闇の中、轟音と共に巨大なゲートが開いていく。
「アイカ。12歳。女の子らしい性格でね、裁縫が得意だったんだ。私のお誕生日に手編みの手袋をくれたの。ほら、ここってあんまりお金ないからエアコンも節約してたんだ。本当に暖かくて嬉しかった。」
轟音は闇の空間を反射して暴力的なまでに増幅されていく。
「ハーディ。10歳。被験者で唯一の男の子。運動が得意で、いつも走り回っては研究所の備品を壊して怒られてたな。ませた子でアイカのことが好きだったみたい。結局、告白できたのかな」
連邦軍への大規模な攻勢が失敗してから、NeoXionのPH研究機関は追い詰められていた。
「ベリー。16歳。最年長だけど、一番泣き虫だった。でも一番心の優しい子で、研究用のマウスの飼育係になったときは大事に育てて、マウスを実験に使うなと大騒ぎしたりして研究員を困らせたよね。」
すでにいくつものXion残党組織が連邦軍に壊滅されていた。
「ジェーン。14歳。本当に歌の上手な子で、いつもうっとりさせられちゃった。研究員に本とビデオ資料をたくさんねだって、自分で作曲も独学してたんだよね。私はいつかテレビでスターになったジェーンを見る日が来るんじゃないかって想像してたんだよ」
決戦兵器思想。一騎当千を可能にするPH能力を最大限に利用し、決戦兵器を運用、劣勢の状況を打開する。
「アン。12歳。アンは絵が上手だった。あんまり喋らない子で、絵の具をつけちゃった服をこっそり隠しては怒られてた。でもいつもみんなの絵を描いてくれた。大事な友だちだった」
6人のPHの脳を機械的にシンクロさせることで、連邦のPH兵をも圧倒する強力な思念波を発生させ、また6つの思念波を交代させることで敵のPHに思念波を先読みされることも防ぐ。PH兵をも圧倒し、まさに一騎当千を可能にする決戦兵器。
その生贄は、PH能力の根源である脳以外を切除される運命にある。
「みんな、来たよ」
ゲートが開ききる。プラチナバードが小さく思えるほどの広大な空間に、血管のように鋼鉄の配管がびっしり敷き詰められて、のたうっている。その血管の先に、広大な空間の中心に、プラチナのように白く光る色の、本当に小さな六角形の箱が繋がっている。
『グレース、私たちを・・・、殺して・・・』
「グレース、背負わなくていい」
クレアがグレースの握る操縦桿に手を重ね、操縦桿から引き離そうとする。
「みんなは私を呼んだんだから、私が背負わなくちゃ」
クレアは、手を離した。グレースは、引き金を引いた。
「みんな・・・ばいばい」
プラチナバードから放たれたビームが、六角形を一瞬で蒸発させた。