Neetel Inside ニートノベル
表紙

京 出町なすび
9、今日も、てことは別にして

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 ぼくはマヨラーじゃない。マヨ崇拝者だ。
 マヨこそがキリストの血だと思っている。
 スジャータが釈迦へ差し出した汁もマヨだと思っている。
 ピザにマヨ。どこが悪い。美味しいんだからいいじゃない。
 トンカツにタルタルソース何故いけない。美味しいんだからいいじゃない。
 デブ人生16年の僕に今更肥満の説教でも?
 何なんでしょうこの方は。
 きっと保健室の先生は特定保健用食品会社のまわし者に違いない。
 でなけりゃ僕がこんな所に呼び付けられる訳がない。
 僕はこの善人面したメガネ先生を認めない。そうさ断じて。断じて認めません。
「検尿再検査済んでますね」
「はい」
「よろしい。早くて関心。再検査は遅れる人ばかりだ。さすが右近のお友達」
 褒めてご機嫌をとっても無駄です。
 そんなことしても僕はお昼、学食のフライDXカレーを止めません。
 何だ、その手に持っている分厚いファイル。
 もしや肥満患者の哀れな末路写真をクリップしているとでも?
 そしてそれを僕に見せ、痩せろと脅そうとでも?
「寮生活はどう? なれました? 自炊する時は割りと大変だろう」
「あ、まあ。でも食堂とか出前もあるし、稀に母が色々送ってくれますので大事ないです」
 来た。食生活改善要請。来た来た来た。
 ご飯は小ライス、揚げ物は衣を剥し、ドレッシングはノンオイルでとか言うんでしょ。
 屈しない。僕はそんなことやんないぞ。絶対。
「そうか。なら安心。ま、君なら問題ないだろうけど」
 とかな何とか言って僕を油断させておいて……。
 その手には乗らない。
 どうせ運動しろとか言うんでしょ。
「ああそう、今日呼んだのは他でもなく……」
 ジョイングなんか誰がするか――! 有酸素運動反対――!
 僕は運動なんか――。
「右近のことでね」
「は?」
 
 ――――

 保健室の先生は右近の体に痣があると言っていた。
 そりゃもう、いろんな所に。あんな所やこんな所そんな所や●な所。可能性としてはどこにでもできると。
 そう言う保健室の先生は奥二重の目を光らせて嬉しそうにしていた。
 何故痣があるのか、それは彼女の現在までの生活を考えると当然なのだそうだ。
 長年右近の主治医をしてきたらしい先生は、右近がいまだに生理が来ない訳を知っていた。でも僕には教えてくれなかたけど。
 なんでも、守秘義務とからしい。
 どうせそんなの単なる大人のケチ心だ。
 未来のフィアンセがデブだからって、僕を虐めたいだけに違いない。
 ま、でも確かにあれだけ右近が男子体型なら初潮も遅いだろうと思う。
 でもそんなの個人差だろうし……。
 
 ――煩い。また今日も風呂場がうるさい。
 男子の喘ぎよがる声が――。
 寮のご近所さんには僕の声と思われているのかな。
 だったらやだな。まぁいいけど別に。

 そういえば先生はこうも言っていた。
 右近がなすび妖精と入浴した後は特に気を付けて彼女の体を観察しておいて欲しいと。
 あの妖精、一体何なんだ。
 痣を見つけたら教えろって。
 ……。
 ――。
 急に風呂場が静かになった。
 ドキドキ。
 もうすぐ彼女がお風呂から出て来るはずだ。
 もうすぐ。

「う、右近さん、パンツは?」
「ない。今日も忘れた」
 
 ちょ………。             


 つづく

       

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