Neetel Inside 文芸新都
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消失点
2. 電車

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電車



 電車の中。
 キレイな足をすらりと伸ばして組み、スマートフォンを退屈そうに弄っている女の子がいる。ショートパンツのようなものの上に、白いブラウスのような服を着ている。髪は明るい茶色で、ショートボブというのだろうか、多分そんな感じの髪型だ。少し濃いめの化粧が、目を大きく見せるようにと働いている。
 こうして電車の中にいる人を観察するのが好きだ。通学時間が長いせいか、電車の中では飽きもせずにこんなことをずっとやっている。服装や見た目の印象からその人がどんな人かを考える。人間観察といえば聞こえはいいが、あまりにも陰湿で、あまりにも退屈な遊びだ。
 目の前の彼女と目が合いそうになり、僕は手元のスマートフォンを見ているふりをした。まぁ実際、群馬県を舞台にしてひたすら収穫物を集めてお金を貯めるという、自分でも面白味の良くわからないアプリゲームで遊びながら彼女を見ていた。そのアプリを切り、僕はツイッターを広げてぼーっと見る。あまりよく知らない人たちのつぶやきが眼前に無数に広がる。僕は暫く見ていたが、少し気持ち悪くなってツイッターも閉じ、スマートフォンの電源を落とし、目を瞑った。
 薄目を開けて目の前にいた女の子をもう一度観察する。彼女もスマートフォンを弄りながら、少し眠いのか、電車の座席の側面についた壁にもたれかかって瞼を閉じている。ふっくらと頬に着いた肉が、彼女に丸い印象を与えていた。胸の大きさは控えめだ。膝に置いてあるバッグのせいでよく見えないが、多分そんなに大きくは無い。
 こんな可愛らしい子も、きっと彼氏の前ではやすやすと下着をおろし、股を開くのだろう、というところまで考えて止めた。結局のところ、これは遊びに過ぎない。僕がわかるのは彼女の外見だけだ。彼女の内面も、生活も、人間関係も窺い知ることはできない。結局僕は他人に触れることはできない。
 僕も目を閉じた。駅に着くまで一眠りすることにした。

       

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