Neetel Inside ニートノベル
表紙

パンチラ同好会
五話「ミッシングリンク」

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 久々に教室に入り、自分の席につく。
 予想はしていたけど、机に落書き、置き勉していた教科書やノートが破られたり、落書きされたりとやられ放題だった。
「教室に入る前に言っておくけど、多分、これからの高校生活、いいことなんて一つもないと思うわ。それでも頑張るって言うなら先生はあなたのことを応援します。でも言っておきますが、私も女なのであなたの事は――」
 教室に入る前、担任の先生に呼び出されそう言われた。私も女なのであなたのような人間とはできるだけ関わりたくありませんと。
 先生にそう言われ地味にショックだった。もともと友達も少なく、一人でいることが多かったが、虐められたことはなかった。虐めなんて関係ない。クラスにいるのか、居ないのかよく分からない存在。それがオレだった。でも、今回の騒動でオレの名前は生徒会長並に全校生徒に知れ渡ることとなった。

 朝のホームルームが終わると、オレの周りの席の奴らは一斉に立ち上がり、オレのことを避けた。
 覚悟していたとはいえ、今までこんなことされたことなかったので、やはりショックだった。
 視線を落としぼーっとしていると「おいおい、お前、退学にならなかったのかよ?」とニヤニヤしながらオレのところに三人の男子生徒が近づいてきた。
 見た目からしても、乱暴で過雑な二人。いつもならオレのことなんて相手にしない、そんな奴ら。
「やるじゃん、副生徒会長のパンツ覗くとか。普通できねえよなあ」
「つーか、パンツとか普通のぞなかなくね? 見たい時とか彼女に見せてもらえって話だし」
「いやいや、こんなネクラに彼女いると思う?」
「あ、確かに」
 大声でゲラゲラと人のことをバカにする二人を、無視することしかオレには出来なかった。
「つーか、なに無視してんの? お前のこと言ってるんだけど?」
 視線を上げることもなく、オレは俯いたまま、二人の話を訊いた。
「なに、ボクは関係ない。みたいな空気だしてるんですかー? お前のことなんですけどー?」
 無視を続けるオレ。それが気に食わない二人の内一人がオレの胸ぐらを掴んで言った。
「お前、昼休み屋上こいよ」

 オレは言われた通りに屋上には行かず、トイレに逃げ込み携帯を開いた。
 メールの受信は無し。
 それもそうだ。もともと友達も少ないのに、こんな状況に陥った奴なんかにメールを送って来る奴なんて居ない。
 クラスに居場所がない。もともと、居場所なんてないと思っていたが、そうではなかった。そこには居場所が一応あった。でも、今回の騒動で本当の意味でオレは居場所をなくした。
 つらいな……。そんなことを思いながら、トイレで飯を食っていると、携帯が震えた。電話かと思ったが、メールだった。いつも通り、どっかのサイトのメルマガかと思ったがそうではなかった。

  送信者「ショウゴ」
  タイトル:無題
   久々だな。
   思ったより学校生活が厳しくなって、正直学校をやめようとか考えてるんじゃないか?
   学校辞めるも辞めないも、お前の勝手だが、ただこれだけは言わせてくれ。
   お前をハメた奴をハメる気はないか?

 なに馬鹿なことを言ってんだこいつは。
 確かに、停学中は「復習してやる」だの「一矢報いてやる」だの同じようなことを考えたが、学校に来てみて分かったんだ。もう、辞めるんだ。
 そういう感じのメールをショウゴに送った。
 はは、情けないよな。パンチラのために高校生活を棒に振るなんて。……でも楽しかったな。数少ない楽しみだったパンチラもこれで見納めか。でも、最後に副会長のパンチラ、しかも黒のティーバックを見れたなんて……幸せな高校生活だったじゃないか。
 トイレで食べる飯も、これが最初で最後。そう決意し、弁当をたたみ、便座から立ち上がろうとした時、また携帯が震えた。

  送信者「ショウゴ」
  タイトル;Re2
   パンチラ同好会はどーすんだよ? オレは辞める気ないぜ。
   オレはお前と同じ状況になってないから分からないが、でもな、俺は諦める気なんてない。
   お前が学校辞めるのもいいかもしれない。でも、少し待て。
   お前の状況を買えるのは無理だが、お前をハメた奴にハメ返しすることが出来るかもしれないんだ。
   俺とカワサキを信じてくれ。俺にはお前に返さないと行けない借りがあるんだしな。
   十九時にスカイプを開いておいてくれ。俺とカワサキでお前に言いたいことがある。

 メールだと自分の言いたいことを本当にハキハキ言う奴だ。現実でもこのくらいハキハキしてれば、俺とカワサキくんの負担が減るんだけどなあ。
 まあいい、これだけ自身のあるメールを送ってくるってことは、何か手があるんだろう。乗ってやろうじゃねーか。

