弁当のフタを開けた。
ハンバーグの匂いがした。
なかなかうまくできている。
心の中でガッツポーズをした。
クラスの男子に「それうまそうじゃん」と言われたが、僕は黙々と弁当の中身を減らした。
今日も授業が終わり放課後となったわけだが、僕には部活がある。
僕は水泳部に入っている。
理由は昔に少し習っていたから、という何てことない理由だ。
今の時期は泳がない。
いや泳げない。
何故ならば今季節は春。
今水泳部では陸上トレーニングをしている。
自由参加なのであまり気は進まないがほぼ毎日参加している。
いつもの顔ぶれが揃っている。
大体くる奴とこない奴は決まっていた。
その中にやたらと元気な女子がいる。
姫野というらしい。
自分とあまり関わりはないが、皆そう呼んでいたので知っている。
いつも騒いでいるがあまり気にならない。
慣れてしまったというのもあるが、僕が良いイメージを持っているからだ。
というよりもこれが水泳部にくる理由と言っても間違いではない。
しかし、僕は恋だと思っていない。
彼女は運動神経抜群、整った容姿、頭脳明晰。才色兼備、何もかも揃っているのだ。
勿論男子人気もかなり高い。
なのでめったに人と会話などしないし勉強はたえず中の下、さらに友達もいない僕から見たら天にそびえるひまわりのようなものであり、両思いなどあり得ないのだ。
それは恋ではないと僕は思っている。
僕が彼女に対する思い、それは恋ではなく好意。
ハンバーグのいい匂い
始まり
筋力トレーニングも終わり、
先生の指示があり、
今日の部活が終わった。
まだ辺りは明るかった。
帰り道、特に家に帰ってすることもないので古本屋に立ち寄った。
僕は本がすごく好きなので僕が本に夢中になるのに時間はかからなかった。
物語もクライマックスを迎えたころ、ふいに後ろから声がした。
「谷くん?」自分の名前を呼ばれ、驚きながら後ろに振り向いた僕の前には姫野とその友達が立っていた。
その友達が「誰?」と聞くと姫野は「水泳部の谷くんだよ」と答えた。
くんというのには少しの恥ずかしさと距離の遠さを感じる寂しさがあった。
姫野も本が好きで友達はそれに付き合わされているらしい。
結局その友達は帰り、僕と姫野が並んで本を読む形となった。
隣に憧れの彼女がいる、帰りたい、しかし帰りたくない。
そんな気持ちで本の内容なんて全く入っていなかった。
そんなとき彼女が「本好きなんだ?」と誰へとでもなく言った。
めったに会話しない僕でも憧れの人となれば会話くらい何ともない。
「会話が得意じゃないので本が唯一の楽しみみたいなものなんです」と言った。
本が好きか聞かれたのに自分のことも混ぜてしまった、まるで自分の事を知ってほしいみたいじゃないかと、手遅れの反省をしたが、彼女の反応は予想外のものだった。
「私も最初そうだったんだ」と言った。
意味がわからなかった。
そして彼女は自分がどのような経緯で今の発言に至ったのか、僕に淡々と話した。
彼女は小学生のとき、会話を極力避けて生活していた。
その様子を見て他の生徒から小さないじめをうけていたという、その時彼女に1人の男子が話しかけてきて、暗いままでは人生つまらないし、このままじゃ何も変わらないと悟され、自ら明るい性格になったという。
僕は衝撃とさらなる尊敬に固まってしまった。
彼女は恥ずかしそうに笑うと「いまじゃ思い出したくもないけどね」と言った。
僕は開いていた本に目を落とした。
気付いたら最初のページになっていて、そこにはこう書かれていた。
『物語のはじまり』
先生の指示があり、
今日の部活が終わった。
まだ辺りは明るかった。
帰り道、特に家に帰ってすることもないので古本屋に立ち寄った。
僕は本がすごく好きなので僕が本に夢中になるのに時間はかからなかった。
物語もクライマックスを迎えたころ、ふいに後ろから声がした。
「谷くん?」自分の名前を呼ばれ、驚きながら後ろに振り向いた僕の前には姫野とその友達が立っていた。
その友達が「誰?」と聞くと姫野は「水泳部の谷くんだよ」と答えた。
くんというのには少しの恥ずかしさと距離の遠さを感じる寂しさがあった。
姫野も本が好きで友達はそれに付き合わされているらしい。
結局その友達は帰り、僕と姫野が並んで本を読む形となった。
隣に憧れの彼女がいる、帰りたい、しかし帰りたくない。
そんな気持ちで本の内容なんて全く入っていなかった。
そんなとき彼女が「本好きなんだ?」と誰へとでもなく言った。
めったに会話しない僕でも憧れの人となれば会話くらい何ともない。
「会話が得意じゃないので本が唯一の楽しみみたいなものなんです」と言った。
本が好きか聞かれたのに自分のことも混ぜてしまった、まるで自分の事を知ってほしいみたいじゃないかと、手遅れの反省をしたが、彼女の反応は予想外のものだった。
「私も最初そうだったんだ」と言った。
意味がわからなかった。
そして彼女は自分がどのような経緯で今の発言に至ったのか、僕に淡々と話した。
彼女は小学生のとき、会話を極力避けて生活していた。
その様子を見て他の生徒から小さないじめをうけていたという、その時彼女に1人の男子が話しかけてきて、暗いままでは人生つまらないし、このままじゃ何も変わらないと悟され、自ら明るい性格になったという。
僕は衝撃とさらなる尊敬に固まってしまった。
彼女は恥ずかしそうに笑うと「いまじゃ思い出したくもないけどね」と言った。
僕は開いていた本に目を落とした。
気付いたら最初のページになっていて、そこにはこう書かれていた。
『物語のはじまり』