Neetel Inside ニートノベル
表紙

ビートルナイト~蟲王~
第1話『蟲と人の世界を賭けた聖戦』

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-黒ヶ峰家-
俺は終わる事の無い夏休みを満喫していた。
「ふぅ…心地よい朝だ」
俺はいつものように昼過ぎに起きて、自分の部屋でパソコンをするためイスに腰掛ける。
「さてと…」
俺はいつものように、レスバトルと、ネットサーフィンに明け暮れていた。
さっき俺は終わる事の無い夏休みと言ったけど、逸れは大きな間違いだ。
俺は引きこもり。
高校が思ったより面倒くさいから1学期の半分は休んだ。
で、今は終わる事の無い夏休みと言うわけだ。
山積みの宿題。そして買ったまま手を付けてないエロゲ数本。
夏休み+1学期に休んだ分の課題が、一つの大きな山を演じていた。
それみた俺は、異様な痛みに襲われる。
「あーやべっ…ウンコしたくなって来た…あーやばいやばいやばい…」
普段とは格段に大きな痛みが俺を襲う。
なんだ?今日は何か、不吉な予感が…
「なんていってる場合じゃねえ…もれるっ!」
俺は一目散に椅子から飛び降りてドアを乱暴に開け放つ。
階段を自己最速タイムで駆け下りて、トイレへと駆け込む。
この間、僅か30秒。
「ふぅ…ギリギリ間に合ったな…」
永遠に続くかの様な腹痛は収まり、
故障したウォレットに少しの不便さを感じつつも大便を終え、
部屋には戻らずに、なんとなくキッチンへと行く。

     

テレビでは総理大臣が素人から見ても見苦しいのが分かる様な言い訳をし、
それを自称評論家のオジサンがキレ気味に総理を批判する様子が映し出されていた
「腹減ったわ…なんかねーかな…」
その時、後ろから何者かの視線を感じた、
「ヒデ、今頃起きたの?もう2時だよ?」
それはこの家で一番美しく、一番恐ろしい姉貴だった。
「うるせーな、俺が何時起きようが自由だろ!」
「もう…学校に行ってないんだから家事の手伝いぐらいしてよね」
「うるせえ、犯すぞ!」
「きゃーこわーい」
「……」
くそう、バカにしやがって・・・
いつかマジで犯してやると心に誓った俺は、緑茶のペットボトルと机にあったパン片手にキッチンを出る。
「全く…どいつもこいつも俺をなめやがって…いつか最強の力に目覚めてみんなを見返してやる」
俺が学校に行かなくなった理由は単純明快。
行くのが面倒だったのだ。
毎朝6時に起床…やってられるか。
別に、友達が居ないとか苛められてるからと言う理由ではない。
本当に面倒だった、ただそれだけの事だ。
「はぁー朝から不快感クライマックスだぜ…」
俺は自分の部屋のドアを開ける。

そこには、俺と同じぐらいの大きさのカブトムシの怪人が部屋の真ん中で仁王立ちしていた。

一丁前に腕を組んで、禍々しいその角は天井にギリギリめり込んでいる。
否、よく見たらギリギリどころか堂々と突き破っている。

「遅いぞ、我が傀儡になる素質のある少年。」

「……」

「おい少年?、何をボーっとしている返事しろ!」

     

エマージェンシーコールが頭の中で鳴り響く。
緊急事態発生。緊急事態発生。

「遅いぞ傀儡少年、あと5分遅かったらこのツノで突付きまくって蜂の巣にする所だったぞ」

と、とりあえず落ち着け。
常識的に考えて、こんなデカくて喋れるカブトムシが存在するわけが無い
これは絶対夢だ、しかもやけにリアルな悪夢だ。

「夢などではない。完全に現実(リアル)だ」
「え?」
「まあ、驚くのも無理はないか…」
「え?え?ちょっ…」
「いきなり押しかけてすまない。私はカブトムシのヴァイスだ」
「はぁ…」
「しかも私はただのカブトムシでは無いぞ。カブトムシの中のカブトムシだ」
「??」
全ッ然意味分からん。
そりゃ喋るカブトムシはこの世の中で全く見たこと無いけど
何?新手のドッキリ?
「まあ落ち着いて聞いて欲しい、俺は『今のところは』敵ではない…」
つーかなんで普通に会話できんの?
新種?宇宙人?世紀の大発見?
え?○ASA超えた?
この俺が?
「私は、【蟲】の王になるために異次元からやってきたのだ」
「コレは夢だ…コレは夢…飛び切りタチの悪い明晰夢だ…」
「少年!?・・・いい加減現実(リアル)と認識しろ!」
「…よし!オッケー!で、なんだって?」
「……一から説明してやる」

