作品名:田中さん
作者名:pockets先生
【主要登場人物】
僕
田中さん
紘瀬
神崎君(序だと僕)
【内容】
『霧散』という言葉が大きな鍵となって、物語が進行していく。
『霧散』とは、人間が霧の様に散る事で、それは政府に管理されている。
序章において、霧散した神崎を一人称とした描写があり、それによって霧散した人間の視点を知る事が出来る。
以降は一人称が僕に代わり、霧散を中心に、ストーリーが進む。
【見所】
どこか洒落た言い回し。
地の文であり、会話文であり。文章に良い意味で癖がある。
そして作者の考え方。
娯楽と言うよりも、考える為の小説。
【個人的感想】
村上春樹を思わせる文章だと、筆者は思った。
人によっては、言い回しがクドく感じるかも知れない。
まだ序盤、或いは中盤で、霧散の謎が全て明らかになった訳ではないが、恐らく
『人間は精神と肉体、どちらがその重要性を持っているのか』
という様なテーマを描こうとしているのではないかと思う。
また、冒頭では霧散した神崎が、同じく霧散した紘瀬に対して疑問を持つ。
霧散した紘瀬は、誰にも認知される事が無い、その存在を確かめる事は出来ない。
だが、それならば霧散した自分の存在は何なのだろうかと言う事だ。
これは『他者からの認識によって人間は成り立っている』と言う事を描こうとしているのかも知れない。
言う必要も無いかもしれないが、正直な話、このレビューを書く為に縦読みソフトに入れて読むまでは『雰囲気だけの小説』というレッテルを貼っていた。
まずはその事を、この場にて作者さんにお詫びしたい。それは一重に筆者の無能だった。
この作品は、しっかりと読み込んでみると確かな中身がある。作者さんの思想を文章にする事が出来ている。
この作品のテーマは、考えて答えの出る物でも無い気がする。
だが、この作者さんなりの答えを見届けたいと、じっくりと読み直してそう思った。
今後の展開に期待したい。
蛇足ですが。
この作品を読む時は出来れば縦書き表示で読んだ方が良いかと、人によるかも知れませんが。
雑文、乱筆失礼。
匿名筆者