そこに乳あるかぎり俺は乳を揉む。お爺様に俺の嫁を見せるため。――が、俺の考えは甘かった。
幼馴染のナオなら揉ませてくれるはずと、確信し、久々に接触を図った結果、どういう流れかしらないが、ナオに揉むべき相手を定めてもらうという、意味不明な状況に陥り……。
んまぁ、そんなのはどうでもいい。今、問題なのは、俺が揉むべき乳を持っている女のことだ。
ナオが指さしたのはクラスの中の女子でもアイドル的な存在として祀られている、タカオカさんと言う女子だ。
ナオとは真逆の腰まで届かんとすロングヘアーが特徴的なだけではなく、それなりに発育したお胸も特徴的な、もう、なんていうんだろう。女の子代表――みたいな娘だ。
で、そんな女の子女の子なタカオカさんと、俺との接点は全く無く、なにより同じクラスと言うだけで知っているのは名前くらいだ。
一体どうしようか悩んでいると、ある日突然、天から舞い降りた天使のようにナイスなアイディアが俺に舞い降りてきた。
そうだ、ストーカーと言うなの観察をすればいいじゃないかと。
知らなければ知ればいい。知るにはその人のストーキングすればいい。ヘタに調べるよりも大胆に、そして陰湿的に、そして俺的に!
◇
ストーカー……いや、観察を初めて、タカオカさんについて分かったことがいくつかあった。
タカオカさんは女の子女の子しているだけではなく、天然という特殊スキル付きだということ。
事あるごとにボケたり、コケたり、見ているこっちが怪我をしてしまいそうになるくらい、ドジっ子天然キャラだった。
可愛い。物陰から覗きみているだけでも恋をしそうなくらい可愛い。やばい。俺様の女にしたいくらいに可愛い。でも、まだ足りない。彼女は何かを隠している。そんな気がする。
◇
それは突然のことだった。
放課後、いつものようにタカオカさんにバレないようにストーキングをしていると、女子トイレから出てきた不良ぽい女子三人に、女子トイレに無理矢理引き摺りこまれてしまったタカオカさん。
女子トイレなどと言う聖地には足を踏み入れられない俺は、女子トイレの前まで行き耳を澄ませ中の音を聞こうすると、中から悲鳴のような、叫び声のような、女性特有の甲高い声が聞こえてきた。
「マジうぜーんだよ、タカオカさんよぉ」
「だよねー! 天然だかなんだか知らないけど、男に色目使いすぎっていうか?」
そんな罵声の中、かすかにだがすすり泣く声も聞こえてくる。タカオカさんだろうか? そんなことを思いながら、話の続きを聞いた。
「正直? お前が男子にどう思われようがアタシ達には関係ないけどさ、でも、うざいんだよ、お前」
「そうそう。この間なんてクラスの中のイケメンくんがあんたのこと可愛いとか言ってたしね?」
「え、もしかしてあんた……あいつの事好きなの?」
「ちげーし! 別にそういうんじゃねーし!」
こいつらも一応女子なんだよな……胸あるんだよな……。と不良女の声を聞きながら妄想する俺。
男なら助けに行くべきなんだろうが、女子トイレ、しかも女子と言っても相手が複数となると話は別だ。普通に怖いし、あいつらを撃退したとしても、そのあとの報復的なあれもあるだろうし。
「ミカンー、水の準備出来たよ?」
「ああ、やっちゃって」
その合図と共に、トイレの中かがバケツいっぱいにした水をこぼしたような音が聞こえてきた。
ギャッハハハッハ! という下品で大きな笑い声がトイレの中に響いた。
「ビシャビシャだねぇ、タカオカさん」
「マジでやばくね? このまま男子便所に閉じ込めてたら、それはそれで面白い展開になるんじゃね?」
「やっちゃう? あーでも、あんなきたねぇ所にはいりたくねえしなぁ」
何やらトイレの中で相談する不良女三人組。
不意打ちをするなら今なんだろうが、まだだ。まだ俺はタカオカさんのすべてを見れていない。でも、ビシャビシャの今なら……ブラが透けて……駄目だ……。さっきタカオカさんブレザー着てたし。
「っていうかアタシ、これから予定あるんだよねー」
「え、また小遣い稼ぎ?」
「そそ。だからコイツにかまってる時間ももう無いし、今日はこんなもんでいいんじゃね?」
「うちらも着いていっていい?」
「んー……まぁいいけど? なに、あんたらこの間やったばっかじゃないの?」
「そうなんだけど、金亡くなっちゃってさ」
その言葉を聞いた主犯格と思われる女子がハァと大きなため息をついて。
「そういうわけだから。タカオカさん? 明日もお楽しみに」
「じゃ、うちらミカンについてくからね? あー、そうだ。今度お小遣い稼ぎのお手伝いさせてあげようか?」
すすり泣くだけでタカオカさんは何も答えなかった。
「じゃぁね!」
やべぇ。アイツらトイレから出てくる。やべぇ。
このままじゃトイレの前にいたのがバレる。ヤバイ。逃げ場は……逃げ場は……あった!
俺はダッシュで女子トイレ横の男子トイレにスライディングするように入っていった。
肩を撫で下ろし、静かに個室の扉を締め、その中に篭る俺。
暫くは移動できないな……と携帯の待受を眺めつつ思う俺。
やっぱりカッコいいのかもしれない、俺。
しばらくすると、隣のトイレで聞こえていたすすり泣きが止まり、何かをぶつけるようなな音が聞こえてきた。
少なくとも、あの三人がいなくなってからタカオカさんはトイレから出ていっていないし、新しく中に入っていった女子も居ないと思う。――とすると……。
「あぁああああああああああ、マジでうぜぇえええええええええええええええええええええええええええええ!」
隣のトイレから聞こえてきた、その聞き覚えのある声は、明らかに俺の知っているタカオカさんの声じゃなかった……が、確かにアレはタカオカさんの声で……え?
ドン、ドン、ドン。
「うぜぇんだよぁああああああああああ、あの三匹の雌豚がああぁあああああああああああ!」
ドンドンドン。
「あぁああああああもうなんなんだつーの! この私がなにしたっつーんだよ!!」
ドンドンドンドンドン。
「男に色目つかって、なにがわりーつんだよ! おめーらは色気しかつかえねーんだろぉおおああぁ? 私は私をつかってんの! 貢がせてんの! クソッマジでうぜえ」
俺の手は震えていた。隣の男子便所の個室にまで鮮明に聞こえてくるということは、少なくとも、この校舎のこの会に居る人間には確実にこの罵声が聞こえてしまっているはずだ。
放課後だからって大胆すぎるよ……タカオカさん……というか女って怖ッ……と思いながら俺は、携帯の録音機能をオンにする。
ドドドドッドドン!
「あいつら……見てろよ……あのイケメン、私が食ってやる……それで」
アヒャヒャヒャヒャ! と聞いたこともない不気味な笑い声が辺りに響きわたる。
これだ……これがあれば……きっと……。タカオカさんの胸を揉める。俺は確信していた。これだと。
しかし、あの天然ドジっ子キャラが……ここまで人格破綻してた人間だったなんて……。大丈夫なのか……これ? と言うか、人生初揉みになる相手が……えぇ……。
考えても無駄だ。今は動くだけだ。いざとなればこの切り札を使って脅せばいいんだよ、俺!
お爺様に嫁を見せるって……もしもタカオカさんが嫁になると考えると……恐ろしや……。