目覚める。
目覚める。
何気なく目覚める。
いつもと同じ朝を繰り返していくように、無意識的に目覚める。
ベッドの上で、のうのうと目覚める。
目覚める。
目覚める。
と、確かに僕は生きていた。
つまり死現実さんに殺されたはずの命は、命として実感できる状態にあった。
呼吸も出来る。瞬きも出来る。もちろん声を出すことも出来る。首を動かすことも出来る。身体を起こすことも出来る。立ち上がることも出来る。部屋を出てリビングで父さんが作った朝ごはんを食べることも出来る。トイレに行くこともできる。歯を磨くこともできる。着替えて学校に行くことも出来る。
おかしい。
感覚がマヒしてしまうような痛い思いをした記憶があるのに、僕はいつものように生きている。気が狂ったとしか思えない。気が狂ったことに自分が気付いたということは周りの人間はとっくのとうに気付いていたに違いない。それでも僕に対してそういう素振りを全く見せてこなかったということは気を使わせていたということなのだ。
そう思うと、死にたくなって、学校に行きたくなくなる。真実に気付いてしまった惨めさが僕を襲っていた。生きるということに水を差されてしまうような恐怖。気付けば立ち止まっていた。進む気力がなかった。
夢だった、という可能性ももちろんある。鞄の中身を覗いた時、返したはずの本は確かにそこにあった。
だとしても、今日は休みたかった。疲れすぎた。
とりあえず、家に戻って今日は休もう。
そう思って、身体を反転させる。
すると。
「おはよう」
死現実さんが、そこにいた。