春、桜舞い散る出会いの季節―
そんなめでたい季節にめでたく誕生日を迎える男、小泉空也―
この物語の主人公になるであろう俺のことだが―
と、いかにも小説のプロローグらしく語ってしまった。
実際誕生日は4月7日であり、世間では入学式だったりする。
そのせいで家族からのプレゼントは入学・進学祝いと重なり、
友達からもらったことすらない。
あ、おめでとうと言う言葉を聞いたのは何回かあるな。
入学式での、校長の式辞内でだが。
無論、俺の誕生日に向けてではない。笑えるだろ?
そんなこんなで、今年も不幸な誕生日がやってきた。
「行ってきまーす」
「行ってらっしゃい。母さんと一緒じゃなくて良いのよね?」
「高校の入学式に、母親と一緒に来る奴なんていないよ」
俺は苦笑しながら答える。
靴紐を結んで、ドアの向こうへ飛び出した。
そう、今日4月7日は高校の入学式。
せっかくの誕生日、校長の話聞いて、PTA会長の話聞いて、担任の話聞いて...。
って、話聞いてばっかりじゃねえか!
どうせならよくあるラブコメみたいに、女の子との出会いでもあれば良いのに。
そんなことを思いながら、高校へと足を速める。
この時の俺は、後に起こる出来事なんて考えもしなかったんだ、絶対に。