Neetel Inside ニートノベル
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DieBention
二話「湾曲歩道と踏切と私」

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 信号に従い横断歩道を渡り、反対側の歩道へと移る。
 幸いお腹の調子はいい。信号を待ってる間に神の慈悲か、はたまた大いなる宇宙の意思なのかはわかんないけど、とりあえずお腹の痛さは今のところイーブン。
 
 渡った先、つまり反対側の歩道は線路に面している。
 この線路は先ほどまで私が乗っていた電車ではない。
 一つ前の駅までは平行して走っていた電車の線路だ。私の降りる駅と一つ前の駅の間で二股に別れ、このように私の行く道の横に突然現れる。
 うーん、正直地図を描いて皆に知ってもらいたいところだが、絵心というものが絶望的な私の絵を見て喜ぶのはピカソくらいなのでやめておく。

 この歩道は先ほど私が居た歩道と比べると半分以下の幅しかない。線路に面してるからなのか、道路を作る時にやっちゃったのか分からないが、とにかく狭い。
 しかもこの歩道、何気に人通りそして自転車の通りが激しい。
 しかもしかもこの歩道、まっすぐに伸びてるわけじゃない。線路的なあれがあったのか、もしくは元の道が捻くれていたのかよくわからない分からないが、撮り合えず湾曲している。
 しかもしかもしかもこの歩道、先ほど言ったとおり狭いのだが、それをさらに狭くするように線路横からフェンスの穴から抜け出た草が歩道へと伸びてきている。

 歩道を渡り終わった私は、そんな狭くて横を走る電車の騒音が煩くてしかもその人が多い歩道を歩かなければいけない。しかも三百メートルほど。
 とにかく信号の前で立ち止まっていても仕方が無いので歩くことにしたその時、また彼がやってきた。
「あ……っ」と恥ずかしながら彼の突然の訪問に自然に声が漏れ出してしまった。
 腹痛さんお帰り。

 尻の穴に力を入れ、手を思いっきり握り締め、口を硬く閉ざし、前に進む。
 走ることは現金だ。走れば肛門へ入れている力が開放され、そして彼が出てくる。
「やぁ、こんにちわ」
 彼はそんなやさしい存在じゃない。そう、ここで漏らせば今この歩道に居る人々に醜態を晒すことになる。
 やばい。やばい。やばい。やばい。やばい。やべえ。
 
 百メートル。
 クリア。まだ行ける。

 二百メートル。
 クリア。そろそろヤバイ。

 二百五十メートル。
 私は歩みを止めた。

 正直、ここに来るまでの予備弾は全て放った。風が強いので匂いでばれることもないだろうし、音は電車が通るたびにしたのでなんとかなっただろう。
 言葉通り予備を出し尽くしてしまったわけで、しかもお腹の痛さは五段階中四段階と結構やばい。
 いや、やばいってレベルじゃない。歩けない。
 心地よい気温なはずなのに異様に寒いし、肛門にはかつて無いほどの違和感を感じるし、どうするの、どうするの、どーすんだよ!
 そうだよ、何かで見たけど「一生の恥を背負うなら、一瞬の恥」そうだよ、ここでしても一生の恥にはならないはずだよ、いいんだよ私。と理性とは別の私がそう語りかけ、理性な私は、違う。それはトイレを借りた場合の話であって、漏らしてしまったら一生の恥って意味だよ。と私に教えてくれた。
 危ない。悪魔の言葉に踊らされるところだった。
 ここで漏らした場合、家までの残りの距離、私は尻に彼をつけながら白い目で見られながら家に帰らなければいけない。
 危ない、危ない。
 多分、立ち止まっている時の私の顔は全てを怨む阿修羅のような顔になっていただろう。私の横をすれ違っていく人全てが不気味な何かを見てしまった、そんな感じでそそくさと私を避け逃げていく。

 立ち止まったお陰かお腹の痛さも三段階へと下がっていたので、苦しみを伴いながら残りの五十メートルを歩ききった。
 それはもう、それはもう、富士山、いやエベレストをフルダッシュで登りきるような苦しみだった。いやでもまあ、富士山なんて、ましてやエベレストなんて上ったこと無いけど。あれ、思ったんだけどエベレストを登ってる人ってトイレどうするんだろう? どうするんだろう?
 どうしよう?
 なにが?
 あのね、私。
 うん、どうしたの私?
 私の目の前にね、踏み切りさんがやってきたの。
 違うわよ、私。
 何が違うの?
 踏み切りがやってきたんじゃなくて、あなたが踏み切りの元へと着たのよ。
 あ、そっかあ。
 
 湾曲した歩道を三百メートル歩ききった私の目の前にまたもやT字路がやってきた。
 このまま本線を歩いていても永遠に家にはたどり着けないので、本線からはずれ左に曲がると、そこには踏み切りというなのゲートが今の私をあざ笑うかのように凶悪な存在を放ち歩行者、車と電車の交通整理をしいた。
 いつもならなんとも思わない踏み切りも今の私にとっては敵だ。電車も同様に敵だ。と言うか全てが敵だ。
 歩みを止めればいくらばかりか腹が楽になる。が、ここは一気に進みたい。進まないといけない気がした。
 幸いにも踏み切りのゲートは開いている。
 走ろう、だめだ。走れる状態じゃない。早歩きをするんだ。急げ……急げ!
 そんな混乱しつくした脳からの命令に足が反応し、今まで似ないような競歩を見せつけ、そして――。

       

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