Neetel Inside 文芸新都
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もっこりクエスト4
第1章 王宮の戦士 ジャイアン

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第1章 王宮の戦士 ジャイアン


1


これは、バトランドという小さな国。
王宮戦士の一人、ジャイアンは、ある日王様に呼び出された。



王の間にはジャイアンの他にも7人の戦士が呼び出されていた。
彼らをを前にして大臣が鼻息を荒げる。

「これより王様がお前らに大事な話をするので心して聞くように」
「サー!イエッサー!」

王様があらわれた。
「皆のもの、楽にしてよいぞ」
その声に戦士たちは敬礼を解き、左足を開いて休めの体勢に入った。
ちょいデブ戦士の靖男は鎧の重さに耐えかねず体育座りの体勢に入ったが
さすがに大臣に起こされた。

王様はため息をぐっとこらえて話し始めた。
「さて、話というのは他でもない、最近子供達が居なくなるという噂は
 お前達も聞いておろう。
 今朝もイムルの村より母親達が涙ながらに訴えてきておる。
 何ゆえ子供が居なくなるのか?何者かがさらっているのか?
 この国の王としてもはや放っておく訳にはいかぬ。
 事の真意を確かめ、このわしに報告せよ!ゆけ!わが戦士たちよっ!」

ジャイアンはそれを聞いて愕然とした。
こ、この俺が子供探しっ!?
スライムを一撃で倒し、リリパットの矢にも当たらぬ、
豪傑とうたわれたこの俺が子供探し・・・。
てっきり、隣のガーデンブルグに攻め込む命令でも
受けると思って来てみれば・・・うう・・・。

愕然とその場を動けぬジャイアンのもとに、一人の女性が駆け寄ってきた。
「戦士様、どうか私の子供を捜してください。
 あの子はまだ生きています!ああでも急がないと手遅れになってしまう、
 そんな気が・・・」
彼女は言いたい事だけ言うとどこかへ去った。

ふと気付くと他の戦士たちは既にその場に居なかった。
一人靖男だけがのろのろと階段を下りていた。
「まあ のんびりやろうやジャイアン。
 と言ってもお前は真面目だからさぼったりできないだろうけどな」
ワハハとほおの肉を揺らし靖男は去って行った。




ジャイアンはあきらめて自分の境遇を受け入れた。
「さすがに王の命に背くわけにもいくまい。
 まあとりあえず、情報集めだな。」

ジャイアンは回廊を警備している兵士に話しかけた。
「ここは バトランドのお城」
「そうですか・・・いや、知ってる!俺は知ってるぞ!」

気を取り直して他の兵士に話を聞く。
「町の外で歩き続けるとやがて日は沈みましょう。」
「そりゃそうだ。常識的に考えて」



だめだ、まともな奴は居ないのか?
図書室に行くと爺さんがフラフラしていた。
「おおジャイアン殿か
 いや何、気になる事があってな。ちょっと調べておるんじゃよ。
 地獄の帝王なるものをジャイアン殿はご存知か?
 名前だけは古い本に出ておったんじゃがそれ以上はどこにも載っていなくてのう・・・」
古い本に名前しか載っていないような事をどうして俺が知っていると言うのだ!
まったくどいつもこいつもこの城にはろくな奴が居やがらねえ・・・。

しかしそこでジャイアンは冷静になって考えてみた。
これはきっと伏線なんだろうな、
きっとラストは地獄の帝王と戦うはめになるんだろうか・・・。
スライムや大ミミズは一撃だが、
正直エアラットなどにはまだまだ苦戦するジャイアンである。
先のことを考えるのは頭が痛くなるのでやめた。



ジャイアンは宝物庫の前に来た。
宝物庫には鍵がかかっていた。
ジャイアンは知っていた。この中の宝箱には命の木の実や鉄兜や750ゴールドがある事を。
「王様も今渡してくれれば随分と楽なのに!
 大体、こういう初期の城の鍵のかかった宝物庫とか、後半覚えてないんだよ!
 思い出して取りに来た頃には防具とか全然使えないっての!!」






     




ジャイアンはむしゃくしゃして城を出て町に向かった。
タルやツボを容赦無く叩き壊しアイテムや小銭を得た。
それで多少気が済んだジャイアンは冷静になった。

「小さな町だぜ…」
城下町には5,6件の建物があるばかりだ。
数人の人影が見える。
PS版より狭くなってるのは気のせいでしょうか?

