備前での戦いを終え、桜華と東雅は馬車を駆り、虎雅がいる大和(現在で言う奈良県あたり)へと足取りを進めていた。
「一刻も早く、大和へと向かわねば、虎雅はまた他の領地を襲うだろう・・。それまでに家臣を集め、虎雅に立ち向かわねばならぬ。」
桜華がそう呟くと、一眠りしていた東雅が馬車の中から答える。
「桜華殿・・まだ町に着かぬのか。町に着いたらまずは腹ごしらえだな・・。私はあれから何も食べていないのでな・・。」
東雅の言葉に、桜華が地図を手に馬車の中にいる東雅に答える。
「東雅殿・・あと少しで播磨の辺境の村に到着する。それまで我慢だ。そこに着いたら、腹ごしらえと家臣探しだ・・。」
桜華は馬車を走らせ、播磨の辺境の村へと足を運ぶのであった。
数時間後、桜華たちは播磨の辺境の村に辿りついた。しかし村人の姿が何処にも無く、寂れた村であった。その異変を察知した桜華は村の飯処に行き、その店主に話しかける。
「すまぬ・・この村で何があったか聞かせてくれぬか?何故この村には人がいないのだ・・。」
桜華の言葉に、店主は悩んでいる表情で答える。
「あんたの言うとおり、村の周りで合戦が起きた。その際、その戦を起こした熊髭伸朗(くまひげのびろう)とかいうやつによって村人たちが捕まえられてしまったんだ。私は奴の顔を見たことがある。奴は髭が長く、家臣たちからは『美髭の大将』と呼ばれていたようだ。お前たちが助けに行ってもどうせあいつにやられるだけさ・・。」
飯処の店主がそう言うと、桜華が首を横に振り店主にそう言う。
「私が助けに行きます・・。私の名は御剣桜華と申す。そちらは我が家臣である柳生東雅と申す方だ。私は両親の仇である虎雅を追って旅をしている。旅の途中で東雅を家臣に加え、ここまでやってきたという訳だ。この村で武士はおらぬか・・。援軍が来てくれれば心強いものだ・・。」
桜華の言葉に、飯処の店主は首を横に振り、答える。
「すまない・・この村にいる武士はみんな伸朗に捕まえられているんだ。だからもうこの村には武士はいないぜ・・。あんたらだけが頼りだ・・。」
飯処の店主がそう言うと、飯処の奥から武士のいでたちをした男が桜華のところにやってきた。
「私を伸朗のところへと行きます!!私もこの村で武士をしていた者だ!君たちのことは飯処の主人との話でよく分かっている。どうか私も連れて行ってもらえませぬか!」
武士のいでたちをした男が急いでいる様子でそう言うと、桜華が答える。
「ちょっと待ってくれぬか。おぬしの名前をまだ聞いていない。話は分かったからおぬしの名を教えてもらおう・・。話はそれからだ。」
桜華がそう言うと、武士のいでたちをした男が自分のことを話し始めた。
「自己紹介が遅れてすまない・・。私の名は火峰竜五郎(かおうりゅうごろう)と申します。あなたたちと共に伸朗を倒しに行きましょう!奴はこの村から離れた山奥の砦にいる。さぁはやく村人を解放するために行きましょう!!」
竜五郎がそう言うと、桜華が首を縦に振り、こう答える。
「竜五郎殿、おぬしの気持ちも分かるが、私たちは腹が減ってたまらないのだ。私の家臣も腹がすいたと仰っておった。腹ごしらえをしないと道中で倒れてしまうからな・・。」
桜華の言葉に、竜五郎は笑いながら答える。
「ははは・・。腹が減っておったか・・。ならば腹ごしらえをしてから行きましょう。」
竜五郎はそう言うと、桜華たちは飯処で食事をしてから伸朗にとらわれた村人を助けることにした。
腹ごしらえを済ませた桜華たちと竜五郎は、伸朗に捕らえられた村人を助け出すため、山奥の砦へと向かうことにした。
「竜五郎殿・・そなたは武士だがなぜ捕らえられなかったのだ。」
馬を駆る桜華がそう言うと、竜五郎が答える。
「私は武士ですが・・偶然飯処から町の外を見て、危険と感じた私は、飯処の奥に隠れ、何とか難を逃れました。しかし伸朗を倒すというあなたたちのおかげで、私は再び戦うことを決意しました!」
竜五郎がそう言うと、馬車の中にいる東雅が答える。
「そうか・・ならば私もおぬしの味方だな。共に村人を解放するために戦いましょう!!竜五郎殿、馬車に入るでござる。」
東雅の言葉で、竜五郎は馬車の中に入る。桜華は鞭を振るい、速度を上げて伸朗の待つ山奥の砦へ向けて向かっていく。馬は草原を駆け、山林に差し掛かったそのとき、砦の周辺のみまわりをまかされていた二人の伸朗の武士がそこにいた。
「止まれ!お前らも村人を助けにきたのか・・。だが、お前らの力では俺たちには敵わないぜ!!」
伸朗の武士が桜華にそう言うと、桜華は鞘から刀を抜き、伸朗の武士にそう言う。
「悪いが、私たちの力を舐めないでいただこう。私たちは村人を解放するために伸朗を倒す!貴様らなどに邪魔はさせん!!」
桜華の言葉で、伸朗の武士が怒りの表情で刀を構える。馬車の中からその様子を見ていた東雅と竜五郎は刀を構えて馬車を降りる。
「桜華殿・・助太刀いたす!!」
東雅が刀を構え、桜華の元へと急ぐ。
「僕も戦います!この刀で村人を助けたいんだ!!」
竜五郎も刀を構え、戦う態勢に入る。
「フン・・。お前たちが束になって戦っても倒せはしないぜ。村人は一生伸朗の奴隷として働く運命なのだからなっ!!」
二人の伸朗の武士が刀を構え、一斉に桜華に襲い掛かってきた。桜華たちは刀を構えると、すぐさま攻撃の態勢に入る。
「素直に引いてくれぬか・・ならば・・こちらも戦うのみだっ!!」
桜華たちは刀を握り締め、一斉に伸朗の武士たちに攻撃を仕掛けるのであった。
村人を救うため、竜五郎が仲間に加わった。
とらわれた村人を救うため、桜華は山奥の砦へと向かう!