Neetel Inside 文芸新都
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文藝ニノベ短編作品・超激辛レビュー大賞
禁煙カフェ23/チンコレディブル・シコルスキー

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 宇宙新都歴00XX

 わたしことチンコレディブルは宇宙喫茶で続きを書き悩んでいた。入稿の締切は近い。相手は先物会社社員も真っ青の鬼編集の光宙(ぴかちゅう)さんだ。聞くところによると、先物を勧誘しに来たセールスマンに、大量返品された本を売りつけたという。
「お客様。お電話です」
 喫茶店のメイドがわたしの耳元に息を吹きかける。光宙さんだったら嫌だなと思いながら、メイドの胸をもみしだく。
「チンコレディブルです」
「ちょっとサキュバスってどういうことよぃ!」
 メイドの口から喫茶店中に響き渡る大音量が聞こえてる。聞き馴染みの声はアイツだ。他の客に迷惑なので、俺はメイドの股間をいじる。
「あんあんあん」
「だいたいあんたはいつも勝手に周りの人をモデルにしてぃ」
 メイドの声がだんだんと小さくなっていく。
「任三郎か。なぜ君がモデルと思ったのかい? 君はサキュバスでも純情無垢でもないだろう」
「純情無垢まで否定するなぃ。あと名前で呼ぶなと言っているんだろぃ。第二話の話がわたしが大学時代に告白したときに振られたときの話じゃないかぃ。……三次が二次に負けるはずがないのにぃ……ぶつぶつ」
 任三郎は名前で呼ばれるのを嫌がる。男っぽい名前がコンプレクスらしい。魔法使いうんぬんは脚色だが、カフェでよく見かける男性に任三郎が告白したら、二次元にしか興味ないと一蹴されたのを引きずっているらしい。
「まだ気にしているんだね。君にもいつかいい人が見つかるよ」
「本当かぃ?」
「宇宙の謎がすべて解き明かされるくらいくらいにはね」
「死んでるよぃ」
 さばさばした性格で男女問わず人気があるのだが、残念ながら恋愛には繋がらない。こんなわたしと親交を持ちづけている数少ない友人である。
「すまない。締切が迫っていてね。あまり時間をかけられないんだ」
「ああ、悪いぃ。小説家なんてのは難儀だねぃ」
「好きでやっていることだからね。締切を乗り越えたら印税で火星人のステーキでもおごるよ。それじゃあ」
「共喰いさせる気か――」
 最後の「ぃ」を聞かぬうちに、メイドの左手に手を乗せて電話を切った。女子高生に流行っている「ぃ」を、三百路超えた任三郎が真似してもかわいさはちっともなくお寒いだけだ。
 メイドにキスをすると、ご利用ありがとうございましたと頭を下げて立ち去る。地球人は本当によく働く。ただの電話だったらこうはいかない。宇宙文明が進展したのも地球を征服し、地球人を改造して家電にしたお陰だ。

 石油がなくても生きていけるが、もはやわたしたちの文明は地球家電なしでは生きてられない。

       

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