情報集めは2分で済んだ。
とりあえずイムルの村へ行けばいいようだ。
あと、アレクスって奴が行方不明になっているらしいから
そいつを探したらいいはずだ。

ジャイアンは村を出て北のイムルの村へ向かった。
途中を川が流れており進めないが、
洞窟が向こう岸へ繋がっているようだ。
ジャイアンは洞窟へ入った。

洞窟に入ってすぐ、出口の階段や宝箱が見えた。
うわ・・・マップ小せえ・・・。

洞窟の途中に戦士がいた。
「おお、ジャイアン
 私もこれからイムルの村へ行くところなのだ」
集められた8人の戦士のうちの一人のようだ。
しかしそいつはジャイアンが先へ進んでも同じところをグルグル回っていた。
ジャイアンは気にせず洞窟を出た。


イムルに着いた頃には夜になっていた。。
ツボやタルを割りながら適当な民家へ向かう。
何か夜しか聞けない情報でも無いかと思い中に入ると誰も居なかった。
仕方が無いのでタンスをあさっていた時、その時であった。



背後からの視線を感じたジャイアンはその場を飛び退り、
剣の柄に手を伸ばした。
「誰だ!」
そして思わず叫んだ。
思わずそうしてしまうほどの殺気を感じ取ったのだ。

物陰からその男はあらわれた。
「ほう・・・おぬし只者ではないな」
あらわれたのは一見普通のおやじだった。
しかしよく見ると!・・・やっぱり普通のおやじのようだ。
手には酒瓶が握られていた。
「見たところ戦士のようだが、
 こんな夜更けにひとの家で何をしておるのかな?
 返答次第では・・・」

「待ってくれ、俺はバトランドの戦士ジャイアンだ
 王の命により子供失踪事件の調査をしている
 この家何か手がかりが無いかと調べていたのだが…
 何も無いようだ、それでは失礼する」
ジャイアンは適当にごまかして、とがめられる前に逃げようと思った。
少しずつ入り口に向かって喋りながらそろそろと移動した。
そして、ドアノブに手をかけようとしたとき、ドアが勝手に開いた。

そこにはおばさんが立っていた。この家の人だろう。
おばさんはジャイアンを見るなり叫んだ!
「きゃああー泥棒よ!!」
「ま、待ってくれ!俺は違うんだ!」
「泥棒が ふ た り 居るわッ!」

ふたり・・・二人と言ったのか!?
ジャイアンがおやじの方を振り返ると、
おやじは頭から窓ガラスを破って逃走した。
絶叫するおばさんを振り切ってジャイアンも逃げた。


村はずれの井戸のところまで来て、ようやく一息ついた。
「ちくしょう!あのおやじ!あっちは本物の泥棒だったのか!!」
「失礼な奴だな、わしは泥棒などではないわ」
独り言に返事が返ってきたのでギョッとして声の方向を見ると
さっきのおやじがいた。
「わしは伝説の勇者を探し旅をしている」
「勇者だと!?」
「ああそうだ、魔王目覚めし時勇者もまた目覚めん
 その予言の時が迫っておるのだ
 私は異世界で魔王バラモスとゾーマを倒した勇者のパーティに居たのだ」
「何だって!」
「まあ居ただけで基本何もせず、
 後方で酒を飲み野次を飛ばしていただけだがね」
「・・・・・・」
「今回も適当に楽しむつもりだ
 それではわしは勇者と一緒に魔王をたおしてくるよ
 おまいさんは子供探しがんばってな!
 プッ、子供探してwww戦士なのにwww」

おやじは言いたい放題言うと、千鳥足で夜の闇へと消えていった。
おやじが居なくなってからもジャイアンはそこに一人立ちすくんでいた。

「俺は何でこんなことやってるんだろう・・・
 俺も・・・魔王退治の方がいい・・・」
この時ジャイアンは決意した。
今回の事件を解決したら、王様に許しを得て勇者を探す旅に出ようと。


ジャイアンの目に黄金の輝きが溢れた。
ここからが彼の本当の旅の始まりであった。



     





