Neetel Inside 文芸新都
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剣と槍。受け継ぐは大志
おまけ(第一章_四話 先代英傑ver)

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※15さんに触発され、ロアーヌ・シグナス版を書いてみました。


 賊の根城が見えてきた。事前に調べていたとおり、やはり数は多そうである。
「ロアーヌ、やっぱり二百ぐらいは居そうだな」
「あぁ」
 俺は、それだけを言った。元々、分かっていた事である。分かっていて尚、俺とシグナスは真正面からやり合う事を選択した。というより、シグナスが作戦を考えるのが面倒だ、と言ったのだ。
 たった二人で勝てるのか、と村の者は言ったが、何も問題は無さそうだった。と言うより、二人の方が都合が良い。俺はシグナスの呼吸を知っているし、シグナスも俺の呼吸を知っている。つまり、連携できるのだ。他の者が混じると、この連携が取り辛くなる。
「賊の腕がどの程度なのかにもよるが、あまり派手にやらかしたくねぇな」
「頭目だけ討ち取れば、それで済む」
 そんな会話をしていると、入口に居た賊の数人が俺達に気付く素振りを見せた。すぐに、こちらに向かって駆けてくる。
「なんだぁ、てめぇら?」
 賊の一人がそう言った。俺は、あえて目を合わせなかった。シグナスは口元を僅かに緩めている。
「おい、答えろ、間抜けっ」
「お前らを退治しに来た。そう言ったら、どうする?」
 シグナスが言った。すでに、気を放っている。多少なりとも武術の心得がある者なら、これだけでも委縮する気だ。
「あん? 馬鹿だろ、お前。死ぬか?」
 話にならない。俺は、そう思った。
「雑魚に興味はない。お前の親分を出すんだな」
 シグナスがそう言った瞬間、賊が剣を抜いた。頭に来たのだろう。そのまま、斬りかかってくる。そう見えた瞬間、シグナスの槍が賊の身体を宙へと放り投げていた。
「な、なんだ、てめぇっ」
 他の賊達も殺気立ち、武器を構えた。だが、そこから動こうとしない。いや、動けないのだ。俺とシグナスの気で、賊を圧倒している。
「こ、この野郎」
 賊が後退りし始めた。十分に距離を取った所で、背を見せて一斉に逃げ出す。
「これで頭目の所までいけるな、ロアーヌ」
 俺は黙って頷き、シグナスと共に賊の後を追った。根城に入ろうかという所で、わらわらと賊達が出てきた。そのまま、俺とシグナスをぐるりと囲む。
「おいおい、たったの二人じゃねぇか」
「切り刻んで、家畜の餌にしちまえ」
「雑魚に興味はないって言ったんだがな。なぁ、ロアーヌ」
「なんだ、てめぇっ?」
 賊どもはやる気である。さすがに、この人数を相手に、シグナス一人では厳しいだろう。そう思った俺は、ゆっくりと剣を鞘から抜いた。シグナスは、すでに槍を構えている。
「お前ら、ありがたく思えよ。俺とロアーヌ、二人だけで戦う所を見れるのは、滅多にない事だからな」
「何を訳のわからねぇ事を言ってやがるっ」
「ぶっ殺せっ」
 瞬間、賊達が一斉に飛び掛かって来た。俺はシグナスと背中を合わせた。これで、互いに背後を気にせずに戦える。
 賊。一人が左から斬り込んでくる。武器を撥ね上げ、首を飛ばす。さらに真正面。剣で、賊の身体を貫いた。シグナスの背が、離れて戦う、と伝えてきている。
 地面を蹴った。賊の間を縫うように駆け、首を次々に飛ばしていく。シグナスは、手当たり次第に賊の身体を撥ね上げているようだ。そのシグナスの背に、一人の賊が襲いかかろうとしている。
「シグナスっ」
 俺が声を上げると同時に、シグナスが振り向く。間髪入れず、槍でその賊を貫いた。
「ロアーヌ、しゃがめっ」
 シグナスが叫ぶ。さらに、シグナスが賊の槍を奪い取った。それを見定めると同時に、俺は身を屈めた。瞬間、槍。シグナスが投げたのだ。振り返ると、賊の胸をその槍が貫いている。どうやら、背後から襲われそうだったらしい。
 すぐさま態勢を整えて、賊達を手当たり次第に蹴散らしていく。
「なんだ、こいつらぁっ」
「強すぎる、御頭を呼べっ」
 やっと本命を出す気になったか。だが、少々、要らぬ血を流し過ぎた。シグナスはもとより、俺も無傷だが、必要のない殺しだったのだ。
「お、御頭達はすでに逃げてる」
 戻って来た者がそう言った瞬間、残っていた賊達は一斉に逃げ出した。軍で言えば、大潰走である。
「おいおい、頭目達を討ち取らないと、意味がないぞ。また、どっかで集結するに決まってる」
「仕方あるまい」
 言ったが、これは想定外の事だった。やはり、強さに任せるよりも、何らかの策を練った方が良かったのか。
 まぁ、どの道、レンなら上手くやるだろう。
「俺の息子なら、強さだけじゃなく、頭も使ったんだろうが」
 シグナスも、同じ事を思っていたようだ。
「どうやら、俺達の時代は終わったらしい」
 俺がそう言うと、シグナスは声をあげて笑った。
 何故か、俺も笑っていた。いや、笑うしかなかったのだ。


※あくまで、おまけです。本編とは何の関係もありません。

       

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