     

「…で、蟲の王様、つまりムシキングに成るためにはるばるK64星雲から来たと…」
「無視キング?・・・まあいい、そうだ、いやあ、理解力があって助かる」
「いやいや、微塵も理解できてねーよ」
部屋であぐらをかいて座るカブトムシに、緊張気味に正座で対面している俺。
つーかよくそんなバランスで座れるな…
「ん?何故バランスが取れているのか疑問に思っているようだな?」
「お前ちょいちょい心読むな、まあ、その通りだ」
「これはな、己を鍛えている過ぎない。正直めっちゃつらい」
「なら普通になれよ…」
「いや、でも角がね。この部屋狭いし」
「あ、なるほど…っていやいや!ねーよ!ありえねーよ!」
「ど、どうした!?」
「なんで俺のトコに来たの?何で俺を選んだの?」
「取り乱すな。落ち着け」
「お前に言われたくねーよ!え?何?俺死ぬの?」
「場合によってはな!」
は?場合によってはって・・・
刹那、ドアが勢いよくノックされる。
「ヒデ!何叫んでんの?めっちゃ取り乱してる様子だけど何かあったの?」
「あ!姉貴!」
幸い部屋に鍵をかけていたので、入ってはこない。
まずい、コレは非常にまずい。
カブトムシも涙目で両手を合わせて…うわっ、気持ち悪!
なんて思ってる場合じゃねえ!
「あ…いや、俺じゃない!ごめんごめん!俺そっくりの声の奴が演技してる動画見てるだけ!」
「こ、こんな大きな音で?」
「そ、そうだ!間違って音量最大にしちまっただけだ!安心してくれ!」
我ながら酷い言い訳だ。
「そう、心配して損した…」
通じんのかよ。
なんか残念な気分になったぞコンチキショウ。
カブトムシはホッとした様な顔で胸を撫で下ろす。

     

「……」
壁に耳を当てて、階段を下りきるのを聞いた俺は、ほっとため息をつき、カブトムシに親指を立てて合図。
カブトムシも同じく親指を立てて返してくる。
気づけばカブトムシは"人間"の容姿になっていた。
しかも顔はイケメン風なのに、体はとびっきりガチムチで全身茶色くて見てて嫌になる。
というか服は持っていないのか?
「え?お前変身できんの?あと服着ろよ」
「なめるな。私を誰だと思っている、ちなみに私は服を着ない派だ」
「そ、そうか…なら、はじめからそれで出てこいよ…、あと俺の前ではちゃんと服を着ろ、貸してやるから」
「いや、この容姿でカブトムシだとは信じてくれないだろう?、私は自分の裸を見せつけるのが好きだ、だから着たくない」
「た、確かに…、つーかふざけるな・・・いいから着ろ」
「・・・・・・分かった」
思わず理解してしまった。と同時に服を着るよう説得も終える

「…で、ムシキングだっけ?」
「(だから無視キングって何だよ)ああ、そうだ」
「なんで俺に相談すんの?」
「ああ、そうだな。話せば長いが…」
「全然いいから早く話せ」
「うむ…」

というわけで話を聞くところ、
どうやら何年かに一度全宇宙で蟲の王様を決める暗黒武闘会が開かれているらしく、今回は地球で開かれるとか。
で、開催予定の惑星の人間に取り憑くことで初めて参加資格が得られるそうだ。
だが説明を聞いていくうちに何か裏があるような気がしたのは俺の考えすぎだろうか?

     

「なるほどな、でも、どうして俺なんだ?」

「ああ、それなんだが、話すと…」

「だから長くてもいいっつってんだろ。早く話せ」

「そ、そうか…」

というわけで、話を聞くところ、
このカブトムシは何でも、己の器に見合う人間を探していたらしい。
で、それが俺だった。
どうやら取り憑くにはそれなりに心の器と言うものが必要らしく、
俺はその余裕、つまり器が大きい人間だと見抜いたとか。


「なるほどな。で、具体的にどういう風に取り憑くんだ?」

「よし、では早速『魂の共鳴』に移ろうか」

「おいそれってなんかヤバイ事するんじゃ?」

「失敗したら最悪死ぬがな、早く行くぞ!」

「え?ちょっと待って、それマジで?」

おいおい失敗したら死ぬとかヤバイじゃん

それで何?『魂の共鳴!』とか一緒に叫んじゃうの?

