Neetel Inside ニートノベル
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秋の夜長の蜃気楼
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 すぐ近くにあると思っていたモノが、本当はとてもとても遠いところにあって、幻影ばかりを追いかけては消え去る像に愕然し、再び姿を現したそれをまたも追い求めるような。
 或いは、果てもないぐらい遠く感じていたモノが、実は隣で擦り寄っていたのに、それを分からず勝手に失望するような。
 傍から見ていたら馬鹿馬鹿しいことこの上ないやり取りを、延々と繰り返していたのだろう。そうして一向に気付くことなく何度も押し引きをやっている内、いつの間にか本当のことを、本心を見失って、誤解してすれ違うのだ。
 どうしてこうもややこしいのだろう。
 好きなら好きと伝えるだけで、後はその結果如何で事が進むだけで、ごく単純に、簡単に済むはずなのに、どうして私たちはこうはならないのか。
 何故言葉を発した後のことや、周囲の視線や体裁や、先々のことまで気を回して、壊れそうなほど苦しい思いをせねばならないのだろうか。
 考え詰めても、答えも、結果も出ないのに。

 蜃気楼は、空気の密度と光の屈折によって起きるという。
 ならば、その密度差と屈折を起こしているのは誰なのか。
 〆

       

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