ジャイアンは夜のうちに村を調べて回った。
そして、村の地下牢で妙な男に会った。
「僕はアレクスっていうんだお
 魔物が襲ってくるお!怖いお!」
どうみてもおっさんなその男はまるで子供のようであった。
どんな恐怖体験がこの男をこのように変えてしまったというのか。

とにかくアレクスを見つけたことを報告しようと
ジャイアンはバトランドに戻った。
戻る途中の洞窟の中にはまだあの戦士がいた。
「困ったぞ、どうやら道に迷ったらしい」
方向音痴ってレベルじゃねーぞ、と思ったジャイアンであった。

アレクスの奥さんのフレアにアレクスの事を告げるとイムルに行きたいと言い出した。
ジャイアンはフレアをイムルまで連れて行った。
途中の洞窟にはまだあの戦士が居た。
さすがに呆れたジャイアンは戦士に話しかけた。
「何?出口まで連れて行ってやるだと?
 いらぬお世話だジャイアン、私は自力で出てみせるぞ」
本人がそういうのでジャイアンはもう何も言わぬ事にした。


「あなた!あなたなの!?」
「おばちゃん誰だお?」
アレクスの記憶喪失はは嫁の顔を見ても何の変化も無かった。
「ほうら、これでも思い出さない?」
フレアはアレクスにぱふぱふをした。するとアレクスは全てを思い出した。
何と言うエロ男爵だこの男は!ジャイアンの表情は妬みで醜くゆがんだ。
顔を見ても、声を聞いても何も思い出さぬと言うのに・・・さすが乳は偉大なり。

「ありがとう、戦士様、おかげで何もかも思い出した
 村の南東の森の中に子供達の遊び場があるんだ、そこに行くといい」


ジャイアンは森に向かった。
森の中には怪しい井戸があった。
「こっちへおいでよ」
どこからともなく怪しい声がする。
ジャイアンは導かれるままに井戸の奥の洞窟を進んでいった。

襲い来るモンスターたちを何とか切り倒し進むジャイアンであったが
さすがに体力の限界だった。もう薬草も無い。

ジャイアンはその場に崩れ落ちた。
ふと気が付くと目の前にホイミスライムがいた。
だめだ、ここまでか・・・。
しかし、そのホイミスライムは攻撃する様子も無く、話しかけてきた。


※作者よりお願い※
 この先のホイミンのセリフは、僕→わたし以外原文のままです。
 脳内で能登ボイスに変換してお読みください。


「わたし、ホイミン
 いまはホイミスライムなの
 でも人間になるのが夢なんだ
 ねえ、人間の仲間になったら人間になれるかなあ・・・・?
 そうだ!わたしを仲間にしてよっ」
ジャイアンははいと即答した。
「わーい!ありがとう」
ホイミンが仲間に加わった。

「このどうくつには
 きっとまだなにかあるよ
 さがすのを、わたしもお手伝いできるといいなあ」

瀕死のジャイアンの横で、ホイミンは本当に嬉しそうだった。
「うっれしいな~
 やっと人間とお友達になれたよう
 ジャイアンさんのために
 わたしめいいっぱいがんばるね」



     






「ホイミン、もう一回してくれ」
「えっ、だめですよう。さっきしたばっかりじゃないですか」
「いいだろう、減るもんじゃないし」
「減りますよ!もうMPあまり残ってないんだから
 ギリギリまでホイミはしませんよう」

ホイミというのは怪我を回復する呪文である。
ホイミンはホイミスライムなだけあって、この呪文が得意であった。

ジャイアンはすっかりホイミ中毒になっていた。
ホイミホイミとねだるその目は虚ろで焦点が合っていなかった。


「こっちにおいでよヒヒヒ」
突然どこからともなく変な声がした。
「さっきの声だ!行ってみよう」
ジャイアンは我にかえり、声のするほうヘ向かった。


宝箱があった。
開けてみるとそこには靴が入っていた。
「そういえば、この辺で子供達がこの靴をはいて遊んでいるのを見たわ」
「マジか!それは有力な手がかりだ
 子供達の失踪と何か関係があるのかも・・・」


