Neetel Inside 文芸新都
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文芸クリスマス企画~あんち☆くりすます~
初めてのクリスマス・イブ/ロリ童貞

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 女の人の胸が、こんなに柔らかいなんて思わなかった――

 本日は2011年12月24日、クリスマス・イブ。ぼくはいま、生まれて初めてのおっぱいの感触を味わっている。「ママンのは?」なんて無粋なツッコミはよしてくれ。ガキ時分のことなんか覚えてないし、たとえ触った事があったとしても、母親のはカウントしない。もちろん、父親の胸(おえっ……)もだ。何が言いたいかというと、性に目覚めてからのちに出会う、家族以外の適齢女性のおっぱいだけが重要だということだ。

「24日って、空いてますか?」

 ぼくがこう尋ねられたのは、ちょうど2週間前。その質問者こそが、いままさに胸の柔らかさをぼくに堪能されている女性である。年の頃は二十そこそこ、薄いピンク色を基調にした服装や清潔感のあるショートの黒髪に今風の派手さはないが、決して野暮ったいわけではない。奥手なぼくでも怖がらずに近づけるような雰囲気だ。無論マスカラなどのケバい化粧っ気はなく、瞼は一重なのにそれでも大きく見える目は黒目勝ちで、猫の赤ちゃんのようなあどけない表情を作り出している。そんな童顔の彼女は、やや痩せ型で背丈も若干低めだし、幼いと言えなくもないのだが、他の部分とは不釣合いに目立つ胸部を考慮すれば、やはり大人の範疇に入れるのが正しいだろう。ボリュームのあるバストは明らかに成人女性のそれで、服にうっすらと浮き上がるブラジャーの飾り模様を、ぼくは機会ある毎にこっそりと盗み見ていた。けれども、いまは、見るのではなく、触れている。しかし彼女はこの事実に言及するでも反応するでもなく、ただただ、瞬きを忘れたかのような硬直した眼差しでぼくを見つめている。緊張しているのだろうか? 目と鼻の先にまで近づけられた、彼女の顔。揺れる髪先。ほのかな芳香。――ぼくは勃起した。

 だめだ、これはさすがに恥ずかしい。彼女に知られたら引かれてしまう。己の欲望を鎮めなければいけない。別のことを考えよう。そう、たとえば、真面目に彼女との関係について。とは言っても、ぼくはあまり彼女のことを知らない。見かける度に、可愛い子だなあとは思っていた。できることなら付き合いたいと思っていたし、正直に言えば、空想の中で自慰行為を手伝って頂いたこともある。だがしかし、好きだからといってそう簡単に告白できるわけではない。そんな度胸は微塵もない。そそくさと彼女の前を(胸の膨らみを盗み見ながら)通り過ぎるだけで精一杯。でも前に一度、衝立の下から足元が見えたことならある。足先はシンプルなクリーム色のつっかけに礼儀正しく収まっていて、清楚な純白ストッキングが足首からふくらはぎにかけてをキュッと引き締めていた。そこから上は見えなかったけれど、彼女の両脚はきっとあの薄ピンク色のひざ丈スカートの中へと続いていて、さらにその先の隠れた奥底には秘密の……

 いけない。彼女のことを考えると居てもたってもいられなくて、というか実際横になっているわけだが、ともかく別の部分がたち始めてきてしまう。萎えることを考えよう。そう、自分ことがいい。彼女が予定を聞いてきた12月24日には、当然何の用事も入っていなかった。パーティーもなければデートもない。そもそも物心ついてこのかた、女性という生き物とまともに接したことがない。もちろん童貞。それどころか、手を握ったことさえない。言葉を交わしたのも、クラスメイトとの事務的な連絡くらい。そんなんだから、毎年この時期になると、外に出歩くのが憂鬱になる。なにせ、そこいらじゅうでカップルがいちゃいちゃと乳繰り合っているのだ。どれだけ羨ましく思ったかわからない、どれだけ恨みがましく思ったかわからない。長年積もり積もったどす黒い怨念のせいで、リア充どもではなくぼく自身が爆発してしまいそうだった。

 でも、今年はちょっと違う。意外と充実したクリスマス・イブかもしれない。こんなに素敵な女の子と一緒にいられて、さらに、いまから、たとえば一般的に恋人同士がやるとされている「ひざまくらで耳そうじ」よりもすごいことをやろうとしているのだから。ぼくにとっては初体験で緊張するけど、見かけによらずしっかり主導権を握っている彼女ならきっと慣れているだろうし、安心して身を任せていたいと思う。そう言えばプロに筆を下ろしてもらった友人(ネット上の)も教えてくれたっけ。曰く、できるだけリラックスして、力を抜くことが大切だそうな。客がガチガチになってたら、さしもの風俗嬢でもやりづらいのだ、と。勿論ここはそんな場所じゃないけど、ぼくにできるのはそういうことくらいだ。心を落ち着かせるために、わざと呼吸を長めにする。彼女の胸の感触をいったん意識の外に追い出して、そして、なんとなく気まずいので彼女と目を合わせないようにしながら、また深呼吸みたいなことをしたりなんかして、そうこうしているうちに、自然な流れでというか、ちゃっかりと準備は整えてあるのだが、いよいよ、ぬるぬるしている感じもしないではないかもしれない粘膜の敏感な奥のほうへと……

「痛っ!」

「あっ、すみません」

 かすかに、血の臭いがする。と思ったら徐々に臭いはきつくなり、かすかにどころではなくなってきた。いじめっ子に殴られて頬の内側が切れたときのように、鼻の奥に血生臭さが広がってくる。見えないけれど、これはかなりの出血ではないだろうか。もしかして、彼女も経験が少ないとか。ひょっとすると、初めてだったりして……



 やっぱり、スケーリングはベテラン歯科衛生士さんのほうがよかったかなあ。

       

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