京 出町なすび
12、僕の未来は別として
僕の体の70%はマヨからできている。
僕の汗はマヨの水分。僕のおしっこもマヨの水分。
毎日コップ一杯分以上のマヨが僕の体を潤す源。
健康を維持して16年、病気ひとつかかったことがありません。
血圧だって正常キープ。だから問題ないんです。
体操服から腹がはみ出る。オッパイでシャツがはち切れそう。
だけどいいでしょ、見逃してよ。誰にも迷惑かけてません。
新陳代謝は標準以上。脂肪細胞豊かに増える。
腰回りベルト地帯は今日も豊満、良い音します。はい、ポポンポン!
股ずれが少々痛い季節がやってきました。そろそろ初夏の気配です。
夕暮れ時、保健室の裏ではヒメギスが鳴いていた。
「右近が女の子を襲っていたと……」
「はい」
保健室の先生は奥二重の目を光らせた。
「かっかっかっかっか―――!」
この笑、何の物まねなんだろう。
僕はこの先生のノリについていけない。
「彼女、特に異常ないよ。正常だ」
――?
「でも先生、女子同士ですよ」
だからって男女ならいいわけじゃないけど。ここは学校だし。
でも環境はさておき、生物学的におかしいでしょ。雌同士のチョメチョメなんて。
女子が女子を襲うってちょっと現実では異常なんじゃ。
「あのね、正しくは右近が男子に襲われた時こそ本当は一大事なんだ」
「な、何なんですそれ」
だったら僕は一生彼女と恋愛とかそういうことできないの?
右近にしたって、もし好きな男子ができたら……。
「君は何か勘違いをしているね」
「勘違い?」
「そうだ」
僕が勘違いをしているだって?
いったい何がどういうことなんだ。
これだから大人ってのは嫌いなんだ。
肥満児をバカにして。
僕だってあと10年もすれば、10年もすればきっと――!
もっとデブってるだろうな……。
ガックリ。
「あのね、折角だから教えてあげよう。右近がなぜ女子を襲って正常か」
「……」
「それは右近が飼ってるあの妖精。あれが雌性を吸い取るからなんだ」
つづく