第六話「明日・絵の中・煙草」
明日から、煙草というものが解禁になる。
解禁ということは、あれだ。今日までは煙草は禁止だったっていうことだ。
煙草がいつ禁止になったのか。僕はよく知らない。少なくとも、僕のおじいさんが生まれるよりは前のことだ。
歴史の授業で習ったところでは、煙草とは人間を駄目にするものらしい。依存性、っていうのかな?現代日本では依存性のあるものは全部禁止だから、いまいちピンと来ないけど。
一番最近禁止になったのは唐辛子だ。これは僕が12歳の時に禁止になった。余談だけど。
さて、煙草だ。とりあえず煙草がどんなものなのか知るべきだろう。なぜ依存性のある危険な草が解禁になるのだろう?そこのところをぜひ知りたいね。
僕はビジョンコンピューターの電源を入れる。目の前に無数の、電子の窓が広がった。
「煙草の画像をできるだけたくさん出して。人間が吸っているところがいいな」
僕はビジョコンにそう命じる。程なくして、たくさんの写真が僕の目の前に浮かび上がった。
「なんか……あんまり美味しそうじゃないな」
出てきた写真のほとんどは、狭苦しい場所に閉じ込められたおじさん達が、楽しそうに煙草を吸っている写真だった。西暦2000年前後の写真らしい。
「タバコミュニケーション?バカバカしいな。コミュニケーションならいつだってでき――」
僕はそこで言葉を飲み込んだ。
その時目に入ってきた画像に、心を奪われたからだ。
それは、写真というよりは絵だった。
一見すると暗い絵の中で、帽子をかぶった紳士が煙草を吸っている。いわゆるマフィアだろうか?古典映画のワンシーンみたいだ。
さて、理由はわからないが。
僕はその煙草を吸う男にとても目を奪われた。いや、心も奪われたのかもしれない。
この男が吸っている煙草を吸ってみたい。そう思った。
程なくして、次の日の朝がやってきた。
コンビニエンスマートに再び煙草が並ぶ記念すべき日である。
僕は近所のセブンに出向いて、店員に僕のビショコンを見せつけた。
「この男の吸っているやつが欲しんだけど」
店員は少し面食らった顔して、店内へと出てきた。
そうしてお菓子売り場へ行くと、何かをもって僕のところへやってきた。
「では、こちら、ココアシガレットですね。一箱929円です」