Neetel Inside ニートノベル
表紙

少女「私は守護者、あなたの童貞を守る」
1.私は守護者

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 俺は森田十時郎。どこにでもいる高校生。
 最早テンプレと化した「どこにでもいるヤレヤレ系男子」である。
 しかし大概モノローグを始めるキャラに平凡なやつはいないと思う。
 そして俺もご多分にもれず決して平凡でない日々を送ることになる。
 あの娘が現れてからというもの。

 なんてラノベ風のイントロを柄にもなく綴ってみたののどうやら最近俺は主人公かもしれない。
 なんたってまず幼馴染、これがいる。生まれながらの勝者。
 可愛くてブラコンな妹もいる。これ最強。
 学校で廊下をすれ違うと黄色い声が聞こえてくる。
 黒髪眼鏡の委員長とも仲がいい。
 マジやばい。俺モテる。なんだこれエロゲ?
 人生イージーモード?ノブレスオブリージュ?

 今日はバレンタインデー。
 予感がする、今俺の後方三メートルに女子がいる。
 予感がする。初めての彼女が出来そうな気がする。
 きっと可愛くて料理が上手くてデートとかして、脱いだら凄い黒髪少女とセクロス三昧の不純なデイズが俺を待っている。

 「あ、あの……先輩!」

 先輩?ほう、年下か。顔も…可愛いじゃないか。胸も…グッド。

 「やあ、君は…一年生かな?何か用かい?」

 「先輩、これ……受け取って下さい!」

 手にはリボン付きのチョコレート袋。
 来た。キタコレ。ありきたり展開キタ。
 マジパネェ、主人公パネェ。
 Ⅰ`sどころの騒ぎじゃない。
 ハーレム革命くらいなら行ける。
 本気だせば電影少女くらいまで行けるわ。
 人生余裕すぎわろた。FF9くらいぬるゲーだわこれ。

 刹那、彼女のチョコレートは宙を舞うことになる。

 「!?」

 落下音より遅れて俺はチョコを一瞥する。
 真っ二つに割れていた。
 何が起きたのか理解するのに数秒を要した。
 何故か…それは、それよりも俺と彼女の間に立っている少女が誰か、という疑問からだった。

 「(誰だ)」

 俺は思う。

 「あ…あ……」

 一年生の少女。

 「ふん、危ないところだった」

 そう言ったのは、凛とした透き通った声で言ったのは、小柄な少女だった。
 制服ではない。変わった服を着ている。
 髪はセミロング、瞳は明るい鳶色で、光によって目の奥に深緑を宿しているようにも見えた。

 「女」

 彼女は言った。

 「主は貴様如き下賤の者が軽々しく触れていいお方ではない。去ね」

 静かに、しかしバナナが氷って釘が打てるほど冷たく言い放つ。
 後輩女子は驚きからか泣きながら走って去っていった。

 「危ないところだったな、主よ」

 「ってか誰」

 「申し遅れた、私は守護者。主の童貞の、鉄壁のガーディアンだ」

 「帰れ」


 †


 帰り道
 
 「主よ」

 「……」

 「無視しないでいただけないだろうか」

 「……」

 「私にも私の使命で貴殿をお守りするのであって…正確には貴殿の童貞を」

 「童貞の守護者って何?」

 「貴殿に近づく女と、貴殿の貞操のリスクの完全なる排除のことです」

 「怖いよ。いや怖いってか邪魔だよ,何も守ってない。最上級の嫌がらせだよ!嫌ガラセストだよ!」

 「案ずることはない、私が来たからには貴殿は何も気にせず、普段どおりの生活を続けれくれればよい。裏で私が全て事を済ませる手筈になっている。貴殿は未来永劫童貞を貫くことになる」

 「死ね。三回死んで生まれ変わってもう一度死ね…ほんと誰だよお前」

 「言っただろう。守護者…だ。童貞の」

 「……名前は?」

 半ば話しが通じない小娘相手に疲れてきた。
 俺は話題を変えることで光明を求めていた。

 「名…か。考えたことなかったな。あるものは守護者、ガーディアンと呼ぶ。以前クソ野郎と呼ぶ者もいたな」

 「(気持ちは分かるぞ、最後の人)」

 「好きに呼ぶがよい」

 「は?」

 「これから生活を共にするのだ。名がなくては何かと不便だろう」

 「いや、名前とか別に…じゃあ『守護者』で……」

 「……衛がいい………」

 「・・・・・・・・・はい?」

 「いや、何でもない、続けてくれ」

 「しゅごし…」

 「質問です。攻める、の反対は何でしょう?」

 「守護者」

 「マモル…かぁ」

 「・・・・」

 「ところで主、知ってるか。護衛の衛と書いて……主、ちょっと待ってくれ。私の話は終わってない」

 俺は一体、彼女は一体。

 「主よ、我が主よ」

 いつの間に真横に来ていたのか。

 「貴殿の童貞は必ず守る。例え私の命に代えてでも」

 重いって。

 「……わかった。わかったよ。よろしくな……衛」

 「ああ…主」

 不敵に笑う彼女がいた。
 花のように、悪魔のようにも見える瞳が美しい。
 ふむ…これはこれで。

 このサディスティックな笑みが意外に気入った。
 最初はそれだけだった。
 後悔は先に立たないとはいうけれど。
 まさかぬるゲーと思ってた人生が女神転生レベルだったとは、ね。

 日が暮れかかった。
 青白い月はもう出てる。

       

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