Neetel Inside 文芸新都
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ポンチ短編集
女流武者 御剣桜華 第一幕 桜華、戦いへの目覚め

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 時は戦国の世・・・
火の国は各地で合戦が起こり、罪のない人々が殺されていくこの時代が続いていた・・。

 火の国の中部(現代で言う中国地方)の南にあるとある村で、松明を持った悪の武士たちとその大名が叫ぶ。
「命が惜しければ金品をさし出だせぃ!!さもなくばこの村に火を放つぞぉっ!!」
悪の大名が叫びを聞いた村の人たちは、一斉に家の前に金品を差し出した。悪の大名はその金品を回収すると、すぐさまその場を去ろうとしたが、武士の一人が呼び止める
 「大名様、あちらの家の前に金品が見当たらぬ!この家に火を放ってもよいか!?」
武士の一人の言葉に、大名がこう答える。
 「あの家に火を放て!!金品を差し出さなかった罰だからな!!」
大名の言葉に、武士の一人が金品を差し出さなかった者の家に火を放った。その異変に気付き、家の中にいた夫婦が急いで火を消そうとしたそのとき、大名が目の前に現れた。
 「金品はどうした金品はぁっ!!そんなことをしている暇があったら、早く家の中の金品を取って来い!!」
大名の言葉に、家の中にいた夫婦は金品を取りに炎が燃え盛る家の中へと向かっていった。家の中に入っていったのを確認すると、武士たちが一斉に火を放った。
 「はははっ!!いいぞお前ら!やっぱり藁葺きの家を燃やすのは最高だなっ!藁はよく燃えるから金品を取りに言っている間に死んでしまうからなぁっ!!」
大名の放った燃え盛る炎が、藁葺きの家を焼き尽くす。
 「まぁよい・・。これでこの近辺の村から金品は巻き上げた・・。お前ら、城に戻るぞ。早速そのことを殿様に知らせるのだ!!」
そういって大名と武士たちは、そそくさと後を去ろうとしたとき、一人の男が武士の足を掴んでいた。それはあの時大名らによって燃やされた家の夫婦の夫であった。
 「お・・お前ら・・村の住人から奪った金品を・・返せっ!!」
武士の足を掴んでいる男に、武士は躊躇なく剣でその男を切り裂いた。
 「ええい!!離せっ!この無礼者がっ!!」
武士はその男を切り裂いたあと、男のわき腹を大きく蹴り飛ばした。蹴り飛ばされた男は、腹から血を流しながらその場に倒れた。
 「こんなことをしている暇はない!!さっさと城に戻るぞ。早く帰らないと殿様が怒って処分を言い渡されるぞ!!」
大名がそう言うと、武士たちを連れて馬に乗り、村を去っていった・・。

 大名が去ってから一時間経った後、狩りから帰ってきた男たちの中に、女だが男勝りの性格の少女、御剣桜華(みつるぎおうか)がいた。桜華はこの村でも優れた剣の使い手であり、その優れた剣術で獲物を仕留める女狩人であった。
 「こ・・これは一体!?何が起こったというのだ!?」
狩りから帰ってきた男が、荒れ果てた村を見て唖然となる。そのとき、家の中から村人が現れ、その事情を話し始めた。
 「この村にも悪名をとどろかせた大名、麻蛇羅虎雅(まだらとらまさ)が現れ、村の金品を奪い去っていったのだ・・。我々はただ恐怖におびえることしかできなかった・・。この村に戦えるものはいないのか・・。」
村人が事情を話している間、桜華は無残に焼き尽くされた自分の家を見て絶句していた。
 「私の家が・・燃やされている・・・。一体誰が・・?それより、お父様とお母様はっ!!」
桜華は必死で瓦礫と化した自分の家を見ながら、父親と母親を呼び続ける。すると村の入り口で倒れている桜華の父親がそこにいた。
 「お父様っ!!しっかりしてっ!!」
桜華が父親のそばに駆け寄ると、父親が桜華にこう言った
 「桜華よ・・。この村にまで大名が攻めてきた・・。村にあった金目のものはすべて奪われてしまった。私は命からがら生き延びたのだが、妻は死んでしまった・・。桜華よ、旅に出よ!!そして、悪の大名、麻蛇羅虎雅を討て!この村で唯一力のあるのはお前だけなのだ・・。お前になら・・私たち夫婦の仇を・・ぐふっ!!」
桜華の父親がそういい残すと、父親は息を引き取った・・。
 「お父様あああああーーーーっ!!!」
桜華は涙を流しながら、父親の最後を看取った。そのとき、彼女の心の中では、両親の復讐のために虎雅に強い怒りを感じ、旅に出ることを決意した。

 桜華は父親の墓を作り、両親の仇である、麻蛇羅虎雅を倒すべく、自分の猟刀を手に、旅に出ることを決意した。
「桜華よ・・出かける前にこれを見につけていくがいい。この鎧は昔俺の親父が使っていた者なのだが、大名が攻めてきたときに敗れ、死んでしまったんだ。だから、親父の分までがんばってほしいから、お前にあげるよ・・。」
桜華は狩り仲間である男から鎧をもらい、早速それを身に着けた。
 「ありがとう。では行って来るよ。両親の仇もとらなきゃいけないからね・・。」
桜華が村を離れようとした瞬間、村長が引き止める。
 「桜華よ・・この村から少し歩いた場所に町がある。町には虎雅の武士もいるので、女としての感情をすてろ・・でもお前は昔から男勝りの性格だったんだから、気付かれないだろう・・。これは僅かだが、心ばかり餞別だ。受け取ってくれ・・。必ずや虎雅を倒してくれ・・。」
村長が桜華に百両を手渡し、村長は村へと戻っていった・・。
 「さてと・・準備も済んだし、行くとするか!虎雅、あんただけはゆるさないよっ!!」
桜花は虎雅への復讐を胸に、近くの町へと向かうのであった・・。

殺された我が両親の無念、忘れたわけではあるまいな
行け、そして虎雅を討て!
天照大神の加護のあらんことを

       

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