が、俺の幻想は見事にぶち壊されることになる。

「行くぞ!少年!」

「…ま、待ってくれ!心の準備がまだ!」

     

途端、ヴァイスが、俺の後ろに回りこむ。

「……え?」

そして、ヴァイスは俺に後ろから抱きつくような形で腕を回す。

「ちょ…待っ…」

なんか嫌な予感がしたが、もう遅すぎた。

刹那、ヴァイスの抱きついていた腕が俺の乳首を服の上から思いっきりつねる。

「━━━━━━━━━━」

声にならない痛みが俺の体を貫く。

声にならない叫びが俺から発せられる。

「我 慢 せ よ ! コ モ ン ソ ウ ル !!!!」


     

俺は気がつくと、一回り大きなカブトムシになっていた。

「…何コレ」

え?、コレが魂の共鳴・・・?

《そうだ、これが魂の共鳴だ》

「いやいや、カブトムシになっただけやん」

「え?お前が武器になったりするんじゃねーの?」

《何を言っている。体は参加者をベースに、心は契約者をベースに合体する。それこそが魂の共鳴だ》

「いや、俺の乳首思いっきりつねっただけやん」

《ああ、あれはただの趣味だから気にするな》

「!?」

《先に言っておく、取り憑いた時点で参加が決定されるから逃げることはできんぞ》

「…マジかよ?」



「…おい、とりあえず解除しろ」

《うむ。承知した》

「━━━━━━━━━━」

体に激痛が走る。

胸の辺りから、2箇所に分けて痛みが…

「おっと、スマン。解除したら変身前の状態に戻るの言ってなかった」

「いいから早く…その手をどけろよ…」

途切れそうな痛みをなんとかこらえて、精一杯の声を搾り出す。



     

「…ふっ、どうやらうまくシンクロできたな」

「こっちとしては最悪以外のなんでもねーけどな…」

今、俺の乳首は服がこすれるだけで激痛が走るようになってしまった。

そのため、上半身はしばらく裸ですごす事になる。

「ちょっとヒデー!おつかい行ってきてー!」

「ちょ、今無理だって!」

乳首のダメージといい昆虫王者の戦いに参加決定しているのでうかつには出歩けない。

「なんでよ!シコる暇があんならお使いの一度や二度は楽勝でしょ?」

なんてデリカシーのない姉なんだろう。

自分のことを棚にあげるわけじゃないけど、

もっと、羞恥心を持ってもらいたいもんだ。



「ふむ、私もハラが減ったぞ!」

「ちょっとヒデー!誰かいんのー?」

「ちょ!お前は黙ってろ!」

俺はヴァイスに小声で怒鳴るという

文章で見れば起用極まりない行動を起こす。

「す、すまぬ…」

「あ、姉貴!違うって!俺の腹がすいてんだ!」

「だからお使いに言って来いって…」

姉の口調が変わる。

男にも勝るとも劣らない野太い、あの声だ。

甘えたようなアニメ声から、鋭く低い声へと変わる。

     

「あ、姉貴?」

「言ってんだろーがぁぁぁぁ!!」

刹那、一転を中心にひしゃげた状態でドアが吹き飛んで、向かいの壁にその全てがめり込む。
家中に轟音が鳴り響き、窓が衝撃で粉々に砕け散った。そしてあまりの衝撃音により隣の家の夫婦喧嘩も止んだ。
つーか、姉貴が?え?こんなに強かったの?

「全く、ヒデの…」

「ま、待て!」

もう遅い。
姉が俺の部屋を覗き込んだときに、世界が、時が止まった。

「バ、バレた━━━━━」

部屋にはイケメンでガチムチの男(しかも茶色)。
俺は上半身が裸。
しかも乳首が紫色に変色している。

「え?…ヒデ?え?え?」

姉貴はさっきとは真逆の震えた声で俺を見る。
瞳孔が開いて、まるで唖然と、呆然としたように。
この情況が飲み込めない。飲み込みたくない。
そんな様子だった。



「ちょっ!待て!姉貴!コレは…」

「ほう、お前がヒデの姉貴か。凛々しい顔してなかなかパワフルな脚力を持ってるようだな」

「頼むから黙ってろ!」

「ヒデ…うわぁぁぁぁぁん!!」

姉がパニックを起こしてしまい、ついに泣き出してしまった。
子供のように俺達を気にせずわんわん泣き始めてしまった。

「な、泣くなよ!泣きたいのはこっちだ!」

「うっ・・・ヂデが…ビベが…」

「お、落ち着けって!話せばわかる!」

「かのヘラクレスが言っていた・・・『少年よ、女は泣かせたら泣かせた者の負けだぞ』とな・・・」

「ちょっと待てヘラクレスって誰だ!?、つーかお前にだけは言われたくねーよ!」

     

