Neetel Inside ニートノベル
表紙

ピンク色似合うと思うよ。
イケメン女と可愛い男

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昔から、自分の女顔が嫌いで仕方なかった。
身長だって全然伸びやしない。女子の前列に混じっても違和感が無いぐらいだ。

服装や髪型ぐらいは男らしくなろうと、かっこいいスニーカーを履いたり、ワックスで髪を立てたりしても、鏡に映る自分の姿は「男装してる女」だった。
一度、自分のふわふわした可愛らしい髪質が嫌になり、坊主に近い髪型にした事もあった。
しかし、同級生から投げかけられる言葉は「それでも可愛いね」。
身長を伸ばそうと牛乳を飲みまくっても、身長は伸びず、腹を壊すだけだった。
男らしくなる為に男子校に通うことも視野に入れたが、幼馴染に止められた。
「ホモに襲われるぞ」と言われ、俺はしぶしぶ共学の高校に通うことにした。

高校に入学し、新しい友人を作ろうと意気込んでいたが、俺には男友達は出来なかった。
周りにいるのは女友達だけで、男子達は皆俺を「女子扱い」するのだ。






「白石君、好きです、付き合ってください」


昼休み中、俺が友人の美咲ちゃんと優香ちゃんと食堂に向かおうとしていると、一つ年上である三年生の男が、俺に向かって叫んだ。
白石というのは俺の名前であるから、「好きです」という言葉も俺に向かっての言葉だと理解できたが、出来るなら理解はしたくなかった。

俺は小さく「男に興味ないです…」と先輩に呟く。
美咲ちゃんと優香ちゃんは顔を見合わせてニヤニヤしていた。
ほんとモテるねー。と囃し立てるが、俺は全く嬉しく無かった。女にもてなければ意味が無いのに、女は俺を女扱いするのだ。
自分の性別が間違っているのではないか?と思うぐらいに。もし俺が性同一性障害だと周りにカミングアウトしたら、「ああやっぱり」と言われる事間違いないだろう。いや、俺は男で、女が好きなんだけどね?


俺がそんな事を考えていると、美咲ちゃんと優香ちゃんの足が止まった。


「あっ、黒瀬さんだ…!!」
「ほんとだぁ!あ~、もう本当かっこいいー!」


美咲ちゃんと優香ちゃんの目線の方へ目をやると、俺より二十センチ身長が高い女がこちらへと向かっている。
その女は黒瀬といって、俺と立場が全く逆の奴である。

黒瀬は、黒いショートヘアーが似合っている、とても男前な女だった。
スラリと伸びた白い足が短い制服のスカートから伸びている。目はキリッとしていて、鼻は高い。
本当、御伽噺に出てくる王子様の様な「女」だった。

そして、俺はそんな黒瀬と、親友であった。
他の女子は俺を女子扱いするが、黒瀬は俺を男友達として接してくれる。ありがたい話だが、
黒瀬が男前で、俺が女みたいなもんだから、隣を歩いていると、黒瀬のその男前な顔と身長が欲しくて欲しくてたまらなくなる。


「龍之介ー!」


黒瀬は俺に気付いたのか、長い腕を振って、俺に駆け寄ってきた。
周りにいる女子は全員目がハートになり、黒瀬を見つめていた。
え?龍之介?俺の名前だが?自分に似合わない事ぐらい俺が一番分かっている。


「…今から食堂?」
「はいっ!!く、黒瀬さんはっ?」
「私はちょっとー…龍之介に用事があって」


黒瀬と話す美咲ちゃんと優香ちゃんは、顔が真っ赤になっちゃって、完璧に乙女の顔になっていた。


「…龍之介、借りてもいいかな」


黒瀬が首をかしげて二人を見下ろすと、「はいもう全然構いません!!」と二人は俺を黒瀬の方へ押した。
「ちょ、なんだよ俺まだ飯…」抗議したが、イケメン黒瀬の願いを聞かないわけにはいかないと、
美咲ちゃんと優香ちゃんは俺を睨みつけた。「いいから!黒瀬さんの所行きなさい!」と。


「ありがと」


黒瀬はニコッと微笑んだ。殺人並みの、イケメンスマイルで。







       

表紙

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