靴には特に妙なところは無かった。
ちょっとおしゃれな羽が付いているくらいだ。

「ジャイアン様、もしかしてそれはキメラの翼じゃないですか?
 靴を履くとどこかへ飛ばされるのかもしれませんよう」
「それだ!よし!靴を履いてみよう!」

ジャイアンは空飛ぶ靴を履いた。
しかし、靴のサイズが合わない。

「ちょwwwジャイアン様www
 靴履けなかったらイベント進まないんじゃwww
 もっこりクエスト4打ち切りエンドですか!?」

ホイミンは混乱している。

「落ち着け、能登、じゃなくてホイミン
 靴ひもをほどけば多分履ける」
「けどそれ明らかに子供用ですよ」
「大丈夫、俺は足ちっちゃいんだ
 それに、俺は気に入った靴があると
 1cmくらいならサイズが小さくても買ってしまうタイプの戦士だ」
「戦士のそんなタイプわけ初めてききましたよう」


ジャイアンはひもを限界までゆるくして、無理やりに靴を履いた。
「おおーこれすっげ軽い!体育館シューズにちょうどいいわ
 これでバスケとかやったら動き や  す   そ   う」
喋り終わる前に、ジャイアンの身体は空たかく舞い上がった!
そしてそのまま洞窟の天井に頭をぶつけた!

ジャイアンは死んでしまった。



     


第5話を始める前に新都社編集部からのお知らせです。


田鼠先生急病のため、連載が中断しておりましたが
この度めでたく復活の運びとなりました。

ただ、中断期間が長期に渡った為作者はドラクエ4の内容をほとんど忘れてしまっております。
この先の展開は作者のうろ覚えとなっておりますのでご注意ください。

田鼠先生がこの小説を書くに当たって目指していたものは
楽しく読めて、ゲームの攻略もできるという
池原ロックマンのような作品でした。

攻略サイトをググル事で、ある程度内容は追えるのですが、
ゲームはとっくに遊ぶ金欲しさに売り払ってしまっているので
細部の描写がどうしてもうろ覚えに頼る事になってしまいます。
ご了承ください。


それでは本編をお楽しみください。
ちなみに田鼠先生の病名は冨樫病です。












ジャイアンは目を覚ました。

「…知らない天井だ…」
そこはバトランドの王の間であった。

「ジャイアンよ、死んでしまうとは不甲斐ない
 そなたにもう一度チャンスを与えよう」


そうか、俺は死んだのだ。
洞窟でうっかり空飛ぶ靴を履いたせいで天井に頭をぶつけて…。
「ハッ!そう言えばホイミンは!?」

「ジャイアンさま!よかった、生き返って!」
なんとホイミンがパンツの中からあらわれた。
「ジャ、ジャイアン!貴様なんじゃそのモンスターは!」
「わたし、悪いホイミスライムじゃないよっ」
「じつはかくかくしかじか奈良の鹿仏でして…」

ジャイアンは適当に説明して王様を煙に巻くと城から退散した。


「こんどはちゃんと外で履くぞ」
ジャイアンは空飛ぶ靴を履いた。
「おっおっ、体が浮き始めた!ホイミン!俺の体につかまれ」

ジャイアンはどんどん空へ浮き上がった。
ジャイアンは靴に導かれ空を飛んだ。
北西の湖の中にある塔が見えてきた。
「やっぱりここか!絶対ここだと思ったわ!あからさまに怪しいだろ。」


まあそんなこんなで、ジャイアンは塔を攻略し、黒幕のピサロの手先を倒して
無事子供達を救い出したのでした。


そして…。


王の間には、王やら大臣やらがジャイアンの旅立ちを見送っていた。
「ジャイアンよ…本当に行くのか?」
「はい…どうやら魔王が復活する兆しがあるようです」
「なんと!」
「しかし、勇者もまた目覚めようとしていると…
 俺はその勇者を助けるために旅立つ決意をしたのです」
「そうか…お主ならばきっと勇者の助けになれるじゃろう
 行ってくるのじゃ!ジャイアンよ!」

「…つきましては、1階にある宝物庫の鍵を…」
「それはできん」
「ですよね」


こうしてジャイアンは勇者を探して旅立った。
「さあ、ゆくぞホイミン!まずは…そうだな
 エンドールの城にでも行ってみるか」
はい、ジャイアンさま!」


魔王復活の兆し…。
世界は闇に包まれようとしていた。

だが、かすかな希望の光もまた確実に生まれようとしていたのである。




第1章 王宮の戦士 ジャイアン

        完






















       

表紙

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