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僕のカノジョは超能力者
最終話『僕のカノジョは超能力者』

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 みなさん、こんにちは。神道です。

 ついのこの日が来てしまいましたね。
 これから最終話をお送りします。今日でこの作品は終わりです。

 最後は僕のお話しを聞いてください。僕が、月子の超能力を知った日のことです。

     




 最終話「僕のカノジョは超能力者」



     


「うう、終わったぁ……」

 僕は身体を伸ばし、ゴキゴキと鳴らしました。
 週に一度の実験の講義、しかも必修。僕はこういう実技的なのが苦手なんですよね……

「おつかれさま。今日は比較的マシだったね」

 と言ってきたのは月子さん。この講義のパートナーです。

 月子さん。フルネームは伊藤月子さん。黒髪で、童顔で、そして慎ましい胸。とても僕好みの人です。
 いろいろあって名前で呼ぶことになったのですが、別に恋人とかそういう関係じゃありません。

「今日はミスが少なくすんで良かったよ」
「そだね。見てても楽しくなかった」
「むむ……」

 月子さんはいつもあっという間に実験を終わらせ、そして僕の実験をニヤニヤ笑いながら見ています。
 冷やかしたり、茶化したり……失敗したら笑ったり。でも成功したら褒めてくれるので、ちょっと嬉しいです。

「さて、神道くん。しよっか」
「望むところっ」

 さて、さてさてさて。今日はチョキな気分だ。

『じゃんけん、ぽん!』

 僕はチョキ。
 月子さんはグー。

「ああああ……」
「ふふふ、さて、今日もよろしくねー」

 毎週恒例の後片付けジャンケン。負けたほうが実験器具をすべて片づけるという賭けジャンケンです。
 僕はいつもいつも負けてしまいます……ですが、片づけが終わるまで月子さんは待っててくれるので、そうそう責めることもできません。



 帰り道、僕はずっと考えていました。
 月子さんとのジャンケン。僕はほとんど負けます。「顔に出るんだよ、神道くんは」と月子さんは言いますが、それは本当なんでしょうか。
 まず第一に、月子さんとのジャンケンでアイコになったことがありません。これが変です。勝つも負けるもアイコも、どれも三分の一。なのに一度もなったことがない。
 今まで何回ジャンケンをしたでしょうか。お見舞いに来てもらった日、何十回もジャンケンをしましたが、ずっと負けました。アイコにもありません。
 なのに。

「月子さん、ちょっとジャンケンしてみよう」
「あーはいはい。ジャンケンッ」

『ポン』

 僕はチョキ。
 月子さんはパー。

「あー負けた負けたー」
「…………」

 こういった、何も賭けていないときのジャンケンは全部僕が勝ちます。アイコはありません。
 何か、妙な力が働いているような……いないような……いるような……

「神道くん、どうしたの?」

 僕は慌てて月子さんに返事をしました。
 すっかり忘れていましたが、僕たちは今、いっしょに帰っています。講義の教材を買うために本屋に向かう途中、僕はこんな堂々巡り(思考の迷宮に入っていた、というほうがいいかもしれませんね)をしていたわけです。

 皆さんはどう思いますか? 月子さんはやっぱり……ちょっと変な人?

 ……変な人かもしれない。

「変とは失礼なっ」


 がすんっ


「アイタッ」

 月子さんのローキックが僕の膝に当たりました。体重が乗ってないからそこまで痛くなかったけど……
 え、あれ? 僕、今口に出したっけ?

「ねえ、今のって」
「ああー、お腹空いたー。帰り、どっかでご飯食べようよー」
「う、うん」

 誤魔化されたような気がしますが……まあ、いいか。

 そんなわけで本屋に向かおうと、交差点で信号待ちをしていたときです。
 私立の小学生でしょうか。制服を来た小学生が、ワイワイと騒いでいます。

 信号待ちで暇なのはわかりますが……ちょっと危ないですね……うう、見ていてヒヤヒヤします。

「…………っ」

 んん?

「ど………ぅ……」

 聞き流してしまいそうなほどの小さな声。そんな声で、月子さんはつぶやいていました。

『どうしよう』

 僕はそれを聞いてしまいました。きっと僕だけが聞いていたと思います。
 そのつぶやきに疑問を感じました。何に対して、何をどうするのか。唐突すぎてわかりません。

「……月子さん?」
「きょ、今日は、本屋行くのやめよっか? ほら、ほらほら、あっち、あっちに行こうっ」

 月子さんはぐいぐいと僕を押しました。まるで横断歩道から遠ざけるように。



 変だ。



 何かが変だ。でも、僕はいったいどこが変なのかがわかりません。しかし、確実に何かが、変。

「……あっ」

 いよいよ小学生たちの悪ふざけがエスカレートし、道路からはみ出すようになってきました。
 危ない。僕は月子さんの押しのけました。

「だめ、行っちゃ、ダメ」

 僕の腕を握って、前に行かせようとさせません。

「あの子たち危ないから、ちょっと通せんぼして注意するだけだから」
「ダメ、ぜったい、ダメ」

 …………
 たしかに見ず知らずの小学生ですが、それでも危険なことには変わりません。注意するのが普通だと思います。
 正直、月子さんがここまで冷たい人だとは思いませんでした。

「離してよ」
「ダメッ」
「…………っ」

 僕は腕を振って月子さんを払いました。月子さんはバランスを崩しかけ、たたらを踏みました。
 ……ちょっと心が痛いですが、謝るのはこのあとです。まずはあの小学生たちを――


 を。


 おお?


