにむかった。
《落とし格子(ST)》のようなエレベーターでフロアをあがるとけっして広いとは言えない店内にはすでに受付待ちの列ができており、からだをねじりながら筆者もそこにくわわって順番をまった。前にならぶ人たちは慣れた様子で予約の旨とDCI番号を告げてつぎつぎと受付をすましていき、DCI番号を持たない筆者が緊張しながら「あの、DCI番号ないんですけど」と店員さんにおそるおそる言うと「あ、じゃああとで発行しますのでとりあえず予約の名前と参加費をおねがいしまーす」となんなく受けつけてくれた。そして基本セット2013のブースターパックを6つと達成すべき事柄の記されたカードを受けとると筆者はデュエルスペースへと移動した。すると常連らしきプレイヤーたちが《真夏のお祭り騒ぎ(US)》のようなテンションで越乃寒梅の一升瓶をふりまわしながら「おい新入り、いいか、よくきけ、プレリはな、遊びじゃねえんだ、勝負ってのはな、いつだって真剣そのものだ、わかったか、え?」と筆者の鼻先で言いながら酒くさい息をあびせてきた。「まったくそのとおりです、先輩」と筆者もふるえる声でかえしながらあいている席につくと彼らの尋常ならざるプレッシャーに耐えながらベートスンの鐘楼が鳴りひびくことを信じて神に祈るロンドン市民のように筆者は開始の合図をまちわびた。
「ではM13プレリリース・トーナメントをはじめようと思いまーす!」と店長さんがX=10の《彼方からの雄叫び(7ED)》で火蓋を切るとみなアジをおろす板前のように手ばやくパックをあけはじめ、筆者もカードを傷つけないように慎重になりながらそれにならった。15×6=90枚(土地は貸しだし制)のカードから筆者がつくりあげたデッキは以下のとおりだ。


《苛まれし魂(M13)》……1
《血狩りコウモリ(M13)》……2
《リリアナの影(M13)》……1
《悪名の騎士(M13)》……1
《吸血鬼の夜鷲(M13)》……1
《シミアの死霊(M13)》……1
《エルフの幻想家(M13)》……2
《とげのベイロス(M13)》……1
《原初の狩猟獣(M13)》……1
《歩哨蜘蛛(M13)》……1
《咆哮するプリマドックス(M13)》……1
《原初の狩人、ガラク(M13)》……1
《殺害(M13)》……2
《本質の吸収(M13)》……1
《闇の好意(M13)》……1
《垂直落下(M13)》……1
《捕食(M13)》……1
《生き返り(M13)》……1
《ザスリッドの指輪(M13)》……1
《帆凧(M13)》……1
《進化する未開地(M13)》……1
《沼》……10
《森》……6


 メインを黒にすることはすぐに決まったが、2色目をどうするかでやや迷った。白は《平和の心(M13)》《神聖なる評決(M13)》《武勇の誇示(M13)》と優秀な除去カードがそろっていたがクリーチャーがじゃっかん小粒で、青は《ウスーンのスフィンクス(M13)》以外めぼしいカードがなく除外、赤は《ドラゴンの雛(M13)》《まどろむドラゴン(M13)》にそこそこの火力があったがやはり生物がうすく、緑は大型クリーチャーに《垂直落下(M13)》《捕食(M13)》とわるくなかったが白とは対照的に軽いクリーチャーがいまひとつだった。けっきょく《エルフの幻想家(M13)》で序盤をしのぐ構想で黒緑の2色構成にした。どうだろう、3度のドローフェイズよりシールドが好きなリミテッドマニアならこのレシピから今回の筆者のたたかいぶりがある程度予測できたのではないだろうか。その結果は次回までおまちいただきたい。

       

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