Neetel Inside 文芸新都
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MTGについて少し話そうと思う
voL.15「試練のメルカディア~転職のカテラン組合~」

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 メルカディアン・マスクスが発売されたころの筆者は受験生という立場にあったが、そんなものはそっちのけでパックを買いあさり、推薦で早々に進路を決めた春日くんとともにMTGにはまりつづけた。テンペストにかわる大型エキスパンションとしては少々の物足りなさは否めなかったが、アライアンスで大暴れしたピッチスペルの復活や黒にして組織化されたカテラン組合は円のなかの三角形の面積やインドのカースト制度などよりはるかに魅力的であり、パックからでてくる《革命家チョー=マノ(MM)》《誤った指図(MM)》《暴露(MM)》《操り人形の評決(MM)》《メガセリウム(MM)》《メルカディアの昇降機(MM)》《レイモスの角(MM)》などに筆者と春日くんは一喜一憂した。なかでも《波止場の用心棒(MM)》は多くのプレイヤーにとって最初に手にしたメルカディアン・マスクスのカードとして印象深いはずだ(このころのMTGは書店やコンビニなどでの販売路線の拡張やコマーシャルの投入など新規参入にかなり力をいれていた。とくにコロコロコミックで連載された『デュエルマスターズ』はMTGの入門編として《ラノワールのエルフ(6th)》《灰色熊(6th)》あたりからスタートするかとおもいきやいきなり《天秤(4th)》《Zuran Orb(IA)》のコンボを炸裂させたり、《飛びかかるジャガー(US)》が速攻持ちの超強力クリーチャーに改造されていたり、途中からまったくべつのTCGをやりはじめたりと怒涛の展開をみせ、いまや伝説的な作品となっている)。
 そしてわが黒はといえば《殺し(MM)》《血の復讐(MM)》《強行軍(MM)》《のたうつウンパス(MM)》と優秀な除去カードを手にいれ、すっかりコントロールの色として定着した。《殺し(MM)》《血の復讐(MM)》はどちらかといえばコントロールよりウィニーむきであったし、《鼓舞(MM)》もミニヘイトとして高速クロックに使いでのありそうなカードだったが、テンペスト・ブロックのシャドーやゾンビにかわる軽量クリーチャーが皆無なのは致命的だった(《デルレイッチ(MM)》すら《センギアの従臣(6th)》を相棒に「黒コントロール」に懐柔されてしまった)。
 このようにメルカディアン・マスクス参入後も「黒コントロール」は安定したつよさを発揮したが、《死体のダンス(TE)》をうしなってトリッキーさを欠いた「新・黒コントロール」に筆者はじゃっかんの違和感をおぼえていた。MTGをはじめてからずっと使いつづけてきた黒という色に飽きはじめていたというのもあり、毎日の日課にしていた《沼》での遊泳やスケルトンたちとのお泊まり会もサボるようになった。そんなある日パックから《ラッシュウッドの精霊(MM)》を引いた筆者は「よし、緑単つくるか」とウルザズ・レガシーあたりから芽生えていた緑へのあこがれを実行することにした。筆者は基本的にトリプルシンボル以上のカードによわく(それは数少ない単色デッキのメリットの可視化にほかならないからだ)、《ラッシュウッドの精霊(MM)》はその点においてもうしぶんなしであった。
 だが秀麗でありながら原初のきびしさをあわせもつドミナリアの大自然は対極に位置する機械文明からやってきた筆者を簡単にはうけいれてはくれなかった。しかし貢ぎものとして《ヨーグモスの意志(US)》や《ファイレクシアの抹殺者(UD)》を筆者が差しだすとエルフやワームたちはよろこんで協力してくれた(ついに裏切り者となった筆者を最期にまつのは上空数千メートルからの落下死か、はたまた闇のなかでの悶死か)。
 そして筆者はこのデッキで2回目の大会に挑むことになる。


《無限のワーム(US)》……3
《ウェザーシード・ツリーフォーク(UL)》……2
《ヤヴィマヤの古老(UD)》……4
《茨の精霊(UD)》……1
《リバー・ボア(6th)》……4
《ぶどう棚(MM)》……4
《ラッシュウッドの精霊(MM)》……2
《ラノワールの使者ロフェロス(UD)》……1
《怨恨(UL)》……4
《樫の力(UL)》……3
《ブランチウッドの鎧(US)》……3
《繁茂(6th)》……4
《忍び寄るカビ(6th)》……4
《激励(MM)》……2
《ガイアの揺籃の地(US)》……1
《樹上の村(UL)》……3
《森》……16


 サイドボードはおぼえていないが《ウークタビー・オランウータン(6th)》《ハリケーン(6th)》《木っ端みじん(UD)》あたりだっただろうか。とにかくアーティファクト対策に力をいれていたと記憶している。
 筆者が緑単に惹かれていた理由は黒の〝死〟に対して〝生〟のイメージがつよかったのと(相反するもののえがきだすコントラストはうつくしいものである)、いままで避けてきた大型クリーチャーを緑ならマナ加速を生かしてじゅうぶん実戦で使えると考えていたからだ。じっさいデッキレシピをみてもできるだけはやい段階でマナ基盤をそろえて大型クリーチャーを呼べるような構成となっている。とくに主力である《無限のワーム(US)》のためにエンチャントを多めに積み、さらに破壊力をあげるための強化カードがこれでもかと投入されている。防御の貧弱なデッキならあっというまに蹂躙できるだろう。さあ、準備は万全だ。筆者はひとり戦地である大学に乗りこんでいった。
 しかし結果は3-3とイーブンに終わり、前回の成績をこえることはできなかった。敗因は攻撃手段の少なさであった。とにかくマナにはこまらなかったが、そのマナを生かす手段が乏しかったのだ。場にならんだ大量の土地(《繁茂(6th)》つき)の前で《ブランチウッドの鎧(US)》《樫の力(UL)》《激励(MM)》をかかえたまま筆者は《樹上の村(UL)》でえんえんと相手の小型クリーチャーをブロックしつづけるしかなかった。「いやーマナバードやカプ森セットからブレイズでもとんでくるのかとヒヤヒヤしていましたよ」と対戦相手に言われてしまう始末であり、そうしていればたしかに勝率はあがったかもしれない。
 また大会らしい一面をみることもできた。攻撃してきた相手のクリーチャーを筆者が《リバー・ボア(6th)》でブロックして再生をおこなう場面があった(これは完全に再生を失念していたむこうのミスであった)。その対戦相手は「すいません、ちょっといまのなしで」とプレイを巻きもどそうとしてきたのだが、たまたまそれをみていたジャッジが「巻きもどしはできません。そのままプレイをつづけてください」と注意した。われわれのあいだでは巻きもどしなど日常茶飯事だったので「やっぱ大会はきびしいんだなぁ」と当時の筆者は戦慄したものである(ちなみにFNMは「大会ルールを厳しく執行するよりもむしろ参加者に正しいプレイの仕方を教えることが重要視されています」とかかげられているように基本的に雰囲気はなごやかなであり、とくに初心者であることを言っておけばていねいに教えてくれるプレイヤーもいたりするので安心して参加してみてほしい)。
 筆者にとってメルカディアン・マスクスはこうして試練からはじまったが、《無限のワーム(US)》のように筆者のMTG人生はまだまだつづいていく。つぎはネメシス、そして初のドラフトだ。

       

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