 言われたとおりに十九時にスカイプを開き、ショウゴからの連絡を待っていると、ショウゴから通話がかかってきた。
 グールプ通話? ああ、なるほどカワサキくんもいるのか。そう思いながら、通話をクリックした。
「よお、二人共。元気だったか?」
 元気あるようにオレが振る舞い言ったが、二人共反応がない。どうしたんだろうか。
「……タカシ氏」心なしか涙声のカワサキくんが続けた。「この度は、我々のことを黙っていてもらって……ありがとうござい……ます」
「んえ? いやいや、別にいいよ。もともと、あの写真にバッチリ写ってたのオレだけだったし、二人に迷惑かけらんねーよ」
「……だ。でも……感謝して……」
 やべえ、通話だとショウゴがなに言ってるか、よくわかんねえ……。
「なあ、ショウゴ。お前なに言ってるかよく分かんねーからチャットでレスしてくれね?」
 オレがそう言うとショウゴのマイクと思われるところからキーボードを叩く音が聞こえた。
<自業自得だ。でも、俺らをかばってくれて感謝してる。と言ったんだ>
「それもそうだな。まあ、お前の声は小さすぎて聞こえないからとりあえずチャットで会話しないか?」
<いいやすぐ終わる。俺たちはお前に感謝を伝えたかっただけだ>
「そうかい。んじゃー切るぞー」
「待ってください!」カワキくんがいきなり大声を出したせいでスピーカーがハウった。
「ど、どうしたんだ。カワサキくん……」
「い、いきなり大声だしてすいません。後、お礼を言うのが遅くなってすいません」
 そういえば、なんでこんなタイミングでお礼を行ってきたんだ。
「んー別にいいよ。んじゃー切るか」
「待ってください!!」またハウった。カワサキくん元気だなあ。と思ってパソコンの画面を見ていると、ショウゴが何かを打ち始めていた。
<お前に伝えておくことがある。お前をハメたのは写真部だ>
「え? なんで写真部が? 新聞部じゃなくて?」
<違う、写真部だ。しかも、例のパンチラ写真を裏で流してるのも写真部らしい>
 どういうことだ。何故、写真部が? ……どういうことなんだ。意味が分からないぞ。
<どうやら女子生徒にパンチラ写真がバレそうになって、その隠れ蓑を作るためにちょうどいい生徒を探してると、お前と言うか……俺たちを見つけ、それを隠れ蓑にすることにしたって訳だ>
「えっ?」
<だからな、俺達は最初から狙われてて、それで今回たまたまお前が大胆な行動したから、それを写真に収めて……ってことだ、わかったか?>
 なるほど、納得がいった。
 写真部の奴らは、俺たちを影でつけ狙い、三人の中でできるだけ大胆な行動をした奴に目標を絞り、そいつがパンツを覗いた時に写真を撮り、それを校内中にばらまく。それで自分たちパンチラ写真を売りさばいているという噂をウヤムヤにし、更に出来ればその写真を売っていたという罪も俺らに擦り付ける。そんなところか。
 パンチラを覗くものとして、許せない。パンチラと言うのは自分で見るから価値のあるもであって、他人になすりつけ、しかも商売をするなんて……なんたる外道。許せない、絶対にだ。
「タカシ氏? ショウゴ氏のレス読みましたか?」黙っているオレを心配してかカワサキくんが言った。
「ああ、読んだよ。でも一つだけ疑問がある。ショウゴ、お前どっからその情報を手に入れたんだ?」
<んあ、それは言えないな>
「……なんでだ?」
<お前らが嫉妬するのが目に見えてるからだ。……んまぁ、ヒント的にはユカリさんのパンチラ写真売ってた二人なんだが。……で、だ。どうする? タカシ>
 こいつ……イケメンな自分の顔を使って女生徒に頼んで、あの二人をたぶらかせたのか……? クソッ、羨ましい。
「タカシ氏?」
「ああ、分かってる。どーせもう学校にオレの居場所なんてないからな。どーせならこいつらの居場所もなくしてやろうと思う」
<ふっ。準備はできてる。なあ、カワサキ>
「勿論でありますよ! それでもまあ、そのために来週の土曜日は僕に付き合ってもらいますよ?」
「へっ?」ま、まさかカワサキくんってそういう趣味の人なの? ちょっと待って、オレ告白なんてされたことなんてな、ないから分からないよ。ちょっと待って、オレなんでこんなに慌ててるの? え。もしかして、このトキメキ……恋? いやいやいや、待て、待て。洒落にならないぞ。
「タカシ氏、なんか勘違いしてるみたいですから言っておきますが、二人ではお金的な問題があるのでタカシ氏にも金を落としてもらいたいんですよ」
「ちょ、ちょっとまって、どーいうことなの?」
「一矢報うための武器を買いに、アキバ行くんですよ」
「へっ?」
<目には目を、カメラにはカメラをだ>
 なるほどなあ。と思っていたが、それはオレの思考を更に上に行く作戦だった。
 本当にこの二人がオレの仲間でよかったと思う。敵には回したくねえよ、本当に。

       

表紙

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