「…で、ヒデを依代(よりしろ)に選んだと」

崩壊寸前…ってか崩壊した俺の部屋で、
俺達は小さな円を描いて座っている。

「ハッ、さすがはヒデの姉貴だ。理解力があって助かる」

「まあ、こんな情況じゃあ・・・冷静にならないと…ね?」

姉貴はさっきの羞恥を思い出したのか、顔を赤らめる。
因みに俺は依然と上半身は裸。
乳首は大分とマシになってきた。
ヴァイスもイケメンガチムチの状態である。
他人から見れば姉貴がいかがわしいことに巻きこまれているようにしか見えない。

「でも、異次元からの別の存在が本当に居たなんて、これなんてSF?」

「俺に振るんじゃねーよ。こっちが聞きたいわ」

「この私から見ればお前達が異世界人という事になるがな・・・」



「…・・・伏せろ!」

「きゃあ!」

その時、ヴァイスが姉貴を瞬時に押し倒す。

この時、ヴァイスはたまたま姉の豊満な胸を掴んでいて、一瞬だけ揉みそうになった。

「あんっ・・・」

姉は少しだけ感じたのか甘い声を出しかけた。

目の前で、突然、ガチムチ系イケメンに押し倒される姉

その瞬間を黙ってみていられる訳が無い

「おい!このクソ虫が!姉貴に何してやが…」

刹那、姉が元いた場所に、馬鹿でかい毒針が突き刺さる。

毒針の突き刺さった床は腐り落ち、下の階まで、毒が零れ落ちた。

【チッ、はずしたか…変身前の王の器を持つ人間を・・・】

物凄い轟音がどこかから鳴り響く。
ブゥゥンなどではない。ゴゴゴ…という物々しい音である。
なんだ…何が!?

「くっ!もうエントリー者が攻めてきたか!」

「え?」

「しかも俺たちはまだコモンソウル(魂の共鳴)を負えたばかりだ!逃げるぞ!」

すると、崩壊した窓の方に
これまた馬鹿でかいハチが姿を現した。

【ほぅ…初戦はカブトムシか。なかなかいい相手だな】

高層ビルよりも馬鹿でかいハチが呟く。

「に、逃げるって、・・・」

「チッ、いいから早くしろ!魂の共鳴を終えた直後じゃ、まだまともに戦う事は出来ねーんだよ!」

ヴァイスはヒデの腕を掴み、茶色い翼を生やして、高速のスピードで飛び立つ。
ヒデの腕を引っ張りながら徐々にスピードを加速させる。

「待てよ姉が!姉がまだあそこに取り残されてる!」

「それなら心配ねえ、多分な。」

「た、多分だと!お前いい加減に・・・」

「いいから早く戦う覚悟を決めろ、下手したらお前が死ぬ事になるぞ」

「何を言ってるんだ!あの姉貴でも根は優しくて・・・」

「いいから・・・・・・」

急に静まり返るヴァイス

徐々にその雰囲気は変わりヴァイスは激昂する

「早く覚悟を決めろって言ってんだろ!!」

「ぎゃ・・・逆ギレかよ・・・」

「・・・断じて違う」

「じゃあ何々だよ・・・」

「・・・やはり魂の共鳴していないこの不完全な状態じゃ・・・」

「この程度のスピードじゃ、あの蜂からは逃げ切れないな。」

カブトムシの倍のスピードで追いつき、迫り来る巨大蜂は瞬時にカブトムシの前へと回り込んだ。

これでもう逃げられない、逃げている間に姉が無事かどうかは気になったが、

今は自分がこの巨大蜂とどう戦えるか

同じコモンソウル(魂の共鳴)をした相手とは思えない程の巨大さ。

その巨大蜂の羽音から迫る、まるで大地を揺るがすように鳴り響く轟音と振動に対し、絶望感を感じる

       

表紙

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Neetsha