まず最初に感じたのは、全身を真っ直ぐ突き抜けるような重い衝撃だった。
それをとりわけ鋭く感受したのは両の鼓膜で、顔をしかめたのはこのためだ。
いつの間にか視界が変わっている。爆風の衝撃によって右足を踏み出し、体勢を崩していたためだ。
爆風。これが爆風というものか、と、切り離された意識の片割れが冷静に考察した。
自らの肉体でそれを感じる機会など、普通に生活していたのならば一度として無いだろう。
しかしそれは決して実になる体験などではない。現に意識のもう一片、表に出ている側は動揺し、混乱し、恐怖している。
それを他人事のように感じている“冷静なほうの意識”が或る、という感覚が、何とも奇妙だった。
やがて、危機を感じた脳が一時的に分離させていた相反する意識が繋がり、融和していくことで、その不思議な状態は終わりを迎える。
それによって俺は、ここでようやく、自分がしなければならないことは何かを理解し、実行に移した。
とするとやはり、さっきの自分は総合的に考えて冷静ではなかった、もし冷静だったとしても最適ではなかった、ということだろう。
しかし今は最適な思考回路を取り戻している。
その確信に場違いな安堵を感じながら、俺は最小の動作で体勢を元に戻しつつ振り返った。