 身体が、動かない。

「行っちゃダメって、言ってるでしょ……」

 月子さんの声。後ろから聞こえてきました。その声は、とても冷たく、悲しそうな声でした。

「ええと、いったい何がどうなってるの?」
「ほんとは、見てないところでしたかったのにな……」

 僕たちの前にいた小学生たち。その子が、突然消え……た!?
 次の瞬間、小学生たちは横断歩道を渡った先、向かいの通りにいました。不思議そうにキョロキョロとしています。

 それを遮るように、大きなトラックが通っていきました。

「あーあ、バカバカ。私のバカ。もっとうまくやれば良かったのに」

 身体が動くようになりました。

「あのさ、今の見なかったことにしてくれない? 私、キミに乱暴なこと、したくないんだ」

 僕は、振り向けませんでした。まだ振り向いちゃいけないと思ったからです。

「そんでさ、もう必要以上に、私とは、関わらないでね。そのほうが、キミのため、だし」
「月子さん……!」
「じゃあね、バイバイ」

 ………………

 …………

 ……

「月子さん!」

 ようやく振り返ることができました。そこには背中を向ける月子さん。立ち去ろうとしていたのか、ちょっと距離が空いてしまっています。

「あのさ、いったい何をしたの?」
「…………」
「教えてくれたって、いいじゃないか」

“私は、超能力者なの”

 心に直接響くように聞こえました。
 これマンガで見たことある……テレパシーってヤツだ。

“そうだよ。テレパシーだよ。
 えとね、私はさっき、見えちゃったの。未来予知、ってやつかな。あの子たちが、トラックに轢かれちゃうシーンが”

 う、うん。

“助けるところ、キミに見られたくなかったから遠ざけようとしたのに……キミは、あの子たちに近づこうとした。そこで未来が変わったの。キミまでいっしょに轢かれる未来に。
 予知が変わることって滅多にないんだよ? キミの行動は、私の予知の上を行ったの”

 ……うん。

“だから私は念力でキミを止めて、助けたってわけ。けっこうギリギリだった。
 今から思えば、もっといい方法があったと思う。時間止めれば楽だったよ……”

 ……何でもアリなの?

“これで終わり。わかったら、これ以上突っ込んで訊かないでね”

「ちょっと気になることあるんだけど、いい?」

 月子さんの言うことなんて知ったこっちゃありません。
 ようやく合点がいったことがありました。

「僕がずっとジャンケンで勝てなかったのって、思考を読んでたの?」
“うん。そうだよ”
「講義中も、読んでた……?」
“……コロッケの作り方なんだけどね、玉子とパン粉が逆だよ……”
「ああー、やっぱり……あと、家の鍵って」
“キミは無用心すぎ。もうちょっとしっかりしなさい”
「ああ、やっぱり忘れてたかー、ごめんね。あと――」

 月子さんが振り返りました。

“どうして?”
 どうしたの?
“どうして私に構うの? 気持ち悪くないの? 変な力持ってるんだよ?”
 別に変じゃないと思うけど……個性的だと思うよ。
“変、変だよ!
 私がその気になれば、キミなんてクチャンクチャンにできちゃうんだから!
 地球だって、一瞬でぺちゃんこにできちゃうんだよ!?
 ほら、怖いでしょ!? ほら、ほら! だからもう私には”
 うん、たしかに怖い。

 でもね月子さん。
 キミはそれほどの力を、あの小さな子供たちを助けるために使える人なんだ。
 だから僕は怖いとは思わないよ。

“だ、黙れ黙れ黙れ!!!!!
 私はもう騙されないんだ! みんなみんな、最初はそうやって……!”

 月子さんが僕に歩み寄ってきます。

“みんなと同じように、キミの記憶も消してあげる。大丈夫、痛くないから”
 え、それすごく困る。やめてよ、そんなの。
“うるさい……もう決めたの”
 …………
 そっか。なら、しかたないね。
 でもさ、月子さん。

 なんでさっきから泣いてるの?

“なっ……”
 バイバイって言った声も震えてた。そのときからずっとテレパシー使ってるし。
 それに振り返ってからずっと見えてるよ。泣いてる顔。
“うう、う”


「なんで、よぅ」


「なんで、キミは、そんなに普通、なんだよぅ……」
「だって僕ら友達じゃないか」
「私、超能力者なんだよ……? 恐くないの……?」
「恐くないよ。月子さんは私利私欲のために使うような人じゃないから」
「私、受験も講義中も超能力使って、問題解いてたんだけど……」
「うーん、それぐらいはセーフじゃない?」
「それにジャンケン、ずっとズルしてたんだけど……」
「それはズルい! 今度からテレパシー禁止!」

 んん? なんか僕の主張がちぐはぐだな……ううむ。

「キミは変な人だね……」

 そう言って、月子さんは泣き笑いを見せてくれました。


     


 これが、僕が超能力を知ったときのことです。僕と月子の中では一番大きなイベントでした。
 その後、僕が告白してお付き合いを始めるというイベントがありますが……こっちは特に述べるようなこともなく、単純にお互いが惹かれ合った結果です。

 そうそう、ジャンケンですが、勝てることも増えてきましたが、やっぱり僕が負けることが多いです。
 やっぱり、顔見てたらわかるんですって。ううむ。



 さて、一段落着きましたね。
 言っていたとおり、これで「僕のカノジョは超能力者」は終わりです。

 いろいろありましたが、みなさん、楽しんでいただけたでしょうか? 僕はすごく楽しかったです。

 それでは、ここまで。ありがとうございました。
















 ……あれ?

     

―――

     


 お、おかしいな? なんで『完結』しないんだろう……?

     

――――――

     


 なんだこれ……?
 変だ、なにかが、変だ……!

     

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